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リーダーの声

2015年9月4日

株式会社ジャパネットたかた前社長 髙田 明 氏

 「ジャパネットたかたの目指すサービスイノベーション」
(サービス産業生産性協議会 幹事※2014年4月~2015年4月)

 

※内容は2014年11月当時
サービスイノベーション、企業は進化しながらそれを目指していきます。企業としてどうどうあるべきか、自分の思いの丈をお話します。
私が父親の会社から独立し、29年が過ぎました。30年やるつもりでして、2015年1月16日を持って社長を退任する事になりました。企業というのは理念が大事で、それをどんどん世の中に発信する事が必要ではないかと思います。これは行政でも医療関係でも、政治の世界でも学校の教育問題でも、必ず発信者の反対には対極の方がいるのです。私達には消費者がいらっしゃる。ビジネスというのは、お客様の事を考えて理念を伝えるところからやらないと、企業は長く支持をされないのではないかと思います。その事を長い経験の中で感じるようになりました。

モノの先にある良さ
私どもの商品にカラオケがあります。テレビさえあれば繋いで歌えて、1100曲入りでマイク付き29800円です。東北に嫁いだ女性からお手紙が届きました。お義母さんとうまくコミュニケーションが取れず悩んでおり、このカラオケを購入したら、実はお義母さんが大のカラオケ好きだったそうです。このカラオケに救われました、ありがとうございますという内容でした。これは価格の問題を大きく超えているわけです。もう1つ、Nikonのカメラを買ったお母様からもお手紙をいただきました。小学校の高学年の息子さんが小児ガンに侵され、何かに熱中出来ればと一眼レフのカメラを買ってあげたそうです。息子さんは写真をどんどん撮っていくうちに、素晴らしい作品が出来て新聞に掲載されました。お母様はその記事を送ってくれて、「このカメラで命と戦っています」と書いてありました。私はNikonの社長にその話をしました。担当の方も横で手紙を見て泣いておられました。そしてNikonのバックを預かり、その親子に送りました。その6~7年後、またお手紙をいただきました。息子さんは小児ガンを克服し、父親の仕事を手伝い始め毎朝一緒に出かけています、と。涙が出ました。このようにモノというのは人の人生も変えるし、楽にする、楽しくする。モノの先にある良さを伝え、皆さんが購入しやすいよう我々が金利を負担しているのもサービスなのです。

この10年くらいはグローバル現象で地球が1つになりました。ITが進化し、時代が全く変わってきました。そうなると、安いモノだけを求めていけば中国に負けてしまいます。モノの価値、価格というのは非常に大事ですが、全てを制しないのです。そこにサービスや付加価値を付けて、どういう想いでモノを販売しているかを伝える事が大切だと思います。例えばレストランでは利益を出さないといけませんが、味や金額だけというのは本当は違います。100円高くてもサービスの質を上げて、お子さんの誕生日などに特別な演出をすれば、おもてなしというのは100円を超えています。そこで得たお子さんの誕生日の思い出は、その家族にとって何十年も、ずっと歴史として残っていくのです。

人生もビジネスも「今でしょ」の繰り返し
変えてはいけない、変わらないモノが絶対にある。それが企業の理念ではないかと考えます。最近心の底から理念とか、変えてはならないものの大切さというものをしみじみと感じるのです。全ては受け入れる事。受け入れないとビジネスは絶対に乗り越えられないのです。理念を持っている企業は、消費者の方が支持してくれます。毎日の積み重ねの中で信頼関係を作っていくという事がすごく大事であると思うのです。一昨年の流行語大賞の「今でしょ」という言葉がありますが、人生は「今でしょ」の繰り返しなのです。たとえ100才になっても「今でしょ」をやり続ける事が、人間に1番求められる事です。自助論というのがあり、自らを助ける論と書きます。これは、経済学者、政治学者、スポーツ選手、といった有名な方達のお話ですが、全てに共通して書かれているのは、特別な事はやっていないという事です。目の前の事をやり続ける、そうすれば必ず夢が実現するというのです。「思う通りの自分になる」と、やり続けている自分がそこにいるかどうかで、その人の人生、その企業が変わると思うのです。ビジネスは必ず自分が思う所の夢に近づいてきます。過去に出来なかった自分がいる、それを悩んでも自分を変えられない、明日を変えていくのです。そのためには「今でしょ」という事です。

