2018年8月23日
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第2回 日本サービス大賞の内閣総理大臣賞を受賞した三菱地所の丸の内のまちづくり。「まちづくりってサービスだったんですね」という素朴な気付きから、様々な業界で激化するサービス競争に勝ち抜くために、自社ビジネスをサービスの視点で見つめ直す必要があることが見えてきました。今回は、まちづくりをサービスづくりと捉えることで、サービス開発のしかたのポイントをひも解きます。
第2回日本サービス大賞 内閣総理大臣賞
街のブランド化に向けた丸の内再構築の地域協働型プロデュース
(三菱地所)
出典:第2回日本サービス大賞
サービスの開発のしかた
丸の内再構築プロデュースの場合、まちづくりをサービスと捉えることで、従来のディベロッパーの枠を越えるまちづくりを実現しているといえます。サービスの価値は、「何を手に入れるか」以上に、「どんな経験ができるのか」が大きく影響します。つまり、サービスとしてのまちづくりは、建物などの組み立てだけでなく、丸の内仲通りなどの公的空間も含めたソフト面でいかに賑わいを狙い通りに組み立てられるかがカギを握っているのです。
モノや建物、メニューの開発ばかりに注力している企業と、その先の利用経験まで組み立てて働きかけられる企業とで、サービスの価値に大きな差がつくのは当然のことです。しかし実態は、「サービス設計部」といった専任部隊がない企業がたくさんあります。サービスの設計があいまいでは、狙い通りにサービスの価値を高めることはできません。これを機に、サービスの開発や設計の在り方を見直す必要がありそうです。
また、丸の内のまちづくりは、自社所有の土地が3割ほどしかなく、他の地権者も含めた地域内連携や公民連携で「一緒につくる」ことにこだわっている点も先進的であるといえます。
サービスには、「お客様と一緒につくるもの」という極めて重要な特徴があります。事業者が勝手に作り上げたサービスでは、顧客に受け入れられないことが多いものです。さらにはサービスの開発は、モノの開発のように図面上などで出荷前につくり込んで品質を高めることが難しい側面があります。そこで、サービスの開発は、完成度が100点満点でなくても「やってみる」ことが大切です。やってみたからこそ分かった経験知をもって、顧客と一緒に完成度を高めていくべきなのです。自社のサービス開発は、顧客と一緒につくることができているだろうか?社内で勝手にサービスをつくり込んでしまって、顧客不在のサービスになっていないだろうか?是非見つめ直してみてください。
丸の内のまちづくりは、今もなお発展途上であり、街の利用者も一緒になってサービスを磨き上げている真っ最中だといえます。2020年の東京オリンピック、さらにその先へ向かって、日本流サービスイノベーションの発信基地としても、丸の内のまちづくりがどのように展開していくのか楽しみです。
※参考書籍はこちら
日本の優れたサービス~選ばれ続ける6つのポイント~
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<筆者プロフィール>
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松井 拓己 (Takumi Matsui) 松井サービスコンサルティング 代表 サービス改革コンサルタント/サービスサイエンティスト |
サービス改革の専門家として、業種を問わず数々の企業の支援実績を有する。国や自治体、業界団体の支援や外部委員も兼務。サービスに関する講演や研修、記事連載、研究会のコーディネーターも務める。岐阜県出身。株式会社ブリヂストンで事業開発プロジェクトリーダー、ワクコンサルティング株式会社の副社長およびサービス改革チームリーダーに従事した後、松井サービスコンサルティングの代表を務める。 |