2018年2月13日
「卸・仕入れサイト『スーパーデリバリー』」
*記載の数字は2016年7月講演時のものです。
今現在、4つの事業と3つのサービスを行っております。主力事業は「スーパーデリバリー」というサービスで、アパレルと雑貨をネット上で流通させる、いわゆるネット上の問屋さんだと思っていただければ、多分イメージに近いかと思います。
会社の経営理念ですが、「企業活動を効率化し、便利にする。」です。これには結構こだわっておりまして、徹底してBtoB、企業が使うサービスに特化して展開しています。これ以外はやらないと決めています。
流通
私自身は起業してから、既に約22年たっています。最初は健康食品の貿易をやっていましたが、ある時やりとりの連絡ミスから在庫だらけになってしまいました。このころ、物はどのように流通しているのだろうかと思ったのが、現在のビジネスにつながっています。
日本地図を流通という観点から見たことがありますでしょうか。縦に随分長く、北海道に営業に行った次に、沖縄とか九州に営業に行くのはほとんど無理です。日本列島は海で分断されていますので、今こそ飛行機がありますが、少し前までは船で渡る必要がありました。特にアパレルとか雑貨の物づくりは、東京・大阪・名古屋あたりでつくるか、もしくは輸入をしていますが、需要は全国に満遍なくあります。これらを流通するためには、最初は船で物を運んだりしておりました。廻船問屋という言葉を聞いたことがあるかと思います。この問屋という文化が非常に重要なキーワードでして、日本の流通の歴史には欠かせない言葉です。
日本の問屋文化
ちなみに問屋というのは、アメリカにはありません。中国にもありません。最近は出来ていますが、似たようなものはあっても、日本とは違った形で存在しています。日本の問屋は、物を運ぶだけではなく、決済や情報伝達など、海外とは違った、独自の優れた技術をもって進化してきました。ただ、一次問屋とか二次問屋があって、物理的に物を移動させながら販売をしており、今の時代に合わなくなってきた部分も出てきて、この10年ぐらいで急激な勢いで問屋が倒産しています。
問屋もいろいろなジャンルがありますが、私が見た中で一番課題が多いのが、アパレルの流通です。商品が非常に複雑で、性別がある、季節がある、流行もある、サイズもある、色も違う、5色展開や、3色展開がある。1個でもずれたら、全部在庫だらけです。そして、売り場で流行が終わったといっても、工場には仕掛かり在庫があり、急には止められないのです。この流通を、もっと効率化できないだろうか、もっと近代的ないい方法はないだろうかと思っていました。
売れる仕組み
97年ころにインターネットが出てきました。もしかしたら、時間の問題、場所の問題、スピード、情報量の問題を解決出来るのではないかと感じました。
普通に考えれば、メーカーから消費者に直接売ってしまえば早いのですが、例えばシャツ、ジャケット、靴などのアパレル関係の物を通販で買う方は、世の中にどれくらいいるでしょうか。弊社は今、関連会社を入れると140名いまして、みんな通販大好き人間なのですが、それでもアパレルに関しては、通販利用比率は5%もないかと思います。やはり、こういったものはお店で触ったり、試着したり、合わせたりしながら買いたいのです。
今後、更なるインターネット技術の発展とともに、通販利用比率が10%を超えるだろうと見ていますが、いろいろとコーディネートを提案したり、季節のはざまでセールを開催したりというのがアパレルの販売スタイルなのだと思います。
そうした背景とともに、インターネットの利便性をあわせて考えると、小売りの現場ではなく、メーカーから小売のところまでで使うのがいいのではないかと考えました。そうすると、インターネットを使った中間流通業みたいなものが必要になると頭に浮かびました。売れるものを売れる分だけ、売れるときに売れる場所に移動させる仕組みが作れるのではないだろうか、と。
スーパーデリバリー
そうして2002年につくったのが、「スーパーデリバリー」というサービスです。ただ、理想は良いのですが現実は厳しく、最初はかなり苦労をしました。小売店を募集しますが、メーカーは10社ぐらいで、商品は1,165個しかありません。ひたすらお願いして載せ続けましたが、全然売れませんでした。
辛うじて小売店が登録してきても「面白いと思って登録したのはいいけれど、商品を見られないし、さわれない。小売店の仕入れバイヤーとして、見られない、さわれないものは買ってはだめだと、先代から厳しくしつけを受けているんだ」という反応です。
いろいろと考えましたが、ロット単位ではなく1点単位で売って欲しいとメーカーにお願いしました。その仕組みを小売店に伝えたところ、動き始めたのです。
それは、北海道の人が100円ぐらいのものを、送料600円を払って購入されるのです。これには私も驚きました。何故かというと、サンプルとして購入しているのです。そうすることで、良いか悪いかを手にとって見られるのです。これで一斉に売れ始めました。
他にも良い点が認知されてきました。結構多い意見は、パソコンで仕入れをすればいいので、定休日をなくせるというものです。1日営業日を増やせるのです。そんな理由もあって、この仕組みが上手く回っていったのです。
今現在、約50万アイテムで、流通額が95.8億円となりました。メーカーが今現在1,138社参加しています。会員小売店が全国で5万2,372店舗、登録しています。
「スーパーデリバリー」は、この5年ぐらいの間に、海外からの問い合わせがどんどん増えてきましたが、それまで海外との取引は一切しておりませんでした。
それは、eコマースで問屋みたいな商売が成り立つということを、参加している1,000社の方にちゃんと理解して知ってもらう事のほうが優先でしたし、世界中からの曖昧な問い合わせを全部そのままメーカーに投げることは出来ないと考えたからです。
ただ、事業も成長が進み、全体の流通額も100億を超えそうなので、そろそろ満を持して行ってもよいのではと、部下とも相談しました。
eコマースとは
eコマースとは、辞書には電子商取引とありますが、私には別の定義があります。以前は誰かが手でやっていたことを、システムというパワーをかりて、もっと効率よく簡単に安く早くやるのがeコマースととらえています。
海外旅行をするときも、以前は旅行代理店に行って随分待たされて、変更やキャンセルも大変でしたが、今はスマホ1個あれば変更も簡単にできます。これがeコマースです。
「スーパーデリバリー」は、中小メーカーの営業がやろうとしている行為をeコマース化したものであるのです。
海外輸出サービス「SD export」
海外に輸出しているサービスを我々は「SD export」と名前をつけました。中小企業が世界に売ろうと思ったときにやらなくてはいけないことを全てシステム化しました。
2015年8月にスタートしていますが、BtoBの越境ECとしては、おそらく全国で初めての仕組みだと思います。
BtoCの個人向けサービスは通関書類がついていないでしょうし、定価で売られているものと思います。私たちが扱っている15万点以上は卸値で販売しています。海外の小売店が仕入れて、再販するための仕組みなのです。
輸出だけでいいのであれば、審査はありますが、無料で掲載します。あとは、売れた分の10%だけ頂く仕組みです。限りなく全てに近い日本のメーカーをここに掲載して、世界中に売りたいと思っています。このテクノロジーを持つ唯一の会社ではないかと自負しています。今現在134カ国に対応しており、海外の小売店は事前に住所などを登録されていれば、数クリックで商品が購入できます。これが「SD export」です。
中小企業の営業活動を強化、お手伝いするようなサービスを今後も引き続き展開していきたいと思っています。
(「第1回日本サービス大賞 フォーラム」より)
※株式会社ラクーンの「卸・仕入れサイト『スーパーデリバリー』」は、第1回日本サ―ビス大賞地方創生大臣賞を受賞されました。