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リーダーの声

2017年7月21日

九州産交バス株式会社 営業推進プロジェクト プロジェクトマネージャー 丸山 傑 氏

公共交通で旅を創る「日帰りバス旅」

 

 

九州産交バスは、熊本県内の路線バスと九州内の都市間(福岡・長崎・大分・鹿児島)を結ぶ路線を他県のバス会社と共同運行しております。その他、団体のバスツアー、定期観光バス、貸切バス、そして旅行事業として「日帰りバス旅」を実施しています。
親会社は九州産業交通ホールディングスで、HISさんの連結子会社になっています。他の子会社では、レストランや、阿蘇山のロープウエー、熊本~島原間のフェリー、貸切バス、整備、旅行業などを行っています。

 

「日帰りバス旅」は雑談から生まれた
2010年春当時、熊本市内から阿蘇・天草へ行く定期観光バスを動かして欲しいという話が各所から寄せられていました。2011年に九州新幹線が全線開業される予定のタイミングです。ですが地方の路線バス会社は赤字で余裕がなく、補助金をもらって運営している状況でした。そんな中、当時フェリー会社にいた私は、喫煙所での社長との雑談で「路線バスでやったら、できるんじゃないですか」、「じゃ、お前やってみて」の会話から、九州産交バスへ出向して今に至るという形で始まったのです。
  

 

 

路線バスならではの特徴
九州新幹線全線開業の半年前に、まず7コースをつくりました。金額を均一料金にしてわかりやすい商品にして、私たちに熊本県外に告知をする力がないので、旅行会社に売っていただくことを考えました。
旅行商品ではありますが、路線バスを利用しているので、出発地はバスセンターで、駅前や空港を通っており、2次アクセスとして便利な場所を乗り場として使えることが大きな特徴です。また、一人でも参加できること、毎日催行していること、高速バスのコールセンターが開いている前日の19時まで受付できることもポイントです。熊本市内のホテルにチェックインしてから申し込める商品にしようと、ぎりぎりまで予約が受けられるようにいたしました。

10月に始めて月間参加人数は30名でした。お客様の「仕事の都合上、こんな商品を待っていた」という声に押されて商品を増やし続け、新幹線開業の時には全部で40コースほどになっていました。
新幹線が開業する前日に東日本大震災がありましたが、伸び率は前年比で150%ほどの伸びが3、4年くらい続きました。コース増加や季節限定コースの設定、Web予約システムの作成、大手旅行会社との契約と進めてきました。熊本発だけではなく大分発や別府発というコース、もっと気軽に行ける3,000円コース商品もいくつか追加しました。気がついたら、月間3,000名にご利用いただける商品に育っていました。

 

バス会社ならではの告知
2016年の熊本地震の前の状況では、1名参加が40%ぐらいで、九州以外からのお客様が60%、その内の40%が関東のお客様です。熊本以外では告知していないにもかかわらず、九州以外のお客様に多くご参加いただいている商品になりました。

申し込みのタイミングとして、発売開始の1ヵ月前に申し込まれる方と、直前の2日前・前日に申し込まれる方を合わせると60%ほどになります。一番ボリュームが大きいのは、熊本市内のホテル経由での申し込みです。熊本市内のメジャーな観光地である熊本城と水前寺公園は、半日ぐらいで観光が終わってしまい、ホテルのフロントには、あとはどこに行けるのかというお問い合わせが多いとの事です。そんなお客様にホテルの方がお勧めすることで、申し込みが増えております。最近はリピーターの方も増えてきました。
告知は空港や駅に案内所を設けているので、目立つところにパンフレットを置き、熊本空港から市内への唯一の手段である空港リムジンバスのシートポケットにも入れています。バスセンターに着くとポップやポスター、パンフレットラックがいっぱい並んでおり、自然と目に入ることも認知向上に役立っています。
 

 

異例の新設路線の設置
日帰りバス旅の人数が結構多くなってきたところで、今までバスが走っていないところに、新しく路線バスを走らせたいと考え、熊本から雲仙温泉を通って長崎への路線にまずツアーバスを走らせ、今は定期観光バスとして運行しています。
今までは補助金をもらって、徐々に便数を減らしながら運行するのが一般的なバス会社のスタイルでしたけれど、新しい路線を補助金なしに作れたというのは、感慨深い出来事です。
観光地より先まで行く「つながるバス旅」という名称で、発着地が異なる商品だったり、少し毛色の違う「大人の修学旅行」という名称で、8人ぐらいの小グループ向けに、ホテルの宴会場に雑魚寝で寝てもらう商品を、5,900円で提供しています。
毎日1人出発可能としているため、年間の申し込み者が5人ほどのプランも多くあります。それでも、施設さんが良ければ大丈夫な点が、路線バスを使った商品の一番のメリットです。
軍艦島に行くコースでは、世界遺産で注目される3~4年も前から実施していたので、今でもそのつながりで販売することができています。
 

 

旅行会社とのタイアップ
旅行会社では、オプショナルツアーとして3,000円、5,900円の2つの価格設定で販売して頂いています。飛行機・ホテルの宿泊パックを組み合わせても料金がシンプルで、プラス5,900円でこの3つのコースから選べます、という形での販売も結構あります。
元のコースとは別に、飛行機の到着時間に合わせた商品を作り、旅行会社のみで販売しているものもあります。

ボリューム的に大きいのは、着地型ツアーの販売サイトです。世界中の旅行客向けにオプショナルツアーとして販売しています。海外販売の方針は、翻訳は海外の旅行会社にやって頂き、独占的に販売してもらう形で、販売パートナーとして取り扱っていただいています。日本に来る外国人旅行者は、以前は乗り放題の切符を使われる方が多かったのですが、連泊したり近場で使うにはあまり適していません。日帰りバス旅では、そのニーズに応えられるのだと思います。
MICEなどのコンベンションや学会前後のツアーでは、学会の幹事をする旅行会社が、私たちのパンフレットを配布し、受付をするパターンも増えています。また教育旅行の班別行動で使われた例もあります。
 

 

今後の取り組み
バスロケーションシステムを、2020年までにつくり直したいと取り組んでいます。現在は、バスを降りる時は自分で確認して降りてもらう仕組みですが、バスが遅れたりすると、特に海外のお客様はいつ降りたらいいかよくわからないと思います。新しいバスロケーションシステムでは、IOTの仕組みを使って、降りるタイミングなどをスマートフォンに案内したいと考えています。

自治体の人が積極的に地域のイベントをやり、バスの着く時間に合わせてイベントが始まるといった考慮をいただくようになり、補助金が減ったり、地域路線の維持のためにも役立っていると思っています。
 
「日帰りバス旅」は、旅行商品として販売しており、例えば帰りのバスが満席になって乗れないことがごくまれにあります。全体で言うと0.1%くらいですが、旅程保証という制度で乗れなかった人をタクシーで目的地に連れていっています。それだけを見ると大赤字ですが、そういうフォローの対応が、いろいろな旅行会社に商品として組み込んで頂いていることに繋がっています。海外の販売サイトで売って頂いているのも、何かあった時には旅行業者として責任を持つことも、信頼に繋がっていると思います。

(「日本サービス大賞フォーラム」より)

 

※九州産交バス株式会社の「公共交通で旅を創る『日帰りバス旅』」は、第1回日本サ―ビス大賞地方創生大臣賞を受賞されました。