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【連載】CS向上を科学する

2022年4月8日

【CS向上を科学する:第104回】事前期待の的がサービスのムリ・ムダ・ムラを解消する~モノづくりとは違う、サービスの効率化~

 


 

松井サービスコンサルティング  
代表/
サービス改革コンサルタント  
松井 拓己  

 

 

事前期待の的の見定め方について、数回にわたってガイドとなる考え方に触れてきました。ここで少し視点を変えて、「事前期待の的」を見定めることの2つの効果について整理したいと思います。1つはもちろん、目に見えないサービスの価値を定義することで、組織的なサービスの価値向上やサービス開発を強力に推進できるようになることです。そして2つ目は、組織的なサービスの効率化(ムリ・ムダ・ムラの解消)が進むことです。今回は、後者について詳しく取り上げていきます。

サービスのムリ・ムダ・ムラとは何か

モノづくりの現場ではよく、製造ラインのムリ・ムダ・ムラを解消して効率化を進めています。しかしサービスは「お客様と一緒につくるもの」であるため、工場の中でモノを作るのとはわけが違います。モノづくり発想のムリ・ムダ・ムラではなく、サービスにおけるムリ・ムダ・ムラとは何か?これをしっかりと理解してサービスの効率化に取り組む必要があります。そのうえでも、事前期待の的を見定めることが、非常に重要だとお分かりいただけると思います。

ムダ:努力が顧客の事前期待に合致していない状況

 

大前提として、当コラムで当初から紹介している“サービスの定義”から分かるように、サービス提供者としては良かれと思ってしたことであっても、顧客の事前期待に合致していなければ「余計なお世話」や「無意味行為」「迷惑行為」となってしまいます。「事前期待」に合致することだけが“サービス”なのです。
(詳しくはこちら:第7回 サービスの本質に迫る、サービスの定義)

だからこそ、事前期待の的を見定めて、その事前期待に応える努力に集中すべきなのですが、実際には「何を開発したらよいか?」「何を提案するか?」「どんな対応をするのか?」といった打ち手にばかり注目してしまいがちです。事業としてサービスの価値を象徴する「事前期待の的」を明確にすることで、“ムダ”つまり事前期待に合致しない努力を極力削減し、事前期待に合致する努力に集中することが重要です。

ムリ:本来応えるべきでない事前期待にまで応えようとしている状況

 

顧客の事前期待は実に様々です。同じ顧客の中にも、いくつもの事前期待が存在しています。事前期待の的が定義されていないと、顧客の様々な事前期待になんでもかんでも闇雲に応えようとしてしまいます。ともすると、価格競争から脱却しようとしているサービス事業において、顧客に喜んでいただくために「安くしてほしい」という事前期待に安易に応えてしまうというケースも少なくありません。“ムリ“をして何でもかんでも事前期待に応えようとすると、現場や事業が疲弊してしまいます。積極的に応えるべき事前期待の的を見定めて、そこに努力を集中するのです。

ムラ:事前期待に応える程度が組織的にばらついている状況

 

さて、実際に事前期待の的を見定めたとしても、それに応える程度が、人材や時期によってバラついてしまうのが、悩ましいところです。その原因は、1つは「事前期待へのアンテナの感度」のバラつきです。顧客から同じ話を聞いても、そこで真の事前期待に着目できる人材と、表面的な事前期待にしか気づけない人材がいる。こうなると、サービスの価値や品質に“ムラ”が生じてしまいます。2つ目の原因は、「事前期待に応える打ち手」のバラつきです。具体的にどのような手段で、どのようなプロセスを経て、事前期待に応えるのが良いのか。これも人材によって“ムラ”が生じやすい要因です。また、繁閑差が大きな業界では、繁忙期に期待に応えるまでの時間がかかってしまったり、対応の工数に制限があるなど、物理的な要因も起因します。

だからこそ、これまで触れてきたように、事前期待へのアンテナの感度を高める「事前期待の的」と期待に応える打ち手を設計した「サービスプロセスモデル」からなる“サービス設計”を明確にし、組織で運用することが有効なのです。

事前期待の的の効果

事前期待の的をサービス設計として定義することで、サービスのムリ・ムダ・ムラを解消して業務の効率化を進められます。同時に、空いた工数で、事前期待の的に応えるための努力に集中すれば、組織的なサービスの価値向上も推進することができます。サービスの効率化と価値向上を同時達成するためにも、是非、サービス事業における「事前期待の的」について、議論してみて頂ければと思います。

 

 

※参考書籍はこちら

価値共創のサービスイノベーション実践論

日本の優れたサービス 1、2





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<筆者プロフィール>
 


 松井 拓己 (Takumi Matsui)  
 松井サービスコンサルティング  
 代表
 サービス改革コンサルタント/サービスサイエンティスト

サービス改革の専門家として、業種を問わず数々の企業の支援実績を有する。国や自治体、業界団体の支援や外部委員も兼務。サービスに関する講演や研修、記事連載、研究会のコーディネーターも務める。岐阜県出身。株式会社ブリヂストンで事業開発プロジェクトリーダー、ワクコンサルティング株式会社の副社長およびサービス改革チームリーダーに従事した後、松井サービスコンサルティングの代表を務める。
著書:価値共創のサービスイノベーション実践論(生産性出版)、日本の優れたサービス2~6つの壁を乗り越える変革力~(生産性出版) ほか
 
▼ホームページURL/サービスサイエンスのご紹介
http://www.service-kaikaku.jp/