2019年11月7日
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コンビニの6倍以上、約36万5千店もがひしめく理美容業界において、千葉県を中心に6ブランド、直営50店舗以上の美容室を展開し、15年連続で2ケタ成長しているオオクシ。第2回日本サービス大賞の優秀賞を受賞した同社の驚異の成長の背景には、独自のサービス経営モデルがあります。
――一人ひとりが主役、笑顔とともに 理美容室「オオクシSTYLE」(優秀賞)―
【サービス内容】
千葉県を中心に6ブランド・48店舗の理美容店を展開する中で目指しているのは、「ハイクオリティーなサービス」を「リーズナブルな価格」でお客様に提供すること。「オオクシSTYLE」 と名付けられたこの取り組みが各店に浸透し、お客様からの評価が高まっている。
【受賞ポイント】
・再来店率85%以上、顧客数の増加と生産性向上により15年連続で売上高2桁成長を実現
・自社を「スタッフ一人ひとりが自分を活かすための共同組織」と位置づけ、経営理念の浸透と自己の振り返りに注力
・多様なデータで全体から個人までの取り組みを検証。努力すべき点を把握し成果につなげる
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※ 内容は受賞当時
まぐれ当たりのサービス経営から卒業する
サービスイノベーションのきっかけは、多くが「まぐれ」だと話す社長の大串氏。しかし、この「まぐれ」を、そのままにしておく会社と、「まぐれ」を自分たちで再現できるように努力する会社の差が、サービスの改革の成否を分けると捉えているそうです。繁盛店を「まぐれ」で終わらせないためには、コントロールできる数値を増やせるよう、サービス経営に科学を活かす必要があるのです。
たとえば、1回目のリピートは、他社と比較した結果の行動として「他社競争力」を示す指標。2回目のリピートは、1回目と2回目の「サービスのバラツキ」を示す指標と捉えています。このように、業績指標にも意味を持たせることで、自分たちの努力を成果に結びつけられるようにしているのです。
加えて、分析結果はサービスマニュアルに落とし込んでいます。折角の分析結果や経験知も、サービス設計に落とし込めなければ消えていってしまいます。オオクシでは、10年以上にわたり、リピート向上のための取り組みを分析してマニュアルに反映し続けているのです。オオクシの事業としての強さの秘訣は、時間とともにコントロールできる指標を増やし、時間とともにサービス設計に磨きがかる、積み上げ型のサービス経営にあるといえます。
従業員の目線を上げる
強い会社とは、スタッフと経営者が同じ目を共有できている状態だと語る大串氏。共同体組織として、従業員が経営者と同じ目線を持つことを大切にしています。まさに、経営と現場が一緒になって事業をつくる共創型経営を実践しているといえます。
オオクシでは、100ページもある事業計画書や事業報告書、毎月の経営会議の議事録を、パート従業員も含めた全スタッフに公開しています。大串氏自身の考えを毎月レポートにまとめて全スタッフに共有しています。さらには、経営者を含めた食事会やミーティングを年間150回以上も行っています。経営の思いや事業状況、現場の事例もすべて共有することで、全スタッフが自分たちで事業をつくり上げる意識が持てるように目線を上げているのです。
フィロソフィーという360ページの冊子を作り、朝礼で1ページずつ従業員が読むようにもしています。これにより判断基準が明確になり、日常業務の中で従業員が、オオクシの一員としてより正しい判断をできるようになっていきます。
このように、経営の思いを組織全体に共有する取り組みを長年続けてきたことで、目線の高い経営者のようなリーダーが育っています。理念やマインドだけに頼るのではなく、目に見えないサービス事業の成功ポイントを徹底的に科学しているのです。
大串氏は言います。「人としての成長がないとサービスが高まり切らない。人としての成長を従業員が実感できたとき、自ら継続的に努力するモチベーションを手に入れることができます。成果が出るからこそ、理念が心に入る、日常業務に込められるのです。」
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<筆者プロフィール>
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松井 拓己 (Takumi Matsui) 松井サービスコンサルティング 代表 サービス改革コンサルタント/サービスサイエンティスト |
サービス改革の専門家として、業種を問わず数々の企業の支援実績を有する。国や自治体、業界団体の支援や外部委員も兼務。サービスに関する講演や研修、記事連載、研究会のコーディネーターも務める。岐阜県出身。株式会社ブリヂストンで事業開発プロジェクトリーダー、ワクコンサルティング株式会社の副社長およびサービス改革チームリーダーに従事した後、松井サービスコンサルティングの代表を務める。 |