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【連載】CS向上を科学する

2023年11月10日

【CS向上を科学する:第121回】戦わずして選ばれる「共創優位性」 ~不確実性・時間・顧客を味方につける~

 


 

松井サービスコンサルティング  
代表/
サービス改革コンサルタント  
松井 拓己  

 

 

イキイキと躍進している企業は「他社と戦っているつもりはありません」と仰います。「なんなら、一緒に取り組みたい」と。口で言わなくても、いかにも機嫌よく仕事をしている表情や言葉からにじみ出ています。他社と戦わなくても顧客から選ばれてきた経験が、“うちのやり方”という土俵を浮かび上がらせているのでしょう。戦うための土俵ではなく、一緒に価値を生み出すための土俵。競争ではなく、「一緒に仕事したい、してほしい」という、「共創」の優位性で選ばれる、そんな事業の伸ばし方を体得しているのです。


競争優位性(competitive advantage)は説明不要と思いますが、簡単に言えば「他社に勝つ力」ですね。他社との違いを強化して差別化することで、顧客から選ばれることを目指しています。対して共創優位性(co-creative advantage)は、「他者と生み出す力」と言えます。顧客にとって身内のような存在になることで、共創のパートナーとして選ばれることを目指します。競争と共創の優位性にはどういう違いがあるのかを見ていきましょう。


競争優位性の土俵は、他社との比較検討を重ねた上で顧客に選ばれるという構造を持っています。企業は、他社にはない機能やメニューを開発したり、他社以上にコストパフォーマンスを高めて、顧客に対して積極的な提案活動を行います。これは顧客ニーズが明快であった時代によくマッチしていました。この競争を勝ち抜いて事業を大きくしてきた成功体験を持っている企業は多いことでしょう。

しかし競争が続いたことで、競合他社ばかり気にかけて、肝心な顧客の姿が見えなくなっているケースも少なくありません。例えば受注することを「クロージング」と呼ぶことがあると思います。呼び名はどうでも良いのですが、受注をもって競争が終わる、自分の仕事が終わるというスタンスになってしまうかもしれません。「顧客との関係が終わって良かった」という意識になってしまうとしたら問題です。顧客不在の競争に陥らないよう気をつけたいものです。


近年では、顧客ニーズは複雑になり、顧客自身が自分のニーズがよく分からない時代になりました。他社よりもうちの方が優れていると提案しても、ニーズが分からなくなっている顧客に選んでもらうことは難しいでしょう。むしろ、顧客への共感性を発揮して関係性を深め、顧客のニーズを探し出すところからご一緒する探索活動が求められるようになりました。これが共創優位性の土俵です。競合他社を気にかけてファイティングポーズを取るのではなく、意識すべきは顧客の未来。顧客と同じ方向を向いて、一緒に問題やニーズを探し出し、サービスや価値を一緒に創っていくのです。共創優位性が高まれば、顧客は他社との比較をせずとも、一択で選んでくれるでしょう。であれば、もはやクロージングは必要ありません。クロージングと呼ばれた受注は、顧客の未来に向かった共創の「オープニング」へと様変わりするのです。冒頭の「他社と戦っているつもりはありません」というスタンスの企業は、共創優位性で顧客から積極的に選ばれることで、事業が成長し、進化している実感を持っているのです。


時間軸を加えて競争優位性と共創優位性の違いを捉えてみましょう。競争優位性は時間とともにどう変化していくでしょうか。他社にはない機能やメニューをリリースすると、他社にすぐに真似されてキャッチアップされてしまいます。他社以上のコスパを発揮しても、他社も負けじとコスト削減とパフォーマンス改善を行うでしょう。その結果、気づけば機能やメニュー、コストパフォーマンスは業界各社で横並びに。競争優位性とは、スナップショットつまり静止画で語られることが多いのですが、そこに時間軸を組み込むと徐々にその差が狭まる傾向が見えてきます。しかも顧客側も、企業がスペックや価格競争をするほど、「もっともっと」と事前期待が強化されていきます。ジリ貧のスペック競争や価格競争で消耗してしまう、そんな“未来”、いや、そんな“現状”から抜け出そうという危機感が高まっています。


一方で共創優位性は、「共創」の言葉が示す通り、価値を一緒に創り上げていくという時間軸がもともと組み込まれています。時間とともに顧客との関係性が深まり、共創による経験や成果が積み上がります。そこから顧客の中に、共創を共に進めてきたパートナーに向けた新たな事前期待が形成されます。この事前期待は、共創のパートナーではない他社に向けられることは少ないでしょう。たとえその期待に他社が応えようとしても、非常に難易度が高い。よって、共創が進むほどに、共創パートナーとはタッグを組む価値がどんどん強化され、他社にとっては難易度がどんどん上がっていく。共創優位性は、時間とともにと優位性が向上し、他社を引き離して差が広がっていく傾向があるのです。イキイキと共創していれば時間が味方になって、圧倒的に選ばれ続ける土俵が生み出されていく。こうなれば、他社とギスギスした戦いをする必要もありません。


時代の変化という時間軸でも考えてみましょう。これからは変化の読めないVUCA時代と言われています。この不確実性の時代は、競争のルールがガラリと変わってしまったり、異業種から思いもよらないコンペティターが登場したりと、競争優位性の土俵ではリスクになると言えるでしょう。一方で共創優位性の土俵ではどうか。顧客にとっても不確実性が高まるため、より一層のこと一緒に問題やニーズを探索し、答えのない時代に自分たちにとっての答えを一緒に創ってくれるパートナーが求められます。不確実性は、共創のチャンスを掴むための追い風なのです。


変化の時代において不確実性を味方につけ、時間を味方につけて時間とともに選ばれる土俵を生み出し、顧客を味方につけて未来を共創していく。極端な二者択一はないにしろ、共創優位性という強みの確立は、これからの顧客、これからの時代に選ばれるための、大いなる伸びしろと言えます。

 

 

※参考書籍はこちら

価値共創のサービスイノベーション実践論

日本の優れたサービス 1、2




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<筆者プロフィール>
 


 松井 拓己 (Takumi Matsui)  
 松井サービスコンサルティング  
 代表
 サービス改革コンサルタント/サービスサイエンティスト

サービス改革の専門家として、業種を問わず数々の企業の支援実績を有する。国や自治体、業界団体の支援や外部委員も兼務。サービスに関する講演や研修、記事連載、研究会のコーディネーターも務める。岐阜県出身。株式会社ブリヂストンで事業開発プロジェクトリーダー、ワクコンサルティング株式会社の副社長およびサービス改革チームリーダーに従事した後、松井サービスコンサルティングの代表を務める。
著書:価値共創のサービスイノベーション実践論(生産性出版)、日本の優れたサービス2~6つの壁を乗り越える変革力~(生産性出版) ほか
 
▼ホームページURL/サービスサイエンスのご紹介
http://www.service-kaikaku.jp/