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リーダーの声

2015年1月27日

株式会社スーパーホテル 経営品質部 取締役部長 山本 健策 氏

5つ星のおもてなしを実現する

~スーパーホテルの仕組み経営~

     


マンションからスーパーホテルへ
当社は全国100店舗を超えたところで、量より質を高め、地域一番の店舗になるように、毎年2 店舗から3 店舗の出店をしています。当社は、もともとは関西でシングルマンションを経営していましたが、そろそろ全国展開していきたいといったときに、シングルマンションでは難しくなっていて、現場と本部が密接に連絡を取り合う運営形態のホテルに目を付けて展開してきました。ただ、マンションは100室規模でも夫婦二人の管理人が住み込み運営できるのに対し、ホテルの場合は7 、8 人が必要になってしまいます。その疑問を持ったことで、スーパーホテルが生まれました。
 スーパーホテルの特徴は、自動チェックイン機です。一番人手の要るチェックイン・チェックアウトの作業を効率化しました。マイケル・ポーターは、「生産性を上げると顧客満足度は下がる。逆に生産性を下げることによって顧客満足度を上げられる」と主張しています。生産性と顧客満足度は二律背反の関係ということですが、当社はこの相反する二つを同時に上げるように取り組んでいます。
 生産性アップの一つの例として、現場に経理担当者を置かず、自動精算機のデータを最終的に東京のデータセンタに蓄積し、本部が細かな経理処理をしています。現場では、その空いた時間を活用して顧客満足度の向上に努め、生産性を上げながら、顧客満足度も上げる仕掛けにしています。
 


 

創業精神の継承と経営理念の浸透
 当社が最も大事にしているのが、一つは創業の精神の継承、もう一つが経営理念と仕組みの浸透です。この二つを全社員、全現場のスタッフに伝搬することによって、おもてなし経営を行う素地ができあがります。
 例えば、ここに相互信頼とチャレンジ精神、先見の明と独創の精神、こだわりの精神、おもてなしの精神、人間尊重と家族愛の精神などがあります。こういった大項目にのっとって、創業者の山本梁介が自らの言葉で思いを綴つづっています。毎週月曜日の全社員が集まる朝礼で1 時間ほどかけて、この1 項目1 項目について説明がなされます。こうして本部の社員には創業の精神が徐々に芽生え、伝搬していくことになります。現場には、月曜日の朝礼の録音音源を配信して、聞いてもらう。そうすることによって全現場の社員にも創業の精神が伝搬していくことになります。
 経営理念の浸透には二つのツールがあり、それが経営指針書とフェイス(Faith)です。フェイスというのは誓約という意味です。小さなカードになっていて、現場の社員がいつも肌身離さず持っています。ポケットに入れて、迷ったときにいつでも出して読めるようなサイズです。
 本部でも経営指針書を用いて朝礼を行っています。毎日読み合わせを行いますが、単純に読み合わせを行うのではなく、担当者が日々変わります。担当になった人は、そのページの言葉に対して、どういう思いを持って日々業務に取り組んでいるのかということを全員の前で発表します。発表を受けて、コメントの回答者が、その意見に対してアドバイスします。また、社長がアドバイスすることもあり、朝礼の場で会話を通して、理念を浸透させます。

 

人材目標は「自律型感動人間」
 理念経営と経営の仕組みを掛け合わせることによって、強い基盤の会社ができます。創業者の言葉に、「ビジネスで成功する人は、運のいい人だ」というのがあります。感性と人間力を磨いた人が運のいい人だと考えています。そして、感性と人間力を磨くことをひとまとめにした言葉が、「自律型感動人間」です。自分で考え、自分で行動し、そして感謝、感動を人に与えることができる人。こういった人材目標を掲げています。
 次に、どのように人材を育成するのかということです。こちらも二つのツールを使っています。チャレンジシートとランクアップノートというツールです。チャレンジシートではA目標、B目標、C目標という三つの目標を設けます。A目標は半期ごとの自分が目指す課題、例えば稼働率90%までもっていくとか、顧客満足度をナンバーワンに持っていくとか、そういった数値的な目標です。B目標は人材育成目標、C目標は自律型感動人間になるための目標です。
 半期ごとの目標のチャレンジシートに対し、ランクアップノートは月次、週次、日次の目標にまで落とし込んでいくツールです。これは日記帳の形で、毎月の月次目標を掲げて、週間で月次目標を達成するためには何をやらなければいけないか、そして週次目標を達成するためにはこの日は何をやらなければいけないかというふうに、日次の細かな作業までブレイクダウンしていく。このツールを持って上司と部下で話し合いを行い、目標の達成につなげる形になっています。
 経営理念を浸透させ、自律型感動人間を育成すれば、社員満足度が向上します。社員満足度が向上すれば、顧客満足度が上がり、顧客満足度が上がればリピーター率、稼働率が上がります。売り上げや稼働率は二の次、三の次で、まず大きな大方針、経営理念と自律型感動人間の育成が最重要項目です。その先に売り上げや稼働率がつながっていくと考えて運営しています。



(SPRINGシンポジウム2014in札幌にて)