2016年9月12日
「ポイントを活用した地域共生ネットワークモデル」
ポイントやマイレージの正体とは
私は過去10年以上にわたって、「ポイントシステムを活用した“人を変える・地域を変える・日本を変える”地域活性化策の展開」というテーマのもと、全国の地域を動き回っております。皆様方、ポイントやマイレージを持っていらっしゃると思いますが「ポイントとかマイレージは何なのだろうか」という疑問を持たれた方はあまりいらっしゃらないのではないでしょうか。私は「ポイントやマイレージはお金だ」と思っております。
また、ポイントやマイレージは、データベース・マーケティングのためのデータづくりに最適なツールということです。お客様の利用動向を知り、ヘビーユーザー(常顧客)組織を構築することがマーケティングには重要でして、そのための基礎データ収集のツールとしてポイントやマイレージは十二分に活用できるのです。
新しいポイントの還流モデル
地域の方はいろいろな付加価値の高い商材を販売されていらっしゃるのですが、残念ながらそれらの販売が単体でされており、有機的に繋がっていません。これをどうしたらもっと売れる形態になるかと考えたのが、全国の地域のネットワーク化です。地域は単独では力が発揮出来なくても、連携して全体で纏まれば、商材を多様なお客様に販売できるはずです。
そして、ポイントサービスの活用です。ポイントサービスを大企業がなぜやるかと言いますと、会員への販促施策とデータベースの構築のためです。ポイントサービスは基本的には、大企業が実施する強者の販促スキームなのです。大企業でしたら、たくさんの会員を対象にして、会員が購入したい商材を用意して、大量に売ることが可能です。そこに、リピーター化を図るためにポイントサービスを導入すれば、ますます利用が拡大します。現状の大手企業系ポイントサービスが、広く普及している有様を見ればそのことがよくわかりますね。
一方、地域で行われているポイントサービスでは、拡大できている或は広がりが期待できるポイントサービスはほとんどないと言えるほどです。それでは、地域や中小企業において、ポイントサービスをうまく活用できる方法はないのかといいますと、大丈夫、あります。
「ポイントはお金だ」と言いましたが、実は有効期限の切れたポイント、通常「失効ポイント」と言いますが、それはなんと発行額のおおよそ4割程度にもなるのです。ポイントは発行されたら、ポイントそのものは会員のポイント口座に積み立てられ、ポイントと同額のお金は引当金として積み立てられているのです。ということは、ポイントは会員のものである見なせるわけですから、本来は引当金のお金も会員に付いて回るべきものなのです。ところが、企業サイドはポイントをおまけとして扱い、失効したら会員口座のポイントが無くなるのだから、その結果ポイント原資は企業に戻るという解釈をとっています。果たしてそうなのでしょうか。ポイントはお客様のものであるのでしたら、企業が引き当てるポイント原資もお客様のものではないでしょうか。どうしてかと言いますと、お客様が支払ったお金の一部が企業のポイント原資になっているからです。
私のような考え方を取れば、会員のポイントが失効してしまったら、同額のお金を会員、会員カードを発行している企業或はNPO団体等が一緒になって、その意思表示のもとで、地域社会や社会貢献活動等に寄付することが可能になります。このように、ポイントの失効に合わせて、同額のお金がどんどん地域社会等に寄附されれば、社会は変わり、自立した社会が出来上がります。お金そのものはなかなか寄付できなくても、ポイントなら簡単に寄付ができることで、会員は社会貢献したことになり、結果として何となく幸せになれます。寄附を伴うことによって幸せになれるというモデルを作っていけば、地域で生活する一個人という、いわゆる弱者が主体的に動ける新しいビジネスモデルができるのではないかと思い、10年以上前に会社を立ち上げました。当然のことながら、このような考え方を地域の皆様方にご理解をいただくことは難しいことでした。
地域活性化の難しさ
地域の活性化はなぜ難しいかというと、地域活性事業と企業経営を比較してみるとその理由がわかります。よく企業経営には人、物、金、情報が大事だといいますが、地域においても全く同じだと思います。人については、地域には非常に情熱的なリーダーがいらっしゃいますから、その思いは企業経営者とほとんど変わりません。また、物についても、地域にはいろいろ付加価値商材がありますので、企業とはほぼ同じ条件です。問題はお金と情報のところだと思います。地域の方たちは、活性化の原資を自分たちで稼ぎ出すというよりも、どちらかといいますと助成金などに頼ってしまいます。この体質は大きな問題なのです。さらに、情報について関心を持つ方は地域にはほとんどいないと言えます。つまり、地域の活性化が難しいのは、地域には活動を維持する継続的なお金がなく、また地域情報を活用してマーケティングに使うというような取り組みがほとんど無いからではないでしょうか。
