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【連載】CS向上を科学する

2022年9月9日

【CS向上を科学する:第107回】CXとCSとNPSを因果関係で結ぶ(1/2)~「CSはもう古い」の本当の意味~

 


 

松井サービスコンサルティング  
代表/
サービス改革コンサルタント  
松井 拓己  

 

 

「CSはもう古い。これからはCXだ!NPSだ!」という機運もだいぶ成熟し、もう少し冷静にこれらのキーワードの全体構造を理解して、戦略的に取り組み直す企業が増えているように思います。CXやNPSをCSと対立させて“点”で捉えても、表面的な取り組みにしかなりません。「評価指標を満足度からNPSに切り替えたけれど、結局は次の一手が見えてこなくて、調査がやりっ放しになっている」「CXに取り組んだけれど、ジャーニーマップを描いて実践しても成果に繋がらない」という具合です。もちろん、「CSはもう古い」と言う気持ちも良く分かります。CSに長年取り組んだけれど、結局成果が出なかったという苦い経験をしている企業も多いことでしょう。そこで今回は、CS、CX、NPSといったキーワードの因果関係を“線”で結んで全体像を捉え直したいと思います。全体像を捉えることで、自社がテコ入れすべき力点を見出し、戦略的にステージアップを目指すことができるのではと思います。

 

「CSはもう古い」の本当の意味

この言葉は、半分正解で半分は間違いです。確かにこれまでは、「CSなら何でも良い」「満足度が少しでも高まればビジネスは上手くいく」といった具合に、闇雲にCSに取り組んでいる企業が大半でした。これでは成果が出ないのは当然です。

当連載で紹介したように、CSには種類があります。リピートや推奨の意向につながるCSは「大満足」のみ。「やや満足」は97%がリピートや推奨をしない可能性が高い。しかも大満足であっても、「このコスパなら納得だ」というように論理的な理由で大満足した顧客は、「やや満足」以上にリピートや推奨につながらない傾向があります。裏を返せば、「すごく助かりました」「感激しました」のような感情的な理由の大満足のみが、リピートや推奨の成果につながるCSというわけです。詳しくはこちら:第4回 リピートに繋がるCS向上とは

このように、CSの種類や成果への分岐点をロジカルに理解せずに、闇雲にCSに取り組むのは「もう古い」と言えます。言い方を変えれば、長年のCS活動によって、心がけとして「CSマインドを持って仕事をする」ということは、十分にできている企業が多くなりました。そこで「心がけのCS」から卒業して、事業成長に直接的に貢献するCSへと、ステージアップを目指すべきタイミングにあるのだと思います。これが「CSはもう古い」は半分正解である理由です。

しかし、顧客に喜んでいただくことはビジネスの本質であり、この考え方が「もう古い」なんてことはないと思います。売上は顧客へのお役立ちのバロメーターであり、価値共創の原動力です。その意味で、「CSはもう古い」と切り捨ててしまうのは、少し問題があるようにも思います。そこで、これからのCSを、CXやNPSも含めて、どう捉えたらよいのかを整理しておきたいと思います。

 

CSとNPSの関係

NPS(ネットプロモータースコア)は、対象の商品やサービスを顧客が友人や家族などに薦めたいと思う度合いをスコア化したものです。CSが顧客の満足度を可視化するのに対し、NPSは推奨までしてくれるほどの顧客ロイヤルティが得られたのかを可視化しているため、NPSの方が成果直結の指標といえます。

これは「CSがダメで、NPSの方が良い」ということではありません。先述のCSの種類では、リピートや推奨といった成果につながるのは、「感情的な理由の大満足」のみとありました。つまり、CSの種類に着目すれば、NPSと感情的な大満足は、どちらも顧客ロイヤルティを可視化した成果直結型の評価指標として、同じ意味になります。この関係性を理解しておけば、無理にCSをNPSに切り替えなくても良いですし、CSとNPSを両方活かすことも可能になります。

でも、CSやNPSだけでは、評価の可視化はできても、「次の一手」で何をしたら良いか分からない。そんなお悩みも多いです。そこで登場するのが、CX(カスタマーエクスペリエンス)というわけです。CXについては、次回のコラムで取り上げたいと思います。

 
 

※参考書籍はこちら

日本の優れたサービス 1、2





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<筆者プロフィール>
 


 松井 拓己 (Takumi Matsui)  
 松井サービスコンサルティング  
 代表
 サービス改革コンサルタント/サービスサイエンティスト

サービス改革の専門家として、業種を問わず数々の企業の支援実績を有する。国や自治体、業界団体の支援や外部委員も兼務。サービスに関する講演や研修、記事連載、研究会のコーディネーターも務める。岐阜県出身。株式会社ブリヂストンで事業開発プロジェクトリーダー、ワクコンサルティング株式会社の副社長およびサービス改革チームリーダーに従事した後、松井サービスコンサルティングの代表を務める。
著書:価値共創のサービスイノベーション実践論(生産性出版)、日本の優れたサービス2~6つの壁を乗り越える変革力~(生産性出版) ほか
 
▼ホームページURL/サービスサイエンスのご紹介
http://www.service-kaikaku.jp/