2018年1月5日
「家づくりを物語に『工房信州の家』」
創業は昭和35年になります。木造の注文住宅である「工房信州の家」は、第1回日本サービス大賞を受賞いたしました。そのほか、賃貸マンション事業もやっております。
本社は長野県の伊那にありまして、県内6カ所の総合展示場に当社のモデルハウスがあります。大手のハウスメーカーさんとどうやって差別化したらいいのだろうかと考えながら、一手間も二手間もかけ、効率とは無縁の家づくりを、お客様と一緒にやっております。
サービス1 自分の山の木で家づくり
具体的に3つのサービスをご説明いたします。まず1つ目は、自分の山の木で家づくりを行うという事です。これまで約10年間で108件ほどの実績がございます。自分の山を持っていても、その山の手入れはなかなかできていません。例えば、山の境界がわからない、搬出路がないというものがあったので、必ず現地確認をするようにしました。それから、木を切るところでは、不良を予期した選木をしたり、ネームプレート等を使って個別管理をしたり、あるいは全数検査をすることで、非常に手間はかかりますけれども、お客さんと一緒に山に入って、自分の山を見ながら、あるいは木を見ながら進めていくようにしました。
その結果、山で70年育てた木が、今度は我が家で何十年も支えてくれると思うと感慨深い、であるとか、手つかずの山に苗木を植えました、というようなお客様の感想がございます。通常、若夫婦が家を建てるときには、ご両親やおじいちゃん・おばあちゃんは家づくりには関わらないことが一般的になっていますが、それが家族総出で思い出を育む家づくりにつながっております。
サービス2 あなたが選ぶ山の木で家づくり
「あなたが選ぶ山の木で家づくり」の取組みも行っています。長野県は森林県なので、山を持っている方もいらっしゃいますが、多くは自分の山を持っておりません。ですので、その方のために、私たちの管理している山にご案内して、木を切るところから始めました。4年ほど前からスタートして、既に200組以上、600人の皆様が山を訪れています。この選木ツアーは毎月1回定期開催しております。以前は、一組ずつご案内をしていましたが、スケジュール調整に手間がかかっていました。それを定期開催することによって効率よくできるようになり、お客様も参加するスタッフも喜びを共有できる、そういう時間になっております。
当日のスケジュールは、始まりの会を行った後、午前中は山に入って木を1本選んで切ることを体験します。午後はストックヤードに行きまして、乾燥された太鼓ばりを1本選びます。
そして、手づくりのお昼御飯や即日の写真プレゼントなどを実施しています。この選木ツアーを軸にお客様の物語を構築していくのですが、プログラム内容や選木ツアーが行われるまでの期待感を高めるなど、スタッフがお手伝いをさせていただいています。
実は、参加する前は面倒だなと渋々来る方も何人かいらっしゃいます。でも、森に入って一緒に作業をすることで、すごく良かったという声に変わります。木をいただくということで愛着が生まれ、自分で家を建てるという実感が湧いてくること、また山の現状を知り、もっと自然を大事にしなければいけないという思いが生まれたりします。また山守さんも住宅を建てるお客様と山で会うものですから、その感激する様子を目の当たりにして、自分たちの仕事の意義というものを知る、そういった絆がお客様と職人さんとの間で生まれる効果も出ています。
サービス3 ひとてま工房
3つ目のサービスが「ひとてま工房」で、家づくりの基礎から工事が始まり、最後のところまでいろんな一手間をお客さんが自らやろうということです。この4年間で、約258件のお客様が「ひとてま工房」をされています。私たちの家はクロスではなく、珪藻土を使っていますので、そのうちの一部をデザインしたり、手形をつけたりと思い出をつくっていきます。初めての試みで職人さんの理解が進まず、最初はうまくいきませんでしたが、思いを酌み取ってくれる職人さんで出来るようになり、メニュー化することによって「ひとてま工房」がよりわかりやすくなってきました。みずから手をかけることで家を建てる実感が湧く、家族の作品がいつも見え、思い出話に話が弾む、手づくりの楽しさを見出し、その後も家に手をかける、プロの技に感激し、職人技が見直されています。
