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【連載】CS向上を科学する

2017年5月23日

【CS向上を科学する:第43回】事例に学ぶ優れたサービスのポイント:「スーパーホテル」

 

 




松井サービスコンサルティング
代表/
サービス改革コンサルタント
松井 拓己


 

 

「しくみ」をうまく活用してサービスの価値を高めている事例を「第1回 日本サービス大賞※」の受賞サービスの中から紹介したいと思います。忙しさとの戦いでもあるサービス事業において、サービスの生産性向上や人手不足の解消に注目が集まっています。限られたリソースで、どのようにしてサービスの効率化と価値向上を両立させるのか。そのヒントが得られるのではと思います。

※サービス産業生産性協議会(SPRING)が主催する優れたサービスを表彰する制度

 

第1回日本サービス大賞 優秀賞(SPRING賞)
日常の感動のLohasサービス(株式会社スーパーホテル)


出典:第1回 日本サービス大賞 

競争が激化するビジネスホテル業界で、平均稼働率が約90%、うちリピーターは約70%と好業績を継続しているスーパーホテル。現在、国内で100店舗以上を展開し、ベトナム、ミャンマーなど海外への進出も果たすなど、事業成長を遂げています。JCSIなどの顧客満足度調査では、ビジネスホテル部門でトップクラスの評価を維持しており、ホテル業界のみならず多方面から注目を集めています。ローコストビジネスモデルの展開や、経営手腕に注目が集まることが多く、「時代を先取りする創造的な企業」として2009年と2015年に2度の日本経営品質賞も受賞しています。日本サービス大賞では、ICTを徹底的に駆使してオペレーションを効率化し、その分、お客様対応に集中できる“自律型感動人間”を育成することで高い顧客満足を生んでいることが評価されています。

【受賞理由】
様々な顧客層に対して、環・眠・食・気・地域のコンセプトで高い価値を提供するビジネスホテル。 “Lohas(地球環境と人の健康を意識した行動様式)”という新しい価値観を前面に打ち出し、エコと健康の両面で宿泊客に「日常の感動」を与えている。ICTを徹底的に駆使したしくみと“自律型感動人間”の人材育成により、高い顧客満足を生んでいる。

 

効率化で失点をなくし、人の育成で得点を増やす

スーパーホテルでは自動機でチェックインを行います。一枚のレシートに記載された暗証番号がルームキーの代わりになるため、ルームキーの管理や顧客へのお渡しや返却の手間がかかりません。他にも、客室内の電話や有料飲料など、事後精算が必要な有料サービスがないことで、チェックアウト手続きを不要にしています。

サービス事業には「ピークタイム」や「繁忙期」が存在することがあります。お客様対応が一時的に集中することで、サービスが手薄になってしまったり、長時間の待ちが発生すると、顧客からの評価の低下をまねきます。ビジネスホテルの場合は、チェックインとチェックアウトに顧客対応が集中します。スーパーホテルでは、こういったピークタイムで、業務が煩雑になったり、ミスや遅れ等トラブルが生じることを防ぐためにしくみをうまく活用して、サービスの失点を防いでいるといえます。実際に、スーパーホテルへの顧客からの評価は、失点や不満の評価が他社に比べて少ないことが知られています。
 


出典:第1回 日本サービス大賞

しかし、「しくみ」を活かして失点をしないだけでは、評価を高めてリピーターを増やすことはできません。スーパーホテルでは、しくみを活かして業務を効率化して、サービスの失点を減らすことで、スタッフに余裕を生み出しています。これを活かして、「自律型感動人間」として育成されたサービススタッフが、お客様へのフェイストゥーフェイスの対応を磨くことで、「日常の感動」を実感するサービスを実現し、多くのリピーターを生み出しているのです。スーパーホテルは、スタッフがサービスの価値を高めることに注力できる「しくみ」づくりに成功しているといえます。

 

しくみと人の役割分担

自分たちのサービスの価値を見据えて、しくみと人の役割分担を考えることが大切です。これは当たり前のように聞こえますが、こういったことを明確にしないままに、闇雲にしくみ化を進めてしまうことが少なくありません。「しくみ化」をしたものの、事業成長につながる成果が出せずに苦労することがよくあります。さらには、「しくみ化」したことで、サービスの価値の低下や、自社らしさを捨ててしまうようなことすらあるのです。

たとえば、愛想の良い店員がうりの居酒屋が、「しくみ化」として、顧客が自分の席に備え付けのタブレットで注文するオペレーションに変えて、業務を効率化します。一方で、店員とのちょっとした会話を楽しみに来ていた常連さん達は、このお店を選ぶ理由がなくなってしまい、離れていってしまいました。しくみ化や効率化はもちろん大切ですが、自分たちのサービスの価値や“らしさ”をしっかりと理解したうえで進めたいものです。

しくみと人との役割分担は、サービスを分解してみると、整理しやすくなります。「手順型業務と気付き型業務」、「失点をなくす努力と得点を増やす努力」、「顧客接点の業務と非接点の業務」、「直接的に顧客に働きかけるしくみか、顧客対応するスタッフをサポートするしくみか」など。「サービスのしくみ」といっても、各社各様です。しくみで失点を減らすことも、得点を増やして差別化することもできます。しくみ化の目的と役割を明確にすることで、価値あるサービスのしくみ化を進めるヒントにして頂ければ幸いです。
 

※「日常の感動のLohasサービス」の受賞事例はこちら
 

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<筆者プロフィール>
  


 松井 拓己 (Takumi Matsui)  
 松井サービスコンサルティング  
 代表
 サービス改革コンサルタント/サービスサイエンティスト

サービス改革の専門家として、業種を問わず数々の企業の支援実績を有する。国や自治体、業界団体の支援や外部委員も兼務。サービスに関する講演や研修、記事連載、研究会のコーディネーターも務める。岐阜県出身。株式会社ブリヂストンで事業開発プロジェクトリーダー、ワクコンサルティング株式会社の副社長およびサービス改革チームリーダーに従事した後、松井サービスコンサルティングの代表を務める。
著書:日本の優れたサービス~選ばれ続ける6つのポイント~(生産性出版)
        https://www.amazon.co.jp/dp/4820120654

 ▼ホームページURL/サービスサイエンスのご紹介
 http://www.service-kaikaku.jp/