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リーダーの声

2016年10月14日

株式会社カジタク 代表取締役社長 澁谷 祐一 氏

 「日常生活のインフラを目指す家事サービス」

 


 
 

家事サービス市場について
カジタクという社名は家事を宅配するという言葉を短くしており、2008年に設立したまだ7年目の会社です。最近メディアで家事サービスの市場がこれから大きくなるかもしれないという記事を随分目にする機会が増えてきました。2020年ぐらいに6,000億円ぐらいの市場になるのではないか。強気の推測では1兆円ぐらいの市場になるのではないか、という市場成長を予想されている方々が大変増えています。 世帯が分離し始めたことが一番大きな理由ではないかなと考えています。私も小さなころは3世代が同居しており、世代間で家事を支え合う方々が多かったと思うのですが、今どんどん別々に暮らす家庭が増えており、中だけでは消化しきれずに外部のサービス会社を使うというお客様が増えてきているように感じております。
アンケートをとりますと、使ったことがある方はまだたった3%です。一番サービスの利用を妨げているのは50代の男性で、家事は女性の仕事であるというご意見が大変強いです。これから使ってみようという方が30%ぐらいで、サービスは知らないという方と同じぐらいの率いらっしゃいまして、我々は10倍ぐらいの市場に十分なり得るのではないかなと期待をもって考えております。
課題をお伺いしますと、価格がよく分からないという声が大変多く、サービス会社の料金表を見ますと1万円からと書いてある会社がほとんど小さな注釈で「汚れ具合によって値段が変わります」と書いてあります。頼むほうは汚れているから頼むので、「これは大変な価格をとられてしまうのではないか」という分かりにくさが心理的な抵抗になっていることが多いようです。あとは、初めて使うのでどう頼んでいいかよく分からないということも1つの理由になって、普及していない市場ではないかと考えております。

家事サービスを利用しやすくするために
サービス業は目に見えない、在庫を持てない、こういったキーワードがございます。我々は「お客様の好きな場所を3カ所掃除します」というチケットを箱にして目に見えるようにしました。家事玄人(カジクラウド)という商品名で、現在小売業様の店頭で販売をしております。
家事玄人は大きく分けて2つの種類で、お客様の家にお邪魔して掃除をするサービスと、お客様の家から衣類や布団などを9カ月間お預かりし使うときになったらお返しをするというサービスを全国どこでも交通費、発送料全て込みの同一価格で実施し、20種類ほど小売業様の店頭で販売をしております。
過去の同様なサービスの流れは、お申し込みをされた後、まず見積もりに来る日程調整があり、その後実際にサービスをする日程の調整をし、サービスに来られてお金を払う、という流れが一般的でした。我々は勇気を出して一律価格にすることによって、お客様に前もってお金をいただき、追加料金はいただきません。サービスの内容はご購入前に告知しておりますので、日程調整をしてサービスを実施するという流れに変えました。もう一つよかったのは、商品にしましたので小売業さんはこれを仕入れないと販売できない。黎明期には先にお金がもらえるので、キャッシュフローの大幅な改善につながりました。 無形のサービスをパッケージ化することでモノにしよう。モノになれば中間流通が生まれたり、在庫が生まれたり、またはプレゼント需要が生まれたり、形になっていなかった時期には無かった市場が生まれ始め、少しずつサービスが当たり前のものになり始めました。

 

お客様へのアプローチ
当時、小売業様に一生懸命営業に参りましたが、「こんなものが店頭で売れるわけがないだろう」と随分お叱りをいただきました。4年間負けじと「絶対に売れます」という取り組みをしてきたところ、幾つかの会社に大変力を入れて取り扱いを始めていただきました。
家電量販店コジマ様の店頭では、5メートルぐらい我々の売り場をつくっていただき、エアコンをお買い求めになる方に、「買わない場所のエアコンをお掃除されてはいかがですか」と販売していただいたり、空気清浄機の売り場では「エアコンの中は掃除されていますか」というお話をして、掃除も一緒に購入していただいたりという販売が実現しています。
4年前にイオングループ入りしイオンの売り場でも販売をしております。最近関東では「まいばすけっと」でもお掃除が売れるようになってきております。セルフサービスで販売ができますので、ガム売り場の横などに我々の商品を置いて販売をしていただいております。我々の掃除サービスは、何年か前にはお金持ちのサービスだと考えられていましたが、イオンの店頭で並べることによって非常に裾野が広がり、サービスを利用していただけるきっかけになっているようです。 
あとは、これも全国一律にした成果なのですが、NTTさんの付加価値付き電報に「お掃除つき電報」をつくらせていただきました。電報で贈り物をする方というのは大体急いでいらっしゃるようで、コールセンターに「予算1万円ぐらいで、何かいいのありますか」という問い合わせが非常に多いようです。コールセンターの方が、新しい商品で掃除がついた大人気のものがありますと言うと、それでいいから頼むと非常に商談が早く、母の日や出産祝いなどでも随分お使いいただいているようです。
4年前に始めたときは、1年間頑張ったのですが5,000件しか売れませんでした。昨年は25万人の方にご利用いただき、今年はこのまま失速しなければ、恐らく40万人ぐらいの方に利用していただけるペースで、現在推移をしております。

