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【連載】CS向上を科学する

2024年6月3日

【CS向上を科学する:第122回】サービスモデル マーケティング (1/2)

  


 

松井サービスコンサルティング  
代表/
サービス改革コンサルタント  
松井 拓己  

 

 

近年、大きな時代の変化に直面する中で、新たなサービスの開発や進化、サービスイノベーションに取り組む企業が増えました。自分たちの経験と発想の中だけでイノベーティブなサービスのアイディアを創出・設計するには限界があるとの思いから、あえて異業種の成功事例から「サービスモデル」を分析して、自社に生かそうとするものです。優れた事例のサービスモデルを紐解いて成功のポイントを見出し、サービスモデルで自社サービスの新たな可能性を引き出しましょう。こんな取り組みを総合して「サービスモデルマーケティング」と呼んでいます。日本には、まだまだ知られていない優れたサービスモデルがたくさんあります。戦略やビジネスモデルの観点ではポイントが見出しにくかった事例も、サービスモデルの観点でとらえ直してみると学ぶべき点は多くあります。すそ野の広い「サービス」だからこそ、他業界の優れたサービスの事例に、サービスモデルのポイントを探ることも重要です。

 

しかし、どんな事例を取り上げて分析したら良いか迷ってしまう方もいるでしょう。私が企業の方々とサービスモデルマーケティングでよく行う取り組みが3つあります。

 

1つ目は、身近なサービスを題材にします。私たちは生活者として普段から様々なサービスを利用しています。その業界や会社の事はよく知らなくても、私たち自身がユーザであり「お客様のプロ」としてサービスを分析することができます。

たとえばコーヒーを飲みたいと思ったら、皆さんはどのサービスを利用するでしょうか。自動販売機、あるいはコンビニでコーヒーを買いますか。もしくは、コーヒーショップやカフェに行ってコーヒーを飲むでしょうか。カフェといっても、色んなお店がありますので、「お気に入りのお店がある」という方もいるでしょう。それとも、ホテルのラウンジでアフタヌーンティーをいただきますか。いやいや、自分でコーヒーを淹れます、というセルフサービス派もいそうです。

なぜ、顧客はそのサービスを積極的に選ぶのか。それを自分事として考えられることが、身近なサービスを題材としてサービスモデルを分析する利点です。個人ワークではなく、グループディスカッションをしてみると、人によって自分とは異なる事前期待を持っているのだと実感しやすいテーマでもあります。

 

2つ目は、1つの成功事例を題材にして徹底的に分析します。同じの事例であっても、分析者によって着眼点が違うので、相違点と共通点からサービスモデルの勘所が見えてきます。

成功事例の題材に悩む場合には、様々な業種や業界から100件以上表彰している日本サービス大賞の受賞事例から選ぶのも良いでしょう。日本最高峰のサービス表彰というだけあって、サービスイノベーションの最前線の事例が揃っています。また、普段は知ることができない組織内部での取り組みも掲載されている事例もあります。日本サービス大賞では、価値共創の観点で受賞事例を分析・整理していますので、サービスモデルマーケティングのはじめの一歩としては取り組みやすいのではと思います。(日本サービス大賞 過去受賞一覧はこちら

 

実は先日、日本サービス大賞を主催するサービス産業生産性協議会(SPRING:Service Productivity & Innovation for Growth)の中に、「サービスイノベーション・サファリ」という、優れたサービスの事例検索サービスが立ち上がりました。SPRINGは、サービス産業の生産性向上に向けた活動の1つとして、サービスの優良事例の普及に取り組んでおり、「日本サービス大賞」「日本のサービスイノベーション2022」の表彰・選定を行っています。その事例と知見の詰まったデータベースです。この中から、分析の題材にするサービス事例を探してみるのも良いでしょう。(webサイト「サービスイノベーション・サファリ」はこちら

 

3つ目は、各自で分析したいサービスを1から探してきて題材とします。日本サービス大賞の受賞事例集のように情報が整理されているわけではないため、どのような着眼点で情報を収集すると良いのかまで、実践的に考えて取り組むことになります。また、可能であれば、情報収集だけでなく、自身で顧客として利用してみて、その体験の中からサービスモデルを紐解いてみるのも良いでしょう。

このアプローチでは、持ち寄った事例の中で、うまく分析できないこともあります。そこからも是非学びを得てみてください。たとえば以前、「事例としては面白いけれど、これはモノとしての良さが前面に出た事例であって、有効なサービスモデルは見出せなかった。」というものがありました。ここから、「モノの価値」と「サービスの価値」はどこがどう違うのかを分析する議論に発展しました。

また、「どうやって革新的なサービスモデルを着想したのだろう?」という疑問から、実際にヒアリングに伺い、サービスモデルを構築するに至った経緯を教えていただくことで、業界や会社の常識を覆すようなサービスイノベーションに取り組むための変革ストーリーを紐解くことができました。

 

では、具体的にどのようにサービスモデルを分析すると良いのでしょう。次回は、シンプルなワークシートを活用したサービスモデル分析の仕方をご紹介したいと思います。

 

 松井氏が講師を務めるイベント情報

「CS向上を科学する」実践セミナープログラム【7,9,10月開催】

組織的なサービス改革やCS向上を進めるため、サービスの本質からご説明します。そして、日本サービス大賞の受賞事例などを織り交ぜながら、サービスモデルをブラッシュアップするためのポイントや手法を学ぶことができます。
 

 

SPRING Café 2024【5月~2月開催】

異業種の参加企業間でのリアルな課題や取り組みの意見交換や、専門家による最新理論や実践事例を交えたテーマ議論によって、CS向上やサービス開発、サービス改革のヒントを得たり、仲間づくりをして頂く場として、「SPRING Café」を開催しております。

>>詳細はこちら


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<筆者プロフィール>
 


 松井 拓己 (Takumi Matsui)  
 松井サービスコンサルティング  
 代表
 サービス改革コンサルタント/サービスサイエンティスト

サービス改革の専門家として、業種を問わず数々の企業の支援実績を有する。国や自治体、業界団体の支援や外部委員も兼務。サービスに関する講演や研修、記事連載、研究会のコーディネーターも務める。岐阜県出身。株式会社ブリヂストンで事業開発プロジェクトリーダー、ワクコンサルティング株式会社の副社長およびサービス改革チームリーダーに従事した後、松井サービスコンサルティングの代表を務める。
著書:価値共創のサービスイノベーション実践論(生産性出版)、日本の優れたサービス2~6つの壁を乗り越える変革力~(生産性出版) ほか
 
▼ホームページURL/サービスサイエンスのご紹介
http://www.service-kaikaku.jp/