2014年6月24日
「JCSI調査から見えるサービス産業の課題と展望」
JCSI(日本版顧客満足度指数)は、開発から8年、経済産業省の手を離れてから5年目を迎えている。日本のサービス産業33業種約400企業もしくはブランドを対象に、SPRINGのプラットフォーム事業として民間に移行している。現在、約60社に顧客満足度指数とそれに関連した因果データ(顧客期待、知覚品質、値ごろ感、口コミ、ロイヤルティなど5指標)を提供している。JCSIへの問い合わせも、次第に増えている。2012年に株式再上場をしたJAL(日本航空)が中長期の経営目標として、「2016年度 までにJCSI顧客満足度指数No.1を達成する」と宣言しているなどなどからも、その有用性が次第に認識されつつあることがわかる。
当初われわれ開発チームが企図していたのは、日本のサービス産業の生産性を向上させる指標にすることであった。他方で、サービス業各社の品質向上に役立つように、データ提供システムの改善に努めてきている。短い期間ではあるが、日本版CSIの調査データを見てきた経験から、あるいは、CSスコアが上位の企業経営者を招いて、何度か「CSフォーラム」を開催してきた体験から、日本のサービス産業が抱える問題点も明らかになりつつある。とくに、実際にCSデータを使用してもらう際に、どのような利用の仕方が期待されているのかを見ていると、サービス業の「イノベーション」に必要な課題が浮かび上がってくる。筆者は、3つの課題が明らかになってきていると感じている。
(1)規模の大きな組織のサービス品質向上策
JCSIの指数が高位のサービス業は、その多くが小さな組織によって提供されている。その理由は、ふたつである。ターゲット顧客が絞り込まれている(オルビス化粧品、劇団四季など)ので、サービスのスペックを特定顧客にカスタマイズしやすい。二番目には、顧客からのリクエストに素早く反応ができることである。翻って、大きな組織は、マス顧客に対して緩やかな組織対応しかできていない。この点を克服するために、以下の二番目の課題を克服することに挑戦する必要があるように思う。
(2)顧客サービス対応がCS向上のカギ
SQI(サービス品質指数)の調査結果を眺めていると、高いCSが提供できているサービス組織は、顧客対応が優れている企業であることが多い。そうしたサービス優良企業は、いままでにないタイプのサービスを提供している「イノベーター」である。しかも、創業から20年以内の比較的若いベンチャー企業が多数派である。なぜ、そのような結果になるのかについては、さらに深い分析が必要なように思う。ただし、大企業が、「サービスベンチャー企業」から学べる点がまったくないわけではない。そのヒントは、顧客対応に優れた小さな組織を社内にどのように生み出せるかにかかっている。
(3)サービスイノベーションにおける科学的管理(IE)とIT技術の役割
優れたサービスイノベーターは、IT技術を駆使することに優れている。サービスの採算性向上には、生産性を高める計数管理が必須である。また、データに基づいて、顧客と従業員を科学的に管理する手法(IE)を採用している。さらにいえば、その根底には、従業員が働きやすい職場設計(物理環境と組織風土を同時にデザイン)することに努めている。
以上、サービス産業におけるイノベーションの課題を簡単に記述してみた。大きな組織と小さな組織では、良いサービスを提供する前提が異なっているように思う。わが国のサービス業の生産性向上には、大規模サービス組織の生産性と品質向上が必要である。詳しくは、7月末刊行予定の拙著『顧客満足CSは女子力で決まる!』(生産性出版)を参照していただきたい。
以上
(生産性新聞2012年7月15日掲載「サービスイノベーション」より、2014年6月改訂・転載)
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【7月下旬刊行予定!】
『顧客満足CSは女子力で決まる!』
小川孔輔 著/生産性出版
上記でご紹介しました小川孔輔教授の著書が、近日発刊されます。
本書は、米国人サービス研究者(J.フィスク)らが提唱する「劇場アプローチ」形式で、ユニクロ・ヤオコー・クロスカンパニー・オルビス・劇団四季など、厳しい時代を生き抜くホワイト企業7社の仕組みを大公開します。
7月下旬に、全国の書店ならびに下記のホームページにてご購入が可能となります。
ぜひ、お手に取りください!
http://bookstore.jpc-net.jp/index.html