2017年10月24日
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前回は、製造業のサービス化はなぜ苦戦するのかというテーマについて、まずは「サービス」や「サービス化」をどう捉えているのかに着目しました。今回は、サービスの作り方を取り上げてみたいと思います。
製造業に限らず、サービスの競争力を高めようという取り組みの多くが、「いいサービスであれば喜ばれるはず」という思いで勝手に作ったサービスを、一方的にお客様に押し付けてしまっています。サービスはお客様と一緒につくるものだという大切な特徴があります。いくらこちらが良かれと思って提供したことであっても、お客様の事前期待に合っていなければ「サービス」とはいえません。それはもはや、余計なお世話や無意味行為、迷惑行為と呼ばれてしまいます。サービスを開発したり、提供しようと思ったら、お客様の事前期待を捉えなければ、サービスを提供することすらできないのです。製造業のサービス化を通して、具体的にどんな事前期待に応えようとしているのでしょうか?闇雲に取り組むのではなく、事業の成長や競争優位性の確立も見据えて、事前期待の的を見定めておきたいところです。そして、お客様不在の取り組みになってしまっていないか、是非見つめ直したいものです。
続いて、サービスの組み立てについて振り返ってみたいと思います。製品の設計は、時間もお金も人も割いて命がけで取り組んでいることと思います。一方でサービスの設計はどうでしょう?会社の組織図を見ても、「サービス設計部」という部署すらないことがほとんどです。サービスの設計といっても、失点しないための必要最低限の業務標準が定められているだけということも少なくありません。失点しないことも大切ですが、サービスで事業成長をドライブするためには、得点型のサービスに組み立て直すことが有効です。更には、製造業においては、社内での顧客接点やサービス部門の立ち位置が低いことがあります。その原因は、周囲からの過小評価もあれば、自分たち自身で勝手に枠を決めてしまっていることもありますが、いずれにしても、サービスで価値を発揮するためには、部門の壁を越えた連携が必要な場面があります。そこで、サービス部門だけに閉じたサービス設計ではなく、顧客の事前期待に応えるために、部門を壁を越えたサービスを設計することが重要です。
サービスの人材育成にも課題がありそうです。サービスはお客様と一緒に作るものだととらえると、顧客接点にいるサービススタッフの育成は、サービスの要だといえます。その肝心な人材の育成の実態は、OJT(On the Job Training)を都合よく解釈して「経験を積みなさい」「背中を見て学びなさい」と、現場任せな人材育成しかできていないことが少なくありません。もちろん経験を積むことは大切ですが、個人の経験や気付きに頼った人材育成では、組織的にサービスの価値を高めることはできません。組み立てたサービスを実現するためのサービス人材の育成にもテコ入れが必要となりそうです。
更には、サービスのマネジメントの仕方も、ひと工夫したいものです。それは「失点撲滅型マネジメント」からの脱却です。サービスの組み立てを得点型に切り替えたところで、サービスのマネジメントや評価の観点が「失点撲滅型」では、現場の行動が伴いません。顧客ごとの期待に応えていくことよりも、社内や上司に叱られないために余計なことをしないことを選択するようになってしまいます。是非、得点を積極的に評価する視点でサービスをマネジメントすることで、「製造業のサービス化」を現場とマネジメントが一体となって推進したいものです。
※参考書籍はこちら
日本の優れたサービス~選ばれ続ける6つのポイント~
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<筆者プロフィール>
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松井 拓己 (Takumi Matsui) 松井サービスコンサルティング 代表 サービス改革コンサルタント/サービスサイエンティスト |
サービス改革の専門家として、業種を問わず数々の企業の支援実績を有する。国や自治体、業界団体の支援や外部委員も兼務。サービスに関する講演や研修、記事連載、研究会のコーディネーターも務める。岐阜県出身。株式会社ブリヂストンで事業開発プロジェクトリーダー、ワクコンサルティング株式会社の副社長およびサービス改革チームリーダーに従事した後、松井サービスコンサルティングの代表を務める。 |