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リーダーの声

2014年3月11日

三陸鉄道株式会社 代表取締役社長 望月 正彦 氏

 「三陸鉄道 震災から復興へ」~鉄道の復活で地域を元気に~

 

 皆さま、こんにちは。三陸鉄道の望月でございます。今から30年前、昭和59年に三陸鉄道が開通しました。当時の社長は岩手県知事です。この時、三陸エリアに鉄道がようやくつながることになりました。第三セクター方式の鉄道会社であり、久慈から宮古、釜石から盛間をつなげました。宮古から釜石間はJR山田線が走っています。開業後10年間は黒字で、多くの地域の皆さまが喜んでくれましたし、観光路線として活躍していました。しかし、その後は赤字続きとなります。なぜかというと、大きな要因はマイカーの普及です。それから通学に電車を使っていた高校生がどんどん減っていったこと、また円高で国内観光が海外旅行に変わってしまったことなどが挙げられます。
 
しかし、今なお地域の児童・生徒やお年寄り、車を持っていない方にとっては、三陸鉄道は大きな生活の足であります。私どもも努力して観光客を増やそうと取り組んでおり、地域の産業振興に貢献していると思ってやってきております。例えば、南リアス線小石浜駅を「恋し浜」駅に変えました。ただ名前を変えただけでは色がないということで、駅の待合室にホタテ貝の絵馬を飾れるようにしました。これを4年前に女性週刊誌が恋愛パワースポットとして紹介してくれましたところ、実際にホタテ絵馬を書いて祈願して結婚したカップルもいっぱいいます。待合室はホタテで埋め尽くされているのですが、地域の皆さんがそれでいいとおっしゃってくだり、ホタテだらけになっております。
 
NHKテレビ小説『あまちゃん』をご覧になった方は覚えていらっしゃると思いますが、北リアス線では、コタツ列車が走っています。震災前から運行しておりまして、夏はお座敷列車、冬はコタツ列車となります。列車の中には、なもみ(秋田県で言う「なまはげ」のことで、岩手県の呼び方。)が登場します。これはボランティアの方がやってくれて、皆さんに喜んでいただいております。
 
震災時の初期対応
以上のような取り組みを始めて、なんとか乗客の減少に歯止めがかかるかなと思った矢先に震災が起きました。3年前の震災当時、私どもはどう対応したかということについてお話します。
14時46分に震災が発生し、15時04分に宮古にある本社内に災害対策本部を設置しました。しかしまだ逃げておりませんでした。15:40分頃に宮古駅前ロータリーまで津波が来ていることを確認し、すぐに全員避難させました。3月11日は雪が舞ってとても寒かったです。暗くなって17時50分頃本社に戻ってきたのですが、停電していました。ヒーターもつかない、パソコンもつかない、電話も不通という状態です。そこでとっさに、列車内に対策本部をつくりました。うちの車両はディーゼルカーなので、エンジンをかけると明かりが点く、暖房も手に入るということで、停電が解消する3月16日まで列車の中におりました。対策本部といいましても、あるのはホワイトボート一つと、ノート一つだけでした。それから私が持っていた災害用の携帯電話です。震災の半年前に、万が一のことを考えてこの携帯を準備しておいたのですが、これがつながったのです。これで、本社と運行事務所、県、運輸局と連絡をとっていました。ノートにはすべてを記録していました。震災の時は情報が錯綜します。ですから、ノートには分単位で「○○からこういう指示がきた」など書きまして、ホワイトボードには情報を共有すべき事項を書き出しました。
 
部分復旧への動き
3月13日の朝、宮古・普代駅間を視察に行き、夜に北リアス線の部分復旧優先を決定・指示しました。田老駅の瓦礫を撤去すればなんとかなる状態だったので、宮古市長のところに行って、「一週間以内に復旧するから、駅に行く道とその周りの瓦礫を撤去してほしい」と要請を出しました。市長はすぐ応じてくれて、15日の夜には運転再開し一週間無料運行するということを知事が了承してくれました。そして16日以降、徐々に北リアス線の36.2km(全体の3分の1相当)で運転再開をすることができました。
 
