2019年4月3日
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「見つけて、飛びつけ!」それがサービスイノベーションだといわれると、諦めたくなってしまいます。イノベーションを起こすという発想ではなく、イノベーションを取り組むものとして捉え直すことが、サービス経営には欠かせません。そこでカギを握るのが、サービスイノベーションの1つ目の「見つける力」と3つ目の「飛びつききる力」を結ぶ、2つ目の力というわけです。
カギは「確信に変える力」
先日、第2回日本サービス大賞の優秀賞を受賞した理美容会社オオクシの大串社長が印象的なことを仰っていました。
―――サービスイノベーションは、どれも最初は「まぐれ」なんです。これを「まぐれ」のままにしている会社と、「まぐれ」を再現できるように努力する会社の差が、サービスイノベーションを実現できるかどうかを分けると思います。―――
まぐれ当たりに飛びつききれと言われても、そんな経営判断はなかなかできないと思います。しかし、イノベーションや変化の糸口を「確信に変える」ことができたら、飛びつききるための決心を準備しやすくなるのではないでしょうか。サービスイノベーションに取り組むためには、1つ目の見つける力と3つ目の飛びつききる力を、「確信に変える力」で結ぶことが重要なのです。
目指すは「みんなの」確信
確信に変えるといっても、自分ひとりが確信を持っても組織は動かないことが多いものです。目指すは「みんなの確信」です。そこで有効なのが、以前取り上げた「サービスの実験」としてのサービス改革活動というわけです。実験を通して得られた顧客接点での経験知や顧客からの反応に学びを得ながら、サービスイノベーションの取り組みを軌道修正したり、確信を高めていきます。うまくいかなくても良いのです。実験だとすれば、うまくいかなかった経験からも十分に学ぶことはできるはずです。この取り組みを通して、確信を高めながら、サービス改革をステージアップさせていくことが、サービスイノベーションに取り組むことだといえます。
現状では、日本企業のサービスイノベーションやサービス開発は、実験をしていないのに、一発本番だという意識が強いものです。少しうまくいかないと、すぐに引っ込めてしまう。これではせっかくの経験知をどぶに捨てるようなものです。変化の糸口を確信に変えるための実験として、サービス改革にチャレンジするという発想を持って取り組みたいところです。
新時代を生き抜くサービス経営のヒント
これからのサービス経営は、サービスイノベーションを起こさなければ(崖を飛び上がらなければ)という発想ではなく、イノベーションに取り組む(階段をステップアップする)と考えることが重要です。そこで、イノベーションに取り組むサービス経営には「確信に変える力」がカギになると思います。そのために、当連載で取り上げてきたサービス科学は大いに役立つはずです。
これまで多くのサービス改革を進める中で、よくぶつかる「6つの壁」について以前のコラムで取り上げました。建前の壁、顧客不在の壁、闇雲の壁、実行の壁、継続の壁、情熱の壁です。この壁を乗り越えることを前提にサービス改革を組み立てる必要があります。加えて、今回取り上げた「みんなの確信に変える」ためのイノベーションのステップを4つに整理しています。できればこの階段をなるべく早くステップアップしていきたいものです。これらについては、またの機会に詳しく取り上げたいと思います。
※参考書籍はこちら
日本の優れたサービス~選ばれ続ける6つのポイント~
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<筆者プロフィール>
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松井 拓己 (Takumi Matsui) 松井サービスコンサルティング 代表 サービス改革コンサルタント/サービスサイエンティスト |
サービス改革の専門家として、業種を問わず数々の企業の支援実績を有する。国や自治体、業界団体の支援や外部委員も兼務。サービスに関する講演や研修、記事連載、研究会のコーディネーターも務める。岐阜県出身。株式会社ブリヂストンで事業開発プロジェクトリーダー、ワクコンサルティング株式会社の副社長およびサービス改革チームリーダーに従事した後、松井サービスコンサルティングの代表を務める。 |