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【連載】サービス産業の業務仕組み化

2022年10月14日

【第9回】業務基準書作成の事例~コープさっぽろ編~ 前編

 業務基準書作成の事例 ~コープさっぽろ編~

 前回は「業務基準書作成の骨格である業務SOAと作業SOAの評価と記述」についてお伝えしました。本稿では、生活協同組合コープさっぽろ様にインタビューさせていただいた内容を基に、「業務基準書作成の事例編」をお伝えしていきます。

 

ご回答者:生活協同組合 コープさっぽろ人財育成部 三浦部長、加藤 教育グループ長(取材時点)

 

 
 
業務基準書を導入する背景・きっかけ
 コープさっぽろ様は、2008年に後方業務と店舗での朝一作業が標準化したことを契機にトップの大見理事長の指示でマニュアルを作成する機会がありましたが、下記の問題点により定着しなかったそうです。
 
【問題点】
・ビジュアルがほとんどなく文字量が多かった
・観念的な記述が多く、実現するのが困難な内容が多かった
・完成形として扱われ、情報を更新することがなく2014年まで古い情報が記載されたままだった
 
 6年後の2014年マニュアルを改善しましたが、こちらも定着に至りませんでした。
【改善点】
・ビジュアルを増やし、文字量を大幅に減らした
・観念的な記述は避け、手の届く目標設定を定めた
・業務を固定作業と変動作業に分け、固定作業を時間軸で組み立てる内容にした
・標準時間を設定した
・動画を作成して組織内のイントラで公開した
【問題点】
・実際はマニュアルを見なくても仕事を進められるベテラン従業員が多く、機能しなかった
 
 2016年、ムジグラムを基にした業務仕組み化研究会のノウハウが公開されたことを受けトップの大見理事長が号令をかけ、売上の9割以上を占める店舗事業部と宅配事業部だけでなく、本部・後方機能も含めた全ての部署の業務基準書作成に取り組みました。大見理事長が松井忠三氏と交流があったことも後押しとなったそうです。同年、当セミナーに参加いただき、店舗事業部と宅配事業部の業務基準書を完成させ、翌年には他の部署の業務基準書も完成させたという流れになります。
 

※ムジグラム(MUJIGRAM)とは、2,000ページに渡って無印良品の店舗に関するあらゆる業務のやり方を詳細に記載したマニュアルのこと。38億円の大赤字からV字回復を達成した優れたマニュアル。

 
業務基準書の作成方法
 コープさっぽろ様では業務基準書の作成方法を下記のように設定しています。
 
作成メンバー
《標準化推進委員会》
2ヶ月に1度に開催される、トップ直轄の委員会。業務基準書作成の計画、進捗を取りまとめている。実務に詳しく、キャリアもあるメンバーが各部門から1〜2名参加。30歳前後の課長の下にいるマネージャーが担当になることが多い。本部・後方部門の業務基準書作成も担当する。
 
《業務基準書タスクチーム》
売上の9割以上を占める店舗事業部・宅配事業部の業務基準書作成を担当する。農産・畜産・水産・デリカ・日用品・食品・サポート・宅配から1名ずつ選抜されたメンバーで構成される8名のチーム。毎年4月~9月に、入社3~5年目くらいの若手の優秀な職員が推薦される。
業務内容の基準
新人のパートさんが読んで理解できるレベル
業務基準書の規模
413冊39,000ページ(2020年9月現在)
更新のタイミング
年3回、4月・8月・12月の1日が更新日。
最大の更新が8月に行われ、それを受けて9月に全部署による業務基準書のプレゼン会を実施。トップの前で、現在の到達点と成果、今後の課題を報告。
更新内容
・標準化推進委員会で大きなテーマを提示する。実務的には、店舗事業部・宅配事業部の場合はタスクチームがスーパーバイザーや商品部のバイヤーと相談し決定。
・年に14,5回、250人前後が現場の改善事例を発表する「仕事改革発表会」での260〜300ほどの改善事例を参考にしている。
更新方法
現場でタブレットを配布し、データ更新で対応。
 
業務基準書推進の秘訣、工夫したところ
 
  1. トップのリーダーシップ
    業務基準書の作成には全社的な取り組みが必要になるため、トップの決断と関与が必要不可欠です。トップ直轄の委員会である標準化推進委員会が、2ヶ月に1回情報共有や先進事例・優秀事例の学習、進捗点検などを行います。大見理事長は愛知出身ということからトヨタ改善方式に強く関心があり主たる考え方はIE/QCの手法に基づいていますが、そこに業務基準書と仕事改革発表会が加わることで、業務改善のスピードアップを実現しています。
  2. 現場の積極的関与
    業務基準書の作成を行うのは、店舗事業部・宅配事業部の場合は「業務基準書作成タスクチーム」が中心です。新人としての未熟さと、仕事をうまく進められるコツの両方を併せ持った入社3~5年目くらいの若手の優秀な職員を選抜しており、メンバーは毎年変わります。翌年のメンバーに向けた手紙には「●●したかったが、できなかった」などの課題点が書かれており、翌年のタスクチームに受け継がれていきます。その他事業部の場合はその部署独自で作成を進め、人財育成部がそれをサポートします。
  3. 事務局のサポート
    トップ直轄の部署である人財育成部が事務局機能を果たし、作成サポート、完成したデータの管理を担当しています。業務基準書を更新したい部署に対しての相談会も実施し、出来上がったものに対してフィードバックも行います。
  4. 3分ショート動画の導入
    2020年から業務基準書の動画化を進めています。読むのに時間がかかる紙ベースの業務基準書は辞書のような役割にし、実際の教育の現場では3分ほどのショート動画を見ることをルール化しています。動画は、タスクチームがGoProなど市販のカメラを使い1日1本を目標に作成しており、現在では800本が完成しています。