逆に言いますと、「お金と情報」、この2つをうまく供給・対応できれば、地域は変えられる可能性があるということです。持続可能な循環的な活動原資を出すこと、顧客情報を地域に流し込むこと、この2点についてしっかり取り組んで行けば、新しいビジネスモデルが生まれて来るということです。
私のビジネスモデルの事業分野は、企業とNPOの間をつなぐ部分です。NPOだとなかなかお金を稼ぐことができない場合も多く、それですと事業が続きません。そこで、企業とNPOの真ん中に事業分野を持ってくれば、適当にお金を稼げることができ、稼いだお金を活用していくことができます。その上で、失効ポイントを利用してお金を作り、地域情報を集めて従来に無い地域データベースを構築すれば、新しいビジネスモデルが誕生するのです。その方法はテレビでも紹介されました。
サイモンズの地域活性化モデル
企業は、ポイントを発行するとポイント原資分を負債として積まなければなりません。国際会計基準も入ってきますから、そこを狙って我々が「元締め」になり、全部共通化してその原資分を預かってしまえば、企業には絶対に戻りません。そして残ったポイントは、我々が地域活性化や社会貢献に配ってしまう、ということをしています。時々、「ポイントが何故お金なのか分からない」という方がいらっしゃるのですが、ポイントはお金とリンクしているものですから、決してぞんざいに扱うことなく、残したらもったいないですから、私のところに集めれば、お金化して地域や社会貢献に配れるのです。
普通、地域というと商店街の方たちが一生懸命やっていますが、メディア・CATV・フリーペーパーや、スポーツ団体、NPO、大学、NGO等、地域の中には沢山の人々がいらっしゃいます。その全員をメンバーに入れてしまえば購買のパイが広がり、流通するポイントが増えていきます。ポイントは、大企業のたった11の業種で、年間総額で約1兆円発行され、その内の約4割の4,000億円が失効しています。この中に、地域で発行されたポイントはカウントされていません。地域でもたくさんのポインドカードが利用されていますが、これらのポイントが、サイモンズネットワークに参加しポイントカードの共通流通網をつくれば、想定では発行ポイントの半分余りの新しいお金が生まれてくるのです。地域みんなで力を合わせて、知恵を絞ってお金をつくろうというのが私のビジネスモデルです。
残念ながら地域では人口が減っています。ですから、地域だけ取り組んでいてはだめなのです。端的に言って、東京と大企業がお金を持っていますから、必ず東京につなげていく。全国ネットワークにして、東京に行ったらポイントを持ってくるとか、東京のお客さんを取り込んでふるさと納税させるとか、そういうことをやっていかないと、地域にお金は回りません。
人を変える・地域を変える
よくCSRといいますが、企業というのは、金が儲かったときはやるのですが、継続的なCSRはなかなかできません。そのためにどうするかというと、私たちはお客様と地域・世間、この3つをうまく組み合わせます。お客様は社会を考える企業を選び、社会に対して企業も一生懸命貢献することで、世間も企業を評価するようになり、これで全体が回ります。これは「三方良し」という昔の日本の考え方で、この考え方をどんどん地域に広げるようにしています。
例えば、「商店街の人たちは自分のことだけを考えるのではなく、周りのこと、自分たちの社会のことを考えてください。それを支えるお客様も、大企業に買いに行くのではなく、できるだけ地域社会に貢献するお店が販売する商品を買いに行きましょう。」という信頼関係を取り戻したいというのが私の原点です。みんなが興味を示すもの、いいものはみんな大企業が持っています。だからと言って、大企業の商材をいつも購入していたら、地域にはなかなかお金は入って来ないのです。どうやって地域にお金が入って来るようにするか、それは地域に住んでいる方々のマインドを変えるしかありません。人を変える・地域を変えるというのは、そこから出ていることです。
サイモンズの仕組み
ポイントサービスは、商店街・企業・団体等皆さん大体バラバラに個別にやっています。これを止め一括でまとめて、みんなが同じ土俵、つまりシステムで利用を行えば、利用の輪が大幅に拡大します。そして、それぞれの団体が主体的に失効ポイントというお金を集められる仕組みに変えました。
