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【連載】CS向上を科学する

2016年3月11日

【CS向上を科学する:第24回】ビジネススタイルを変える(2)~お客様の身内になる問題探索型ビジネススタイル~




松井サービスコンサルティング
代表/
サービス改革コンサルタント
松井 拓己


前回、お客様のニーズの変化に合わせてビジネススタイルを変化させなければ、今は受け身型も提案型も苦戦する時代になっていることについて触れてきました。そこで今回は、これから重要になるビジネススタイルである「問題探索型」を実現するためのポイントを見てみたいと思います。

ビジネススタイル

問題探索型のはじめの一歩

問題探索型ビジネススタイルを実現するためには、どんなポイントがあるのでしょうか。
はじめの一歩として最も重要なのが「お客様の身内になる」ことです。お客様と問題を一緒に探すためには、お客様に問題点や弱点を見せていただかなければなりません。しかしお客様にしてみれば、身内でもない人に問題点は見せたくないものです。問題探索型のビジネススタイルを実現するためには、いかにお客様の「身内」になれるかが、極めて重要なのです。

ただし、お客様の身内になるといっても簡単なことではありません。

そこで、熱心な企業では例えばこんな工夫をしています。初めてお会いするお客様に対してこれまでは、「いかに商品やサービスを買っていただくか」という観点で提案やキャンペーンに力を入れてきましたが、うまくいかない。そこで、提案する前のプロセスを磨き上げて、お客様との関係を築き、お客様の問題や期待を一緒に明らかにするところからしっかりとご一緒することで、ビジネスを拡大しています。

また、既存のお客様と身内になれるチャンスは、実は営業以上にサービス部隊にあります。例えばアフターサービスであれば、定期的にお客様との接点を持ってるので、既に身内扱いされていて、お客様の悩みや期待を掴んでいることが多いものです。これに気付いた企業では、これまであまり重きを置いてこなかった「サービス」を中心に据えてビジネスをドライブしています。「営業や商品開発の上流工程はサービスである」「サービスは最前線の営業部隊である」「我々はサービス業である」など、サービスを強化することで、お客様に選ばれ続けるための変革に熱心な企業が増えています。

問題探索のしかた

お客様の身内になれたら、次に「問題を探し出すスキル」が必要になります。目に見えないサービスにおいては、この「問題」を掴むことが極めて重要です。問題解決は、問題を正しく定義できたら7割成功だとも言われています。それくらい重要であり、難しいことなのです。例えば法人のお客様の場合、そのお客様の問題は、様々な組織の問題が複雑に絡み合っていることが多く、問題の原因を「なぜ?」を繰り返すことで深堀りするだけでは、本当の問題を明らかにできないケースが多いようです。そこで効果的なのが、「問題の全体像」を明らかにすることです。問題の全体像を明らかにせずに、目の前の重要そうな問題の原因に対策をしようとしても、納得感に欠けたり、別の問題が発生したりと、うまく問題解決が進められません。問題の全体像が明らかになれば、その全体像を見ながら、どの問題からどういう順番に解決することが効果的かを、納得感を持って決めることができます。これから必要になる「問題を探し出すスキル」とは、問題の全体像を明らかにするためのスキルと言えます。
*問題の全体像を明らかにするための具体的な方法については、別の機会にご紹介したいと思います。

組織全体で「サービスのプロ」になる

問題探索型ビジネススタイルを実現するために3つ目に必要なのが、お客様の問題を探し出してそれを解決したり、お客様の期待に応えるために、「サービスのプロ」になることです。

最近では、全ての産業でサービス化が進んでいて、サービスが競争優位そのものになっています。そこでサービスサイエンスでは、全ての産業はサービス業であると定義しています。「すべての産業はサービス業」だと理解すると、2つのポイントが見えてきます。

1つは、自社のビジネスをサービス業として捉えてサービスを磨き、お客様にサービスで喜んでいただかなければならないということです。最近注目される企業改革の中で、「わが社はサービス業である」と意識改革から熱心に取り組んでいるものが増えています。根っからのサービス業でも、製造業でも同じです。サービスで競争優位を築き、サービスで差別化するためには、組織全体でサービスを磨き上げ、お客様にサービスで価値を感じて頂かなければならないのです。

2つ目は、お客様が法人の場合、お客様のビジネスもサービス業だという意識で、お客様の問題やビジョンを理解しなければ、正しくお客様を理解することができないかもしれません。お客様と一緒になって問題を探し出すためにも、我々はサービスのプロになるべきなのです。

会社や組織として「サービスのプロになる」のは難しいものです。サービスは目に見えなくて雲を掴むようで、いったいどうしたら良いか分からない。ついつい精神論やテクニック論で考えてしまう。組織的に取り組もうとしても経験や勘に頼ってしまい、現場任せ・個人任せな活動しかできていないなど。
組織的にサービスのレベルアップをしようとしたときにぶつかるこれらの壁を越えるために、サービスやCS向上の本質を少しロジカルにひも解いた当連載が少しでもお役に立てれば幸いです。

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<筆者プロフィール>
 


 松井 拓己 (Takumi Matsui)  
 松井サービスコンサルティング  
 代表
 サービス改革コンサルタント/サービスサイエンティスト

サービス改革を専門として、サービスサイエンスに基づいたサービス改革やCS向上の支援や研修を行っており、これまでに業種・業界問わず数々の企業の支援実績を有している。
大手製造業で商品開発に従事し、同時に事業開発プロジェクトリーダーを務める。その後、平均62歳、150名のシニアコンサルタントが集うワクコンサルティング(株)の副社長として事業運営に携わると共に、サービスサイエンスチームリーダーを務める。現在は独立して、サービスサイエンスの考え方を活かして、サービス改革やCS向上を支援している。

 ▼ホームページURL/サービスサイエンスのご紹介
 http://www.service-kaikaku.jp/