2015年9月3日
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前回から数回にわたって、サービスを「分類」することで、サービスの全体像や努力のポイントに迫っています。前回に引き続き今回は、サービスを2つの切り口で分類して、サービスのタイプに応じた努力のポイントを明らかにしたいと思います。前回は、「手順型で、ロースキル・ロートレーニングでもできるサービス」と「気づき型で、ハイスキル・ハイトレーニングが必要なサービス」とでは、努力のポイントが大きく異なりそうだということが徐々に明らかになってきました。そこでここからは前回の続きとして、「気づき型で、ハイスキル・ハイトレーニングが必要なサービス」の代表格であるコンシェルジュサービスが価値を発揮するための努力のポイントの残る2つを明らかにしてみたいと思います。
「コンシェルジュサービス」を個人任せにしないための努力のポイント
コンシェルジュが価値を発揮するためには、お客様がいかにお困りかが分かっても不十分です。なぜならば、そのお客様からの例外要求にお応えすることは価値があるのか、逆にお断りしなければいけない要求なのかを、会社の顔として判断しなければならないからです。この判断は、現場や個人にだけ任せていてはできません。そこで必要になるのが2つ目のポイント「ビジョンの共有」です。お客様からの例外要求に対応すべきかどうかを、このビジョンやサービスコンセプトに照らし合わせた上で、現場で判断していくのです。ビジョンやコンセプトは掲げるだけでなく、現場まで浸透させなければ、サービスの現場では価値を発揮できないのですね。
さて、ここまできて、お客様がかなりお困りで、この例外要求にお応えすることは価値があると、コンシェルジュが判断できたとします。しかしここで、「例外要求への対応は、上司に申請して承認印が必要」という社内ルールになっていては、現場では例外要求に応えていられません。そこで3つ目のポイントとして、「現場へのある程度の権限移譲」が必要になってきます。例えば対応に際して生じるコストが、決められた上限値を超えなければ、現場の自主的な判断でお客様への例外要求に対応できるように権限移譲するのです。
このようにサービスを分類してみると、コンシェルジュサービスのような「気付き型で、ハイスキル・ハイトレーニングが必要なサービス」タイプの努力のポイントとして、「共感性」「ビジョンの共有」「現場への権限移譲」が浮かび上がってきました。一方で実態は、多くのコンシェルジュサービスは現場任せで、組織的に必要な努力が十分にできていないことが多いものです。先進的なサービス企業では最近、気付き型のサービスを、個人的な“気付き”に頼りきって提供することから脱却するために、気付き型サービスのガイドやサービスモデルを描いて、組織的に運用するケースが増えてきました。ここで役に立つのが、「サービスプロセスのモデル化」です。(以前ご紹介した第10・11回:サービスプロセスのモデル化で共創サービスを設計する、をご覧ください。)
闇雲に取り組まれがちなサービス向上
これまで見てきたように、サービスを分類してみると、サービスのタイプごとに努力すべきポイントが大きく変わることが明らかになりました。「手順型で、ロースキル・ロートレーニングでもできるサービス」の努力のポイントを、「気づき型で、ハイスキル・ハイトレーニングが必要なサービス」に適用しても、価値あるサービスは実現できないのです。しかし多くの場合、サービスのタイプを見極めることなく、闇雲にマニュアル化や手順化、チェックリスト化を推進して苦戦していることが多いようです。もちろん、マニュアル化はとても価値があります。しかしその目的を組織でしっかりと共有して、納得感を持って取り組まなければ、取り組みを前進させることはできません。この納得感を醸成するためにも、自社サービスのタイプと努力のポイントを明らかにする必要があるのかもしれません。
さて、今回取り上げた2つの分類軸以外にも、価値ある気付きに繋がりそうな分類軸はいくつか見つかっています。また逆に、分類してみたけれど気付きが得られなかったという、空振りの分類軸もたくさんあります。是非今度は、皆さんの業界のサービスにとって価値ある気付きが得られそうなサービス分類をしてみてください。目に見えないサービスを、いつもと違った視点で捉えなおしてみることで、今までにない効果的で具体的な努力のポイントが見つかるかもしれません。
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<筆者プロフィール>
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松井 拓己 (Takumi Matsui) 松井サービスコンサルティング 代表 サービス改革コンサルタント/サービスサイエンティスト |
サービス改革を専門として、サービスサイエンスに基づいたサービス改革やCS向上の支援や研修を行っており、これまでに業種・業界問わず数々の企業の支援実績を有している。 |