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【連載】CS向上を科学する

2017年7月24日

【CS向上を科学する:第46回】成果実感で「継続の壁」を乗り越える ~「CSの向上には時間がかかる」を言い訳にしない~




松井サービスコンサルティング
代表/
サービス改革コンサルタント
松井 拓己


  

前回のコラムでは、サービス向上を阻む6つの壁、「建前の壁」「情熱の壁」「顧客不在の壁」「闇雲の壁」「実行の壁」「継続の壁」について取り上げました。この中で、最近よくご相談いただくのが「継続の壁」です。

CS向上やサービス向上にはこれまで何度も取り組んできたけれど、立ち上がっては消えてしまって、活動を継続することができない。当初は盛り上がるものの、少し経つとモチベーションが薄れて活動が終息してしまう。これが「継続の壁」です。
 

継続の壁を乗り越えるために必要なのは成果実感

この壁を乗り越えるポイントが「成果実感」です。忙しさとの戦いでもあるサービスの現場では、成果が実感できないと、皆が納得して始めた活動でも優先順位が下がってしまうものです。逆に、少しでも成果が実感できると、モチベーションが一気に高まって取り組みが前進し始める、そんな場面を何度も目の当たりにしてきました。目に見えないサービスやCSを扱う取り組みだからこそ、成果実感が欠かせないのです。

一般に、サービスやCSを向上させる取り組みが、業績に結び付く指標、たとえば顧客満足度や受注・リピートオーダー、顧客紹介、客数や売上、そして利益を向上させるまでにはタイムラグがあることが多いものです。今日の努力が、いきなり華々しい成果として現れるとは限りません。だからといって、「いつになるか分からないが、とにかく成果が出るまで頑張れ!」と言われても、頑張り切ることはできません。そこで、すぐに成果が出ない時にはひと工夫する必要があります。
 

すぐに成果が出ないときのひと工夫

 


 


取り組みを進めてみると、目標とする成果が表れる手前で、必ず小さな変化や成果がたくさん生まれてきます。これを「スモールサクセス」と言います。

たとえば、顧客満足が大きく向上したことが分かる手前で、顧客からの相談件数が増えるかもしれません。さらにその手前では、顧客からの感謝の言葉が増えたり、話しかけられる回数が増えそうです。その前に、活動メンバーが顧客に会うのが楽しみになったり、こういった取り組みを前向きに進められるような意識の変化があるかもしれません。

定量的に評価できるものも定性的なものもありますが、これらは、目標とする成果の手前にある小さな成果や変化だといえます。このスモールサクセスを先行指標として位置づけ、取り組みを進めるとどのような順番でスモールサクセスが生まれてくるのかを先に決めておくことが重要です。先に決めた通りにスモールサクセスが生まれてきたときの成果実感は、後付けで成果を整理するものとは雲泥の差があります。このように先行指標とするスモールサクセスを先に決めておくことで、CS向上や業績向上といった華々しい成果が出るはるか手前で、短期間のうちに成果実感を高めることができるのです。さらには、成果実感を組織で共有するために、そのスモールサクセスを組織として積極的に評価して、組織内にフィードバックすることが有効です。

サービスやCSの向上は、「いつかいいことがあるはず」「成果が出るまでに時間がかかるけど頑張ろう」というように、曖昧な目標設定で進めてしまうことが多いものです。しかし、忙しい中で様々な数値目標を抱えている現場にしてみれば、「いつかいいことがあるから取り組みを続けろ」と言われてもピンときません。成果が出るまでにタイムラグがあることは確かですが、それを言い訳にせず、「具体的にどんな成果を生み出すための取り組みなのか」を明確にして取り組みたいものです。目標を見定めて取り組むことで、自ずと先に決めた通りに、もしくはそれ以上の成果が、短期間で出てくることも少なくありません。

自社のサービス向上やCS向上は、いったいどんな成果を生み出すための取り組みなんだろうか。いまいちど具体的に定義にしてみてはいかがでしょうか。
 

参考書籍はこちら
日本の優れたサービス~選ばれ続ける6つのポイント~

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<筆者プロフィール>
  


 松井 拓己 (Takumi Matsui)  
 松井サービスコンサルティング  
 代表
 サービス改革コンサルタント/サービスサイエンティスト

サービス改革の専門家として、業種を問わず数々の企業の支援実績を有する。国や自治体、業界団体の支援や外部委員も兼務。サービスに関する講演や研修、記事連載、研究会のコーディネーターも務める。岐阜県出身。株式会社ブリヂストンで事業開発プロジェクトリーダー、ワクコンサルティング株式会社の副社長およびサービス改革チームリーダーに従事した後、松井サービスコンサルティングの代表を務める。
著書:日本の優れたサービス~選ばれ続ける6つのポイント~(生産性出版)
         https://www.amazon.co.jp/dp/4820120654

▼ホームページURL/サービスサイエンスのご紹介
 http://www.service-kaikaku.jp/