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【連載】CS向上を科学する

2023年10月10日

【CS向上を科学する:第120回】時間軸デザイン×多様性経営×探索型モデル ~フォレストコーポレーション見学レポート~

 


 

松井サービスコンサルティング  
代表/
サービス改革コンサルタント  
松井 拓己  

 

 

SPRING協力のもと、サービス学会の企画で、フォレストコーポレーション(お客様参加型の家づくりサービスで、第1回日本サービス大賞の地方創生大臣賞を受賞)の見学会を開催しました。企業からは経営者やカスタマーサクセスの責任者、事業改革推進者など、様々な業界や役割の方々が集結。大学からも、サービス学に関わる教授にも複数参加いただき、満員御礼での開催となりました。フォレストコーポレーションの新規事業であるサードオフィス(森の中のオフィス展開事業)のある軽井沢にお伺いし、小澤社長と新規事業責任者も交えて、様々なテーマについての議論が繰り広げられました。今回はその一端をご紹介したいと思います。

※フォレストコーポレーションの皆様、ご協力くださり、誠にありがとうございました!

 

時間とともにモノの価値が高まるタイムアクシスデザイン

フォレストコーポレーションの事例は当連載でも何度も登場していますので、詳しい説明は割愛しますが、受賞サービスは、『顧客が自分の家に使う木を山に入って選んで伐るところから始まる家づくり』というものでした。

フォレストコーポレーションの事例について、詳しくはこちら:第35回 事例に学ぶ優れたサービスのポイント:「家づくりを物語に:フォレストコーポレーション」その1

家づくりの様々なプロセスに顧客が参加することで、住み始めるときに既に愛着や家族の思いがぎっしり詰まった家ができあがります。さらに住み始めてから、天然素材を使った家は経年変化をしていきますが、たとえば自分たちで選んで伐った木を大黒柱にしている家族の多くは、その木の変化を「味わい」という価値として捉えているそうです。一般的な住宅では、家づくりのプロセスには顧客はあまり関わらないため、素材の変化は「劣化」と捉える顧客が多そうです。

このように、家に限らず購入したモノは、新品の価値がMAXで、経年変化とともに価値が低下していきます。対して、フォレストコーポレーションのように顧客がモノづくりのプロセスに参加すると、新品からの経年変化で、むしろ価値が高まることになります。これをフォレストコーポレーションでは「家育て」と呼んでいます。

これはデザインの領域では、「タイムアクシスデザイン」と呼ばれていると、参加者から紹介がありました。従来のデザインは、新品製品の価値を設計するスタイルが主流でしたが、デザインに時間軸を組み込むことで、価値が徐々に成長していくという発想で、サステナブルな社会を実現していこうというものだそうです。

フォレストコーポレーションの事例から、サービスや経験価値の設計(デザイン)ができると、モノの価値を時間とともに成長させられるのだと分かりました。

 

参加型家づくりを5種類の経験価値で分解する

では、サービスや経験価値をどのように設計(デザイン)するのか?フォレストコーポレーションでは、サービスの価値を決定づける事前期待に着目して、顧客の「事前期待の的」をモデル化。加えて、その事前期待に合わせた経験価値プロセス(サービスプロセス)も設計しています。今回の見学会では、時間の関係でサービスモデルの紹介にまでは至りませんでしたが、顧客の事前期待の的をタイプに分けて定義しています。

この話を受けて、参加者から経験価値には種類があるとの紹介がありました。それは、感覚的、情緒的、知的、行動的、関係的経験価値の5つだそうです。実は、この経験価値の種類が偶然にも、フォレストコーポレーションの顧客の事前期待の的のタイプと共通する部分がたくさんありました。顧客がどのタイプの経験価値を期待しているのかを考えることで、事前期待の的を捉えやすくなるかもしれません。


危機に進化するマネジメントスタイル

ところでフォレストコーポレーションの独自のサービスや取り組みは、どうやって生まれて進化してきたのでしょうか。その議論から、危機を進化に変えるマネジメントスタイルが見えてきました。お客様参加型の家づくりサービスが本格的に生み出されることになるきっかけは、リーマンショックにありました。これにより同社は危機に直面し、事業の主軸を他事業から住宅事業へシフトする必要がありました。そこで、大手ハウスメーカーがひしめくレッドオーシャンとも言える住宅展示場に進出。すると、顧客から「他と違ってなんかいいね!」との反響がたくさんあり、その手ごたえを糸口に、サービスを今の姿に進化させてきたのです。