全線復旧に向けて
自力でできることはここまでで、あとは国の支援がなければ無理だという状態だったので、様々な要望活動をしました。枝野官房長官、大畠国交大臣(当時)が現地に見える時には必ず直接要望を出しましたし、「サービス向上・アピール」というものもやりました。例えば、線路が途切れているので、車両を久慈から宮古まで陸送しました。杉良太郎さん、瀬川瑛子さん、山本ジョージさん、伍代夏子さん、スピードスケートの清水宏保さんに一日駅長をやっていただき、駅前でミニコンサートもやっていただきました。その時の観客は3000人くらい集まって、大盛況でした。また、「フロントライン研修」という被災地の視察ツアーを行いました。社員は旅行員の資格を持っているので、10人以上の団体を1泊2日の基本コースで、一人2万1000円で案内することにしました。これには、横浜の市議会の皆さん等が参加してくださいました。大変リアリティがあるということで好評をいただき、昨年は170団体、3700名くらいの方にご参加いただき、復興に向けたかなりの収入になりました。それから、社員がカットして作成した復興祈願レールを3万円と5万円でインターネットで発売したところ、一日で売り切れ、800万円の収入がありました。当時の一カ月の運賃収入は800万円でしたので、一か月分の運賃収入を一日でいただくことができました。さらにもっと欲しいという要望がありましたので、次は南リアス線のレールを400個売りましたら、これもすぐ完売となりました。まだまだあるのでできるのですが・・・(笑)とりあえず売り切ったところです。
 
そうこうしているうちに、2011年の国の三次補正で支援が決まり、鉄道・運輸機構の協力で3年間計画の全線復旧のめどが立ちました。一次復旧後には、JTBさんなどが旅行客をたくさん誘致してくださったため、1両を4両にして北リアス線を走行しました。先頭は豪華なレトロ車両、その他はラッピング車両でネスレ日本さんなどにご協力いただきました。昨年は南リアス線を新車にしたのですが、クウェートが資金を提供してくれましたので、それを元に新しく8両つくりました。今年はさらに新車を5両入れることになっています。新車には全部クウェートの国章をつけさせていただいています。運行再開のセレモニーには、藤原紀香さん(日赤の特使として)とクウェート大使にお越しいただきました。また、志村けんさんが非常勤駅長として来てくださいました。
 
今後の課題と対応策
物理的には復旧工事が進んでいますが、色々課題があります。まず、「震災復興の遅れ」があります。駅周辺にはまだ家がないところが多く、まちづくりが進んでいないため、復旧後の経営は以前よりも厳しくなります。JR山田線もどうなるかまだわかりません。鉄道というのはネットワークが重要になりますので、やはり繋がらないとうちの経営も非常に厳しくなります。それから、「少子高齢化・過疎化の進行」もあります。また、家が高台移転となりますと車がないと生活には厳しくなりますので、復興道路がどんどんできています。そうすると「モータリゼーションの進行」が、鉄道乗客を減少させる原因ともなります。
 
これに対応するために、次のようなことをやっております。一つ目は「交流人口の拡大」です。積極的に観光客を誘致しています。三陸には美味しいものがたくさんありますから、しっかりアピールしていきたいと思います。お座敷列車では、アテンダントに『あまちゃん』の海女と同じ格好をさせまして、1個1300円のウニ丼を売っております。3月いっぱいの予定ですが、また新年度もお座敷車両でできるだけ『あまちゃん』をひっぱりたいと思います(笑)。教育・研修旅行向けに震災学習列車も走っています。現地で実際に目で見て肌で感じてもらうことは、大事なことだと思います。今年度は5~6千人の方が来てくださいまして、来年度はぜひ1万人以上にお越しいただきたいと思っております。それから私どもの事務所では、『駅-1グルメ』というパンフレットをつくり、八戸から気仙沼までの三陸沿岸各地のおすすめのお食事を特集しています。二つ目は「駅を中心としたまちづくり推進の要請」ということで、市町村に各要請を出しています。三つ目は「地域産品等の販売促進」で、三鉄ブランドを使ってうまく売っていきたいと考えています。自作の純米酒のセットやワイン、カレー、うにめしなど、色々なものを売り、周囲を活気づけたいと思います。
 
おわりに
やはり鉄道は安全・安心、定時性、速達性、大量輸送などの優位性を持っていますので、地域の貴重な財産だと思います。日本で鉄道が廃止されて栄えた街はありません。ということを考えると、鉄道をもっと活かしていく努力を、私たちはもちろんですが、地域で力を合わせていかなければならないと思っております。これまでに、いろんなご支援もいただきました。三鉄はこれからも地域の皆さまの生活の足になること、そして全国から多くのお客様においでいただだき、地域の活性化・産業振興に貢献することに役立っていきたいと思います。今後とも、皆さまの一層のご理解、ご協力をお願いいたします。
 
最後に、皆さん、こちらをご覧ください。You Tube「AKB48恋するフォーチュンクッキー三陸鉄道ver.」です。現在、38万以上のPV数で、釜石市の市長さんなど、地域の方1000人くらいに出演していただきました。
 
ご清聴、ありがとうございました。
 
(以上)
 
望月正彦氏・談 
SPRINGシンポジウム in 東北(2014221日開催) 講義ダイジェスト
 
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その他にも、魅力がいっぱい!
三陸鉄道の詳細は、下記公式HPをご覧ください!