2019年5月10日
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前回までに、サービスイノベーションや事業変革における3つの力を取り上げました。この中でカギを握っているのが「確信に変える力」であり、そのために有効な取り組みとして、サービス改革を「実験する」というものでした。仮説を元にして実験し、良い反応からも悪い反応からも学びを得て、サービスの組み立てをブラッシュアップしていきます。同時に、成果実感が時間とともに高まることで、事業変革への確信が高まります。まずは自分自身が確信を持ち、仲間と確信を共有し、組織のみんなの確信に変える。このステップを上がっていくことができれば、イノベーションや変革の実現可能性は極めて高くなるのです。
事業変革を加速する
「サービス改革に取り組む企業は、どれくらいの期間でこのステップを上がっていくんですか?」
こんな質問をよくいただきます。実際には、半年で駆け上がった企業もあれば、一年に一段ずつ時間をかけてステップアップしていく企業もあります。この差はどこにあるのか。それは、「壁に向かう力」の違いです。
事業の変革は必ず壁にぶつかります。このとき、すぐに諦めてしまったり、妥協してしまう。「面倒だから誰かやってよ」と避けてしまう。これでは変化への抵抗感を乗り越えて事業を変革することはできません。壁に直面した時、それにどう向かうかによって、変革のスピードは大きく変わります。「壁に向かう力」は事業変革に欠かせないのです。
壁に向かう力を高める2つのポイント
以前取り上げた6つの壁の中の「情熱の壁」を乗り越えるためのポイントである「ビジョン、危機感、使命感」に火を付けることです。ビジョンがなければ、どっちに向かって走っていったらよいか分かりません。ビジョンを持つことは大切です。しかし、ビジョンだけでは、人も組織も変われません。変化を生むためには、危機感が極めて重要です。事業が順調なときほど、危機感に正しく火をつけなければ、変化への抵抗感になります。そして使命感です。自分達の手で、サービス事業を創り上げていくんだという使命感こそ、妥協や諦め、変化への抵抗感に打ち勝つことができるのです。
自分自身のビジョン、危機感、使命感に火を付け、それを伝播させて仲間をつくっていくことが、様々な壁を乗り越えながらサービス事業をつくり変えていく原動力になるのです。
しかし、精神論だけでは組織的な変革は推進できません。そこでもう1つのポイントも重要です。6つの壁の中の「建前の壁」を乗り越えるためのポイントである「シナリオを描く」ことです。ここでいう事業シナリオとは、この取り組みを通して事業が具体的にどのように成長していくのかを明示するものです。あるいは、今のままでは数年後にこの事業は具体的にどんな危機に直面するのかを示す危機感シナリオを描くこともあります。事業シナリオを描くことで、組織的な取り組みのベクトルを揃え、共通言語をつくることができるのです。
リーダーは何をリードすべきか。マネジメントは何を率先垂範すべきかという問いがあります。プレイングマネジャーとして、業務をリードすることも大切です。それ以上に大切なのは、業務に追われると薄れがちになるビジョン・危機感・使命感を示し、壁に向かう姿勢ではないでしょうか。
ビジョン、危機感、使命感に火を付けて事業の変革ストーリーを明確にすることこそ、壁に向かう力となり、事業変革のステップアップを加速してくれるはずです。
※参考書籍はこちら
日本の優れたサービス~選ばれ続ける6つのポイント~
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<筆者プロフィール>
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松井 拓己 (Takumi Matsui) 松井サービスコンサルティング 代表 サービス改革コンサルタント/サービスサイエンティスト |
サービス改革の専門家として、業種を問わず数々の企業の支援実績を有する。国や自治体、業界団体の支援や外部委員も兼務。サービスに関する講演や研修、記事連載、研究会のコーディネーターも務める。岐阜県出身。株式会社ブリヂストンで事業開発プロジェクトリーダー、ワクコンサルティング株式会社の副社長およびサービス改革チームリーダーに従事した後、松井サービスコンサルティングの代表を務める。 |