その背景にあるのが、目標制度です。全社員を3人1組のスモールチームに分け、3ヶ月ごとという高速サイクルで目標設定~達成発表を繰り返しています。スモールチームを組むことで、顧客接点でのモヤモヤや悩み、手ごたえ、現場の知恵や工夫を言語化して共有しながら業務が進められていきます。そこに経営層も一緒になって議論に交わることで、変化を捉え、新たなサービスや取り組みをどんどん生み出しているのです。

近年のコロナショックにおいても、働き方の変化に伴う住宅ニーズの変化や移住ニーズの高まりなど、顧客からの様々なシグナルを、この取り組みの中で可視化したり、様々な実験を繰り返すことで、成長のチャンスに変えてきました。その1つが、今回お伺いした軽井沢への進出であり、サードオフィスという新しいオフィスの役割の創出というわけです。

参加者からは、フォレストコーポレーションには若手や女性が活躍している様子があるが、若手や女性が組織に多く所属することのメリットは何だと思うか?との質問を皮切りに、「多様性経営」に関する議論が大いに盛り上がりました。

印象的だったのは、例えば男性やベテランが強い職場において、若手や女性が伸び伸びと意見や議論できる風土が醸成されると、これまでにない視点での問いが議論の中に生まれてきて、経営や事業がどんどん鍛えられるということでした。若手や女性の活躍は、「役職が上に上がること」や「花形の仕事を任せられること」と思いがちですが、任せる役割や仕事の内容以上に、多様なメンバーが意見や疑問、モヤモヤについて、前向きに議論の場に出せるだけで、事業や経営に大いに貢献しているということなのだと、理解が広がりました。

 

探索型サービスモデルへのチャレンジ

次なるチャレンジはというと、「提案型」や「問題解決型」ではなく、「探索型」のサービスモデルの構築です。今は先の読めない変化の時代(VUCA)と言われています。顧客自身も自分の欲しいものが分からなくなっています。だからこそ、フォレストコーポレーションでは、顧客と一緒になって探索するプロセスを重視したサービスモデルへの転換を推し進めています。「探索型サービスモデル」は、フォレストコーポレーションの「顧客との価値共創」の魅力をさらに引き出すものになりそうです。この取り組みについては、またの機会にご紹介したいと思います。


多様な専門性がクロスする面白さ

今回のフォレストコーポレーション見学会は、経営、サービス学、カスタマーサクセス、事業改革、新規事業開発など、様々な専門性を持った方々の目線で、1つのテーマ(フォレストコーポレーションのサービスイノベーション)について意見を交わしたことで、これまでにない気づきがたくさん生まれてきました。複数の専門性がクロスしていることが、サービス事業の難しさでもあり、面白さだと思います。是非これからも、私はサービスサイエンティストとして、様々な専門領域の企業やプロフェッショナルの方々と取り組みや議論を共にさせていただき、そこで生まれたサービスの進化や変革への気づきを、この場を借りて皆様にお届けできればと思います。


※今回の見学会を引き受けてくださったフォレストコーポレーションの皆様、熱意と専門性に溢れる参加者の皆様、素晴らしい機会を共創くださり、誠にありがとうございました!

 

 

※参考書籍はこちら

価値共創のサービスイノベーション実践論

日本の優れたサービス 1、2




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<筆者プロフィール>
 


 松井 拓己 (Takumi Matsui)  
 松井サービスコンサルティング  
 代表
 サービス改革コンサルタント/サービスサイエンティスト

サービス改革の専門家として、業種を問わず数々の企業の支援実績を有する。国や自治体、業界団体の支援や外部委員も兼務。サービスに関する講演や研修、記事連載、研究会のコーディネーターも務める。岐阜県出身。株式会社ブリヂストンで事業開発プロジェクトリーダー、ワクコンサルティング株式会社の副社長およびサービス改革チームリーダーに従事した後、松井サービスコンサルティングの代表を務める。
著書:価値共創のサービスイノベーション実践論(生産性出版)、日本の優れたサービス2~6つの壁を乗り越える変革力~(生産性出版) ほか
 
▼ホームページURL/サービスサイエンスのご紹介
http://www.service-kaikaku.jp/