2017年11月30日
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「期待を超える」ことが、CS向上のためには重要なのだという考え方が、様々な業界に浸透しています。しかし一方で、「期待を超えろ」と言われてもピンとこないという意見もよく耳にします。「お客様に喜んでもらいたい気持ちはあるが、期待を超えろと言われると負担に感じてしまう」「期待を超えるために、なんでもかんでもしなければいけないのか?」「どこまでやればいいのか?」「具体的に何をしたら良いのか?」といった具合です。その結果、CS向上の取り組みに納得感が持てず、「期待を超える」という言葉が空回りしてしまっていることもあるようです。そこで今回は、効果的かつ組織的にCS向上の取り組むために、「期待を超える」を、期待の「値」ではなく「内容」に着目するように捉え直す考え方を紹介したいと思います。
なぜ「期待を超える」なのか
そもそも期待を超えるという考え方はどこからきているのか。それは、当連載の第1回目にも紹介した顧客満足の定義に由来します。
『顧客満足は、お客様がサービスを受ける前に抱いている事前期待を、サービスを受けた後の実績評価が上回ったときに得られる。』これが顧客満足の定義です。逆に、事前期待よりも実績評価の方が小さいと、ガッカリされてお客様を失ってしまいます。それでは、事前期待と実績評価がほぼイコールの場合はどうでしょうか。これは「期待通りのサービス」ではありますが、実は印象が薄いので競合他社にお客様を奪われてしまう可能性があります。可もなく不可もないサービスでは、お客様にしてみれば「べつにここのサービスじゃなくても良い」と思われていることが多いのです。
つまり、お客様の事前期待を超える実績評価を得ることで、顧客満足は向上するというものです。この顧客満足の定義は、言われてみれば当たり前の内容でイメージ通りという印象を持った方も多いのではないでしょうか。論理的に考えれば、CS向上のために「期待を超える」という方針は間違っていないのです。しかしサービスビジネスの実情としては、「期待を超える」という考え方が実態を伴わずに苦戦しているというわけです。ビジネスの現場で、より実践的かつ効果的にCS向上を推進するために、「期待を超える」を捉え直す必要がありそうです。
実践を見据えて、「期待を超える」を捉え直す
捉え直すといっても、顧客満足の定義が変わるわけではありません。着眼点を少しだけ変えることで、より実践的なCS向上の糸口が見えてきます。
顧客満足の定義や「期待を超える」という考え方は、一般的には、お客様の事前期待のサイズに着目し、そのサイズを超える実績評価を得ようという意味合いが強いです。事前期待を、「期待値」や「期待の高さ」という具合に数値的に捉えています。この場合、目標として「期待を超えよう」という方針は分かりやすいのですが、そのために何をすべきかの具体策がイメージし難く、なにをどこまでやったら良いのか分からなくなってしまうことが多いのです。
そこで、事前期待の「値」から「内容」に着目し直すことが有効です。「期待以上のサービスだ」と感じて頂くためには、どんな事前期待に応えるべきなのかを考えるのです。事前期待は2つに分類することができます。その期待に応えることでお客様が価値を感じてくれる「価値ある事前期待」と、その期待に応えることは当然だと捉えられている「当たり前な事前期待」です。このうちで、「価値ある事前期待」は、具体的にはどんな内容なのかを明確にします。事前期待の内容がはっきりすることで、その期待に応えるために具体的に明日からどんな努力をすべきかも明確になります。応える価値のある事前期待と、それに応える具体策が明確になれば、経営から現場までが納得感を持って、効果的かつ組織的なCS向上を進めることができるようになります。
「期待を超える」でなくとも、「価値ある期待に応える」ことで、十分にCSは向上します。逆に、「当たり前な事前期待」を超えたところで、さほど評価は向上しないことも多いものです。ぜひ、CS向上を考える際には、「何をしたら良いか?」の前に、まずは「我々が応えるべき価値ある事前期待は何か?」について、徹底的に議論してみて頂ければと思います。
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<筆者プロフィール>
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松井 拓己 (Takumi Matsui) 松井サービスコンサルティング 代表 サービス改革コンサルタント/サービスサイエンティスト |
サービス改革の専門家として、業種を問わず数々の企業の支援実績を有する。国や自治体、業界団体の支援や外部委員も兼務。サービスに関する講演や研修、記事連載、研究会のコーディネーターも務める。岐阜県出身。株式会社ブリヂストンで事業開発プロジェクトリーダー、ワクコンサルティング株式会社の副社長およびサービス改革チームリーダーに従事した後、松井サービスコンサルティングの代表を務める。 |