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【連載】CS向上を科学する

2014年11月25日

第2回:事前期待を科学する(1/2)~「お客様の期待に応えよう!」をきれいごとで終わらせない~

 




松井サービスコンサルティング
代表/
サービス改革コンサルタント
松井 拓己

 

はじめに

 前回から始まった連載「CS向上を科学する」。第1回は、顧客満足の本質を「顧客満足の定義」から導いてみました。CS向上に取り組んでいるのに「顧客満足の定義」とその本質の理解がばらついているようでは、議論や活動はかみ合わないですよね。CSやサービス向上の先進企業は、こういった本質やロジックをしっかり理解して、組織的なレベルアップに活かしているのです。

さて、第2回の今回は、前回の「顧客満足の本質」として浮かび上がってきた「事前期待」とは一体どんなものなのかについて触れてみたいと思います。


■「期待に応えよう」と言われても、”きれいごと”にしか聞こえない
「お客様の期待に応えよう!」「潜在ニーズを見つけろ!」「期待を超えて感動を生み出そう!」こういった議論や指示は、日常的によくされていると思います。しかし現場からしてみれば、お客様ごとに期待が違うので明日から何を頑張ったら良いのかピンとこない、というのが本音だと思います。つまり、「期待に応えてCSを向上しよう!」という掛け声だけでは、”きれいごと”や“絵に描いた餅”で、CS向上は実現できないということです。

そこで今回は、お客様の「事前期待」とは一体どんなものなのかをサービスサイエンスの視点で少しロジカルに理解することで、期待を掴み、それに応えるための努力のポイントを明らかにしたいと思います。


事前期待を構成要素に分解してみると、努力のポイントが見えてくる
お客様がサービスや商品を利用する前に持っている期待のことを「事前期待」と呼びます。この事前期待を掴むことで、お客様に喜んで頂くために我々は何をすべきかが見えてきます。しかし、事前期待はお客様ごとに様々で、一体どうしたら良いのか困ってしまいます。そこでサービスサイエンスでは、事前期待を分解することで、その構成要素と効果的な努力のポイントを明らかにしています。

事前期待は分解してみると、「事前期待の対象」、「事前期待の持ち方」、「事前期待の持ち主」で構成されています。

最初の「事前期待の対象」とは、例えばサービスの内容やサービス品質、価格のことを指します。これらについては、我々は日常的に意識していて、議論も慣れていますよね。しかし実は、「ホスピタリティサービス」や「感動サービス」のようにお客様から高い評価を頂くためには、この「事前期待の対象」についていくら努力しても効果的ではないことが分かってきています。お客様から高い評価を頂くためには、むしろ「事前期待の持ち方」の方にフォーカスすべきなのです。なお、「事前期待の持ち方」の中身については、後程、努力のポイントと合わせて触れてみたいと思います。

そして3つ目は「事前期待の持ち主」です。これは主にユーザーの属性(男性・女性、大企業・中小企業など)や、ユーザーのサービスへの関わり方(丸投げするタイプなのか、色々と関わりたい対応なのか、など)のことを言っています。
 

 

この様に「事前期待」とひとことで言っても、案外複雑な構造をしているのです。しかしこの事前期待の構造と努力ポイントをしっかり理解することが、CS向上やサービス向上でお客様に評価して頂き、他社に差を付けために、極めて重要なのです。

それでは具体的に、CS向上やサービス向上のために最も重要な「事前期待の持ち方」について、その中身と努力のポイントを見ていきたいと思います。


■「事前期待の持ち方」の4つの種類と努力のポイント
「事前期待の持ち方」には4つの種類があります。それは、「共通的な事前期待」、「個別的な事前期待」、「状況で変化する事前期待」、「潜在的な事前期待」の4つです。これら4つについて、順に見ていきたいと思います。
 

まず1つ目は、「共通的な事前期待」です。これは、すべてのお客様が共通的に持っている事前期待です。例えば、ホテルや旅館であれば、「宿泊するお部屋や水回りが清潔であってほしい」というのは、全てのお客様に共通的な事前期待だと思います。他にも、小売店や飲食店で「感じの良い接客をしてほしい」、ITサービスで「要求通りのシステムを納期までに納品してほしい」など。こういった「共通的な事前期待」には、抜かりなく確実に応えなければなりません。そこで、我々がすべき努力のポイントとしては、「マニュアル化」や「チェックリスト化」をして、スタッフや時間帯、拠点によってバラつかない均質なサービスを組織的に提供できるようにしておく必要があります。

しかし実は、この共通的な事前期待に応えるだけではお客様に喜んで頂くことはできません。なぜなら、共通的な事前期待に応えてもらうことは、お客様にとっては「当たり前」だからです。今の時代、失点しないサービスというだけで、お客様は喜んでくれません。お客様に喜んで頂き、選んで頂くためには、失点をしない努力だけでなく、得点を増やす努力をしなければならないのです。そこでカギを握るのが、残り3つの事前期待(個別的な事前期待・状況で変化する事前期待・潜在的な事前期待)にいかに応えられるかです。

そこで次回は、CS向上のカギを握る「事前期待の持ち方」の残りの3つ、個別的な事前期待、状況で変化する事前期待、潜在的な事前期待について、その中身とそれに応えるための努力のポイントに触れてみたいと思います。

以上

 
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 <筆者プロフィール>

 


 松井 拓己 (Takumi Matsui)  
 松井サービスコンサルティング  
 代表
 サービス改革コンサルタント/サービスサイエンティスト

サービス改革を専門として、サービスサイエンスに基づいたサービス改革やCS向上の支援や研修を行っており、これまでに業種・業界問わず数々の企業の支援実績を有している。
大手製造業で商品開発に従事し、同時に事業開発プロジェクトリーダーを務める。その後、平均62歳、150名のシニアコンサルタントが集うワクコンサルティング(株)の副社長として事業運営に携わると共に、サービスサイエンスチームリーダーを務める。現在は独立して、サービスサイエンスの考え方を活かして、サービス改革やCS向上を支援している。

 ▼ホームページURL/サービスサイエンスのご紹介
 http://www.service-kaikaku.jp/