影響・成果1 山と家 山と人がつながる
信州の木を使った家づくりでは、山と家、山と人がつながることが大きな変化だと思っています。お客様の住まいへの意識が大きく変わったのは、風景だった里山が身近なものになったということだったり、あるいは身近な山の木を使うことで、山や自然への感謝が出たことだったりします。また、山守さんってかっこいいという声が、お客様、特にお子様から出てくるので、まさしく信州の山とお客様がつながっている瞬間だと思っております。
影響・成果2 地場産業 活性化
二つめは地場産業の活性化です。日本では地元の材を使った家づくりがなかなかできていないのが現状です。私たちのような地域の住宅会社が、少しでも地元の木を使った家づくりをしていくのです。輸入材に頼った規格住宅からの脱却が、地域の景観の向上と職人技の復権に貢献していきます。やはり信州ですので、信州の風景に合った家づくりをしていきたいと思っています。
影響・成果3 家づくりが物語に住まいが宝物に
日本の住宅は、完成した直後に一番価値が高い状態となっています。完成と同時にだんだんと価値が下がっていく、もしくは耐久消費財のような扱いをされるのが多くの住宅の事情です。
しかし私たちのお手伝いする住宅は、お客様がみずから手を動かして、総出でいろんなことをしていますので、住まいへの愛着が高く、手入れも自らしたくなるものと考えています。自分たちで家を育てて価値を高め、いろいろな思い出が詰まった家、あるいはいろいろな物語が詰まった家になっていくと考えています。年月を重ねるほど住まいが宝物になり、家づくりが物語になっていく。そんな思いをお客様と一緒につくっていきたいと考えています。
影響・成果4 社員の働きがい、モチベーション向上
このような家づくりにおいて、「働きがいのある会社2016」中規模部門でベストカンパニーに選ばれました。数ある項目の中でも「私はこの会社は地域や社会に貢献していると思う」が82%の一番高い評点となりました。家づくりを通じて、こんなにもお客様が喜んでくれている、こんなにも家族が楽しんでもらえている、またお引き渡しをした後、1年、2年、5年、10年、訪問させていただくと、家がどんどん家族のものになり、お客様が楽しそうに社員に話をしてくれるのです。そういったことが社員の働きがいやモチベーションになって、この仕事はお客様のためになっている、地域のためになっていると実感していることが、この調査の結果に表れたのだと思っています。
影響・成果5 現場での共創から生まれる取組み
こんなことをやってみたらお客様が大喜びするかも、私もお客様を喜ばせたい、新しい取り組みにチャレンジしたいという思いが形になり、多くのサービスが生まれました。現場の最前線の若い社員やスタッフが、お客様や職人と日々対峙する中で、数々のストーリーが生まれてきます。日々の日常現場の中で、お客様と社員と職人さんたちが、共に考えつくり上げていくことで、いろいろなサービスが生まれているのです。
参加型の家づくりサービス:成果
日々お客様や職人さんと対峙するスタッフが生の声を吸い上げて、現場レベルで改善を繰り返してきました。ボトムアップの工夫や積み重ねから、各種サービスが洗練されてきています。家づくりに参加することで、お客様としては愛着がわいてきます。完成した後も、みずから家育てをして、この家づくりについて興味・関心を持ってくださいます。職人さんは、お客様が珪藻土を塗ったり、木を切ったりして喜んでもらえることで、仕事への誇り・やりがい・楽しさが生まれてきていますし、社員・スタッフもお客様が喜んでくれること、職人さんたちが誇りに思ってくれることが喜びにつながります。共創による家づくりで相互によい影響が生まれているのです。
これからも信州でもっといい家をつくっていきたい。信州のこの風土・自然に合った家づくりを、職人さんたち、山守さんたち、そしてこの信州の皆さんに広めていきたいと思っております。
(「第1回日本サービス大賞 フォーラム」より)
※株式会社フォレストコーポレーションの「家づくりを物語に『工房信州の家』」は、第1回日本サ―ビス大賞地方創生大臣賞を受賞されました。