2017年6月9日
「学校図書館運営サポートサービス」
学校図書館という教育の中枢部分で、日本で初めて民間として運営サポートやコンサルティングを行いました。学校図書館をどう活性化できるか。教育行政や各学校現場が抱えている課題を、どう解決できるか。公共各種図書館、大学図書館等からもお声がけいただいております。図書管理システムの開発・販売に関して言えば、学校や公共図書館では、人と本が主役です。本と子供たちや一般利用者を、IT(システム開発)を使い、どうつないでいくかということに取組んでいます。
リブネットとは
創業は2002年1月15日で、学校図書館関連の運営サポートサービスを三重県内の公立中学校2校からスタートしました。学校図書館は、教育法下の学校図書館法に位置づけられ、学校図書館を置くことになっています。そこに関わるのは、主役の児童生徒、教育委員会、学校長・教頭先生(東京では副校長先生)、司書教諭や一般の先生、保護者、ボランティア、それから学校図書館の実務を行う学校司書。この学校司書の業務を私たちが委託業者として、教育委員会や県教委と契約をして内容・頻度などを決めてやっています。
2016年7月現在で正社員30名、契約社員70名、そして現場(公共・学校図書館)のパートさんの合計630人の組織となっています。
県立高校での図書館業務
私たちの会社説明会で、ある男子学生から真剣に質問を受けました。「どうしてそんなに一生懸命、子供たちに本を読ませようとするのですか。どうして子供たちにそんなに教育が必要なのですか」と。ある程度、家庭と学校の自己責任ではないかと言いたかったようなのです。この学生のように教育を受けてきているお子さんもいますが、私が出会ってきたのは、そうでない子供たちでした。
私は、三重県職員の教育委員会配属で、2年目から26年間県立高校で学校図書館業務に携わりました。4校ほどの高校に携わりましたが、小中学校で本を読んできていない子たちが予想以上にたくさん居ることを知り、そういった子たちにも本を読むことで力をつけさせ、読書カウンセリングや読書指導をしてまいりました。
3校目の学校では、偏差値が非常に低く授業中は雄たけびが聞こえ、授業が成立していないような高校でした。図書館は、授業が始まるまでいじめられっ子たちの隠れ場になっており、休憩時間には暴力事件が日常的に行われているため、先生方は奥の休憩室に潜んでいる。ここの子供たちは、なぜこうなったのだろうと思いながら、取組みを始めました。
良い本との出合いが人を変える
学校図書館は、いつでも誰でも来ることができて、きちんとしたサービスが受けられるパブリックスペースとして機能していることを目指しました。朝の登校後はすぐに図書館をあけ、環境整備をし、本との出会いを演出するディスプレーなどを提供して、いつも稼動している図書館であるようにしました。机の上に寝そべって威嚇行動をする番長にも「図書館ではマナーをしっかり守りなさい」ときっちり指導しました。信念を持っての取り組みは次第に浸透していき、皆がやってくるようになりました。学校の中でも図書館ではきちんとマナーが守られて、人間として人間らしく扱われる場と認識されてきたのです。そうするうちに、子供たちは本を読むようになり、本と出会い感動する経験をして、がらっと人間が変わる事例をたくさん見てきました。
ある日、番長がやってきて「先生、俺にも何か本を紹介してくれ」と言ってきたので、日本で初めて手話を発明した人の物語『わが指のオーケストラ』という漫画を、「授業中には読むなよ」と言って渡しました。
2時間ほど授業が進みましたら走り込んできて、食ってかかってこう言うのです。
「なんで『泣くから授業中には読むなよ』と言わなかったんだ」と。
子供たちがどんどんとよろいを剥がし、先生方や事務の人たちも全力でサポートしてくれて、お世話になった3年間で非常に落ち着いた学校になりました。
人生の選択肢を広げるために
しかしながら、高校では遅いという事実もあります。
七夕の短冊に「まともになりたい」と書いた不良少年が、卒業前に退学になってしまうこともありました。例えば、たばこを吸っていることが悪いことではなく、彼らからすると日常の行動であって、高校まで来るとなかなか変えられない。小中学校のうちに何とかしなければ、この子たちの人生の選択肢が狭まってしまうのです。
本来これは国がやるべきことですが、学校図書館の改革というのは簡単ではなく、2015年にやっと、「学校図書館に学校司書を置く努力を市町村はしなさい」と法律に書かれました。1953年に学校図書館法が制定されてから50年間ほぼ放置されていたのです。
