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【連載】CS向上を科学する

2020年11月5日

【CS向上を科学する:第89回】第3回日本サービス大賞を発表~新たな時代のトップランナーサービス~


 

松井サービスコンサルティング
代表/
サービス改革コンサルタント
松井 拓己

 

10月27日に、第3回日本サービス大賞の表彰式が開催されました。コロナ禍で2000人収容可能な会場に200人限定での表彰式の開催でしたが、菅総理をはじめ各大臣、JETRO理事長、日本生産性本部会長より、約800件の応募の中から選ばれた30の優れたサービスに対して表彰状が授与され、業種や地域、規模を越えた優れたサービスに注目が集まりました。

今回受賞した30件のサービスは、第2回目までの49件とはまた一味違う顔ぶれとなりました。
受賞サービスの一覧はこちら
今後、当コラムでは第2回までと同様に、第3回日本サービス大賞の受賞サービスについて、表面的な具体策やビジネスモデルの観点ではなくサービスモデルの観点でひも解くことで、業種やジャンルの枠を越えて優れたサービスから自社サービスを高めるためのヒントを得ていただければと思っています。今回は、受賞サービスの中から特徴的な点を少しだけご紹介したいと思います。
 

モノがつくれる強みを活かしたサービスモデル

これまでになく目を引いたのが、やはり製造業のサービス事例でした。どれも、モノづくりの限界をサービスモデルで突破しており、大変素晴らしいサービスだと感じました。

内閣総理大臣賞を受賞したコマツのスマートコンストラクションは、自社のIoT建機であるコムトラックスによるサービス提供の枠をはるかに越えて、他社製建機や人による作業まで含めて、建設工事プロセス全体の生産性を格段に高めるサービスモデルです。

JETRO理事長賞を受賞したミスミのmeviy。ミスミはもともと、機械部品のカタログ化で製造業の部品調達のインフラを構築していました。しかし形状が複雑な受注生産部品はカタログ化できずにいました。そこで生まれたのがmeviy です。DXによって3D図面からその場で即見積もり。注文と同時に加工を開始することで、最短即日発送を可能にしました。カタログとmeviyの両者が揃ったことで、真にモノづくりのインフラとして完成したように思います。

優秀賞のアシックスの足形計測サービス。人の足は左右で形も癖も異なりますが、シューズは左右対称。そこで、足形計測データを活かして、それぞれの顧客の足とシューズとを真にフィッティングするのが当サービス。足形とランニングフォームの計測にかなりの店内スペースを割いているのも、ショップは靴を買う場所ではなく、ランニング経験を高める場と再定義している証拠だと思います。
 

新たな時代に向けたサービスモデル

また、ポストコロナに向けた新たな社会に貢献するサービスも取り上げられていました。生産性向上が喫緊の課題である医療現場で、医師が患者と向き合う時間を創出する「AI問診ユビー」。サービスのオンライン化が加速する中で、アーティスト等のファンの熱量データを見える化する「Bitfan」。展示型のミュージアムとは一線を画す、顧客との共創型でアートが変化する森ビル・チームラボの「デジタルアート ミュージアム」。

社会問題をサービスモデルで解決しようとしているサービスも多くありました。様々な理由で、まだ食べられるのに廃棄されてしまう食品を再流通させるフードシェアリングプラットフォームの「クラダシ」。花きの商流の負の側面と非効率を解消し、農家と生花店の両者を直接結び付けて、計画作付け・計画仕入れを可能にするオークネットの花きの「お取寄取引」。赤字路線が多くを占める地方の路線バス事業を、工学的アプローチによって土台を固め、その上に観光興しによる需要創出で進化させたイーグルバスの「交通まちづくり」。タクシーを移動のインフラではなく、人と物を運べるサービススタッフの地域インフラを捉え直して、介護や警備サービスの担い手に生まれ変わったつばめタクシーグループの「あんしんネットワーク」。

他にも大変興味深いサービスばかりです。優れたサービスを面白い事例として表面的に捉えるのではなく、業種や地域、規模の枠を越えて、サービスを磨き上げるポイントを見出していけるよう、当コラムで取り上げてきたサービスの本質論を踏まえてひも解いていきたいと思います。


※参考書籍はこちら
日本の優れたサービス2~6つの壁を乗り越える変革力~
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日本の優れたサービス~選ばれ続ける6つのポイント~


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<筆者プロフィール>
 


松井 拓己 (Takumi Matsui)  
松井サービスコンサルティング  
代表
サービス改革コンサルタント/サービスサイエンティスト

サービス改革の専門家として、業種を問わず数々の企業の支援実績を有する。国や自治体、業界団体の支援や外部委員も兼務。サービスに関する講演や研修、記事連載、研究会のコーディネーターも務める。岐阜県出身。株式会社ブリヂストンで事業開発プロジェクトリーダー、ワクコンサルティング株式会社の副社長およびサービス改革チームリーダーに従事した後、松井サービスコンサルティングの代表を務める。
著書:日本の優れたサービス2~6つの壁を乗り越える変革力~(生産性出版)
         https://www.amazon.co.jp/dp/4820120905/

▼ホームページURL/サービスサイエンスのご紹介
http://www.service-kaikaku.jp/