2018年8月6日
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「第2回 日本サービス大賞※」の受賞サービスが発表されました。今回は第1回目の31件とは異なる顔ぶれの18件の受賞サービスが並んでいます。
※サービス産業生産性協議会(SPRING)が主催する優れたサービスを表彰する制度
いまや「サービス」は、あらゆる業界で事業の競争力や成長力そのものになり、日本の優れたサービスから気付きや学びを得て、自社サービスを磨き上げる企業が増えてきました。しかし、既に様々なサービスの事例に触れた方の中には、「事例って興味深いけれど、自社で何を活かしたら良いか分からない」、「業界や事業モデルが違うので、打ち手をそのまま取り入れても役に立たない」という思いを抱いている方が多いものです。そこでこの優れたサービスの事例を表面的にとらえるのではなく、サービスやCSの本質論で業界の枠を越えて活かせるポイントをひも解いていきたいと思います。
第2回日本サービス大賞 内閣総理大臣賞
街のブランド化に向けた丸の内再構築の地域協働型プロデュース
(三菱地所)
出典:第2回日本サービス大賞
栄えある第2回日本サービス大賞の最高賞である内閣総理大臣賞を受賞したのは、三菱地所の丸の内再構築事業です。具体的な表彰内容にはこうあります。
【サービスの内容】
丸の内エリアのビジネスセンターとしての価値を捉え直し、 「世界で最もインタラクションが活発な街」をコンセプトに、従来のディベロッパーの枠を超え、公的空間も含めた街全体の変革をトータルプロデュースするサービス。
【特に評価されたポイント】
●エリア内の約7割を占める他の地権者との協議体制、地権者と千代田区・東京
都・JR東日本との公民連携体制を構築。
●ハードとソフトの両面から街づくりを進め、土日も賑わう丸の内エリアを実現。
日本を代表するビジネスセンターとして、グローバル都市・東京の国際競争力を
向上させた。
●イノベーションの発信基地にむけた街づくりは現在も続いており、その取り組み
は日本独自の「場のデザイン」と同時にグローバルへの普遍性を持つ。
「まちづくりってサービスだったんですね」
第2回日本サービス大賞が発表された際に多かったのが、「まちづくりって、サービスだったんですね」という感想や質問でした。これはとても大切な気付きだと思います。
いま、全ての産業でサービス業化が進んでいます。サービスの価値で競う時代になったのです。六次産業化では、一次産業がサービスに乗り出すことで事業性を高めようとしています。製造業のサービス化では、モノづくり企業がモノを作れるサービス業に生まれ変わることで競争力を高めようとしています。もちろん、従来のサービス業においても、メニューやキャンペーンなどの単発的な競争や、ジリ貧の価格競争から抜け出して、サービスの真価を高めることで選ばれ続けるサービス事業にステージアップしようとしている企業が多くみられます。
自分達はサービス業だと自己認識していない業界や企業こそ、サービスの観点で自社ビジネスを見つめ直すと、価値向上や差別化の糸口を見つけることができます。他方で、サービス業と自己認識していてもモノや建物づくりに気を取られて、メニューや店舗、キャンペーンの開発に傾倒して、肝心なサービスの価値を高める意識が希薄な企業も、要注意だといえます。
自分たちの本業をサービスの観点で見つめ直すことで、サービスの開発やブラッシュアップのしかたをテコ入れするヒントが見えてきます。次回は丸の内のまちづくりから、サービス開発のしかたのポイントをひも解いてみたいと思います。
※参考書籍はこちら
日本の優れたサービス~選ばれ続ける6つのポイント~
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<筆者プロフィール>
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松井 拓己 (Takumi Matsui) 松井サービスコンサルティング 代表 サービス改革コンサルタント/サービスサイエンティスト |
サービス改革の専門家として、業種を問わず数々の企業の支援実績を有する。国や自治体、業界団体の支援や外部委員も兼務。サービスに関する講演や研修、記事連載、研究会のコーディネーターも務める。岐阜県出身。株式会社ブリヂストンで事業開発プロジェクトリーダー、ワクコンサルティング株式会社の副社長およびサービス改革チームリーダーに従事した後、松井サービスコンサルティングの代表を務める。 |