信じてやり続けること
私はテレビカメラの前に立った時に、カメラを見て話しません。遠くにいる10万人20万人のお客様を想像します。皆さんへ想いを届けようと一生懸命やり続けると、必ずいい結果が出ます。そうやってやり続ければ、30年かかっても必ずその芽は出てきます。私も40才までホテルの宴会場で写真撮って、カメラ屋で現像していました。訪問販売もしました。出来る事は何でもやりました。それを1日1日積み重ねて、年商も少しずつ上がりました。そういう中で、お店を宣伝したいと思ってラジオを使い、ラジオショッピングに出会いました。1回しゃべったら面白くて、全国展開してみようという事になったのです。ラジオの次はテレビでやりたいと思いました。東京に出て行って、翌年の3月末から放送開始するという条件で242という専門チャンネルをいただき、認可を受け、スタジオを造ったのです。造る時はみんな反対しましたが、私は出来ると信じていました。信じて行動に移せば可能になります。出来ない事ではなく、出来る事を考えました。製作会社からプロの方に出向していただき、当時は1人100万かかり、10人で1000万超えるわけですが、それは投資です。照明もカメラも専門の方が入り、ウチの社員10人と合わせて20人で放送を開始しました。若い子の頭は物凄く吸収が早く、3~4ヶ月でカメラマンやMCなどのスタッフは全て社員で、今の100人体制になりました。こうして地上波、BS、CS全部を自社のスタジオから全国に配信しています。私が出来ないと思ったら出来なかったと思います。その挑戦の連続なのです。可能性を信じてやり続け、出来ないような事が出来るというのが人間の能力だと思っています。人間の能力には全く差がないのです。ビジネスにも差はありません。やり続ければいいだけ、そう思いながら今に至ります。

ジャパネットたかたの目指すサービスイノベーション
私は自分より上の企業を見て仕事をしません。ジャパネットを見て仕事しているんです。お客様を見て仕事しているんです。自社の中で課題を持ち、それをクリアしていく事が必要ではないかと思います。企業が他社を見すぎた時には、そこに引っ張られ、サービスが低下します。ここがサービスイノベーションで1番大切な所です。自分達の中で出来る事、言い換えれば身の丈経営と言いますが、身の丈を知る。その中で最善の事をしていけば、1歩1歩進みながら最後には100段の階段を上がる事が出来ます。そこに辿り着いたら、101歩目の階段を上る、人間とはそういうものではないでしょうか。
今ジャパネットが目指したいものとして、お値段以上のモノを出していくというのがすごく大事だと考えます。お客様にとって値段は1番大事な要素ですが、どこの企業から買うのか、その企業はどういう想いでその商品を提供しているのか、作った人はどういう視点でサービスしようとしてるのか、そこの部分を語った瞬間、売上が相当変わるのです。見ている側に企業の想いが伝われば、信頼関係と信用が生まれるんですね。日本のモノづくりはそういう部分が多く、負けるわけがないのに競争に負けているのは、「伝える事」が足りていないからです。日本のモノづくりは世界一だと思います。ただ、日本人特有の優しさなのかもしれませんが、伝えていく部分が弱い。今、「伝える力」というのは本当に大事だと思います。

ジャパネットは努力して出来るだけいいモノを安く提供したいと思います。ゆりかごから墓場までという福祉の世界がありますように、販売からアフターケアまでしっかりやりたいというのがジャパネットたかたが目指すサービスイノベーションです。
 

 

(SPRINGシンポジウム2014in長崎にて)