まずは、データをとるということです。データをとっていかないと大企業に勝てません。ほとんどの店舗に置いてありますCATというクレジットカードリーダーを利用させていただくことで、比較的簡単にデータが取れます。
それから、イベントやマルシェ(市場)等、室外での集まりに対しても対応出来るモバイル型の端末を作りました。カードを擦った瞬間にデータをとって、過去から現在までのデータ分析を瞬時にオンラインで見えるようにしてマーケティングに活用できるようになっています。
いろいろな導入事例がありますが、自分のお店のお客様のデータをつくっていけば、お客様を対象としたマーケティングが展開できるということを地域の方たちはあまりご存じありません。私は地域に行って、お店だけではなく地域全体のデータベース、いわゆるエリアビッグデータと呼んでいますが、リージョナルなビッグデータをつくっていかないと大企業には勝てないとお話し、データを瞬時に、オンラインで各店舗単位に集計できるだけでなく、商店街全体でも集計できるようにすることが大事と説明しています。さらに、集計したデータを自由に分析ができるようなツールも提供しています。
店単位だけでなく、地域全体でのデータ分析ができるので、地域が今までできなかったデータベース・マーケティングが展開できるようになります。そして、そういう仕組みを全国に展開することで、全国的な地域データベースが構築できるようになるのです。
ポイントを社会システムに組み込む
さて、我々のこれまでの取り組みですが、総務省と組んで、「週末田舎に行きませんか」という二地域居住の実証実験をして、茨城の里山生活を都市と繋げました。東京のお客さんが茨城へ行って、ポイントを貯め利用し失効したら茨城に寄附するということを今でもやっています。
JTBと組んだ電気自動車の充電器カード、マナーキッズという非常に有名なNPOのカード、大企業の社員証もポイントカードになってしまいます。会社に出入りするときに使うカードがポイントカードですから、非常に広い展開ができます。音楽家の坂本龍一さんが主宰した、「MORE TREES」という日本の森林を守る会、ザスパ草津というJ2のサッカーチームの会員カードも作成しています。
豊橋に結構分厚いフリーペーパー12万部(月あたり)を発行しているフリーペーパー企業があります。フリーペーパーのビジネスモデルも、だんだん時代遅れになってきたのかなと思うのは、お店はお金がなければフリーペーパーに広告掲載をしませんので、どんどんフリーペーパーが薄くなります。そこで、フリーペーパー企業が各店舗のカードを作って差し上げて、お客様を会員化させれば、今度はフリーペーパー企業からメールやDMで情報をお客様に送ることができます。各店舗の名前を入れたカードを作り、その店舗でもデータ分析を行うことができ、全店舗でのデータベースも構築できるのです。これにより、地域の全体のマーケティングができるのです。
こうしてデータができますと、イベント情報などもチラシではなくデータで送れるようになります。即時性のある、そしてより細かいマーケティングができますから、地域店舗の販売戦略が変わって来るのです。
日本で初めての地域商店街と大手百貨店の共生モデル
伊勢丹の相模原店と提携しました。相模原店は年商250億ぐらいあるのですが、この伊勢丹が商店街のポイントカードを作ってくれました。伊勢丹でショッピングすると商店街のポイントカードにポイントを付けてくれますが、そのポイントは伊勢丹では使えません。伊勢丹はポイントカードの原資を出し、さらに自分のところで使えないポイントを地域のために発行してくれました。これは何が凄いかと言うと、今までは、大企業が地域に出て来ると、地域のお金をみんな奪ってしまい、地域が疲弊してしまうのですが、初めて大企業がポイントを受けずに、近隣地域に還元するということを決めたのです。伊勢丹は地域貢献ができ、地域は伊勢丹のおかげでハッピーになり、共生が成り立ちます。伊勢丹の250億の利用の中からポイントがどんどん発行され、失効ポイントも商店街にきますから、地域にとってこんなうれしいことはありません。
それから、秋田のハピネッツというプロバスケットボールチームも伊勢丹と同じで、自分たちのサポーターズカードをファンに配り、またそれとは別に地域カードを作って地域に提供しています。このバージョンは、スポーツ振興と地域振興が同時に進行しているのです。私が驚いたのはハピネッツチームの専務の名刺の裏面が秋田の地域活性化のことしか書いていないことです。スポーツクラブのトップが、裏面全部に秋田の活性化のための情報を載せて、地域をみんなで活性化させていこう、マーケティングしていこうと取り組んでいるのです。こういう理解者が増えてきたということは本当に嬉しいことです。