どの学校図書館にいても、同じようなサービスが受けられる。本との出会いと感動で心の扉をたたかせて、情報リテラシーの武器になる調べる力を身につけて、生きるための選択肢を広げてもらわなければ意味がない。それを無視して仕事はできないと考えたのが私の起業のきっかけとなり、リブネットの立ち上げにつながりました。
幅広い学校図書館の業務
学校図書館には、蔵書管理の部分(本選び・貸出・返却)と子供たちへのサービスを提供する部分があります。その子に合ったものは何かをヒアリングをして、子供たちの人格形成を考え、必要な本を選んで購入します。
また、学習指導要領では授業支援・学習センター機能にも位置づけられているため、先生方の教育実現に貢献するためにはどうしたらいいのかを考えながら進める必要があります。どの授業でどういった資料が必要になるのかを全部調べて、使ってもらう準備をしなければいけません。これまで実際に行ってきたことを、学校図書館を機能させるインフラの仕組みとして、システムを作り上げました。その中のサポートセンター機能としては、「どんな本を買う」、「どんなプリントを作り先生方に提供する」、「どんなリストを作って子ども達に渡す」など、様々なデータベースを作っています。
学校図書館を楽しく使いながら、丸暗記ではなく知識をたくさん増やすことが出来る、学力向上の「ライブラリークエスト」というプログラムを作りました。ある町でこれを使って頂いたところ、国語Aが20.5ポイントアップする効果がありました。
フィンランドメソッドの手法を取り入れた「読書登山」というブックリストをつくりました。どれだけ読んだかによって認定証がもらえるこの方法は、本の貸出冊数が4.7倍に増えて、学校図書館に用意した本だけでは足りなくなる事例も出てきています。
リブネットでは、CS顧客満足度調査を必ず行っています。教育委員会と相談の上、全ての学校の管理職に満足度をお尋ねしたところ、97%以上の満足度をいただきました。授業支援として授業に合わせたワークシートを提案して、学校図書館を活用してもらうなどの取り組みに評価をいただき、高い満足度を得ています。
先生方や学校の変化としては、学校図書館の授業利用が3.5倍に上がった効果がありました。なかなか準備も大変で先生方は学校図書館が使いにくいのですが、前述のようなことを繰り返した結果、授業利用が上がってきたのです。
一度受託した自治体においては、単年度または数年の契約から、5年10年と継続受託させていただいています。クレームは宝の山を方針にしていますが、いろいろなトラブルが起き、様々なケーススタディーを積み上げてきました。丁寧・迅速・的確に対応していく、その努力を積み重ねてきた結果です。
学校司書を1人にさせない
スタッフたちは採用されますと、徹底したマニュアル・研修プログラム・独自ノウハウをどう使っていくべきか、どう使いこなすのかなど、徹底してたたき込まれます。その上で学校図書館に行って、しっかりと対面のコーディネーターのサポートを受けながら仕事をします。学校図書館には1人で行きますけれども、1人にはさせない。バックヤードには必ず会社がしっかりとついているという形が大切です。学校司書を1人にしない仕組みをつくりました。
学校司書の人材育成プログラムは、評価制の仕組みです。勤務10年を超えるパートスタッフが何人もいまして、単に学校図書館のスタッフとして働くだけではなくて、マイスター制度に近いものを作っています。
例えば、研修講師として出張してもらう、ブックリストの選書プロジェクトに入って力を発揮する、大分県教委への3年間アドバイザー契約のアドバイザーとして活躍する、などモチベーションを上げる仕組みがあります。
扶養範囲内で働くパートさんへの保障や社員として働きたい人たちにも、社員としての場を提供できる努力を始めています。待遇だけではなくて、スタッフが自分の力を発揮できる場所をつくり上げる仕組みが、ほぼでき上がっています。
子供たちの読む力、考える力をしっかりと伸ばしてやりたい
世の中の学校図書館の活性化のために、リブネットだけでなく、もう少し広い範囲で提供できるよう、風車の森というサイトを立ち上げる準備をしています。
公教育の現場には、公共サービスという概念が浸透していなく、学校司書の配置による数値目標、考え方、評価制度が確立されていませんでした。みんなが同じ高いレベルを目指して活用できる仕組みを作りたい、というのが私たちの考え方です。
各学校によって、均質=画一ではなく特長も課題も全部違います。学校司書の育成をしっかりすることによって、子供たちの読む力、考える力をしっかりと伸ばしてやりたい。それが生きる力につながっていくのではないかと思っています。これが私たちのスタートであり、変わらない会社の目標と考えております。
(「日本サービス大賞フォーラム」より)
※株式会社リブネットの「学校図書館運営サポートサービス」は、第1回日本サ―ビス大賞地方創生大臣賞を受賞されました。