浅草神社三社様カードも傑作です。浅草神社自らが作ったカードで、私が代表して奉納し、神様の御神霊をいただいています。このカードは何が素晴らしいかというと、氏子の皆様が神社の周りの加盟店開拓を行い、ポイントをためて、ポイントが失効すれば、全部浅草神社に寄附するというものなのです。今、日本中の多くの神社仏閣は財源不足、人材不足で維持するのが大変で、神主さんも何軒も掛け持ちでやっています。そうでは無くて周りの地域が支えるような繋がりの中で、神社仏閣の地域文化を継承していければと思っています。
行政でもどんどん発行が始まっています。沖縄県竹富島町、埼玉県秩父市、北海道鷹栖町、当麻町、伊達市、青森県七戸町、長野県の公社等では、地域それぞれのデータベースを作るためのカードを発行しています。観光客のデータベースを持っている県は日本にどこにもありません。一例をあげると、竹富町ではカードを作り、観光客のデータベースを作っていこうと、一生懸命取り組んでいます。
もう一つ、地域活性学会という地域活性に関して研究する有名な学会があり、私はその下部組織の地域活性化機構の運営を元法政大学学長の清成先生のもとで行っております。清成先生は地域活性の大御所ですから、先生の指導を仰いで、この仕組みを全国の大学と連携して広めようと思っているところです。
大手ネット系ショッピングサイトの取り込み
地域はあまり魅力的な商材が無い場合が多いので、大手約2,000のネットショッピングと提携しました。例えば、弊社のサイトを経由して三越オンラインストアで買うと、三越ポイントとは別に、弊社のポイントがつけられます。ダブルでポイントが貯まるということです。さらに弊社のネットポイントは、ためるだけで、三越のネットショップでは使えません。ためたポイントは地域で使うようにします。ためたポイントを大企業で使えるようにしてしまったら、これは終わりですから、それはしないのです。大企業からポイントを持ってきて、地域でのみ使えるようにしているのは弊社しかありません。弊社のネットショッピングモールは、全て大企業のネットショッピングからポイントを取得して、地域に流し込む仕組みなのです。
失効ポイントを地域の活動原資として活用
失効ポイントの寄附事例ですが、稚内の水夢館というスイミングプールは年間で約70万円も失効しています。寄附先は稚内市です。
一地方の一スイミンプールでもこんなに執行ポイントが出てくるのです。こういうお金が、地域に山ほどあります。ですから、私はこの仕組みを全国の地域にどんどん広げて、それぞれの地域の方々が頑張って、自分たちの地域活性化のための原資を作っていただければと思っています。
フラハワイというNPOは、最大で500万円もハワイのフラダンス協会の文化財団へ寄附をしています。
行政にも失効ポイントを寄附しています。これは我々だけです。普通の店でポイントを発行して、ポイント失効したから、自分の住んでいる行政に寄附する人は多分いないと思います。弊社のビジネスモデルの理念を何度も説明し、やっと店舗の経営者の方々に理解していただけるようになったのです。「自分たちの町をよくするためならば」と、喜んで寄附するようになりました。
皆さん、やり始めると止めずにずっと続けています。毎年、企業の社長が市長に対して目録を渡す。今年はその写真を撮りましたが、来年はポイントを失効したトップ10人の会員の皆様方もお呼びして、市民と企業と市長という3者の組み合わせの写真を撮ろうと思っているところです。これこそ本当に我々の目指すところで、関係者みんなで支え合うという仕組みになればいいなと思い、こういう仕組みをどんどん広げようとしています。
サイモンズ・ポイント・サービスとは
整理しますと、弊社のサービスは、とにかく導入コストが安く、データがとれて、いろいろなことに利用でき、様々な将来的な展開が見込めるということ。そして、失効したポイントは社会貢献、地域貢献に回すということです。
クレジットカードもつくっていまして、このクレジットカードはなかなかの傑作なのですが、また次回に説明します。
我々の仕組みは、とにかくいろいろなものを繋げられるようにして、社会の構成員みんなで使えるようにしていくということです。さらに、今後新しい仕掛けとして、年金ポイントをやろうと思っています。今までのようにポイントをためて、使う世界から、ポイントを年金化して、将来の自分のためとか子供たちのために使えるようにする、ということを考えています。
我々のカードは、ショッピングポイントだけではなく、地域マネーもエコポイントもイベントポイントも、福祉、あるいは健康ポイントも全部取り組んでいます。さらに医療費の支払いにも使えて、市民の図書カードとも連携して、最終的には市役所の住民票取得時の支払いや印紙税の支払いまでできるということです。
(「SPRINGシンポジウム2015 in神戸」にて)