サービスを繰り返し使っていただくために
繰り返し使っていただくためには、お客様の満足度が一定レベルを超えないと難しい。ただ、初めてご利用される方が多いものですから、お客様の期待値がばらばらです。誰か来てくれれば喜ぶ人もいれば、これでもかというぐらい新品同様にしないと喜んでくださらない人もいる。お客様の満足度または期待値がわかりにくいのが我々のサービスの特徴です。
なので、思い切って満足保証を商品につけました。難しいことではありません。お客様が「もう来なくていい」と言うまで何度でも行きます。幸い2度目呼ばれるケースは、100件お伺いすると2件ぐらいで、3回目というのは、1カ月に1回あるかないかの頻度です。お客様としては、気になったときに相談できるということで安心してご利用いただいているのではないかと思っております。
また、サービスが終わった後2時間以内に本社からお客様の満足度を確認するお電話しています。作業に従事するスタッフ全員がアフターコールをするということを知っていますので、だんだん真面目にやろうという文化が醸成されて、大きなトラブルというのは非常に少なくなってまいりました。アフターコール後、お客様の不満を汲み取り、満足度の点数によって全員タイムリーに1位から最下位までランクづけして、現場スタッフへフィードバックを行いますので、自分の順位がよくわかる仕組みになっています。お客様から褒められた場合も、「とても喜んでいただいていた」と、すぐにスタッフに報告しフィードバックのサイクルを回しております。これは期待値が分からない中で満足度を確認する手段としては、一定の効果を持っているのではないかと考えております。

さらなるお客様満足のために
それ以外に、お客様と約束していない掃除以外の部分で、どういうことをすると満足度が増すかということについても研究を始めております。一例ですが、行動観察という手法を勉強しながら取り入れ、お客様に80項目ほど定期的にアンケートをとっております。非常に印象がいいのが、掃除道具を床に置くときに毛布を敷いて「この上に置いていいですか」と奥様に質問すると「何て気遣いができるスタッフなのだ、この人は。安心だ」となり、その後あまり作業現場を見に来ないようです。
最悪の印象を与えるような行為の1つは、汚れた手または汚れた手袋でキッチン、壁など、奥様の聖地に触れる。こういった項目を確認して、スタッフには具体的に「この行動をするな」、「この行動をしなさい」という勉強会を続けております。我々も長年マナーを守れとか、ホスピタリティーをとか言っていますが、何を言われているのか作業スタッフは全く理解せずに何年も経過していたことがありました。こういったものを数量化して示すと、「ああ、これをやってはいけない」、「こういうふうにやるとお客様は喜ぶのだ」ということが印象に残るようで、現在はこのような手法で徐々にですが、お客様の信頼が増える活動をしております。
システム化という面では、お掃除のサービスで最も大きいコストが移動です。1日40%ぐらい移動しており、いかに移動距離を減らしてお客様の家に居続けるかということが、コストを下げ、利益を増やす1つの大きな要素になっております。そこで、ホテルと同じような発想で、作業スタッフは空き時間を登録し、お客様はインターネット上で都合のいい空き時間に掃除の予約を入れられるという、単純なことですが、現在全国単位でマッチングの仕組みを整えております。もう一つ、お客様宅にお邪魔する時刻と終了予定時刻が全て管理されていますので、10分前になっても入室の報告がないスタッフには電話が入り、遅刻してないかお客様のところにいるか、または作業終了予定時刻を過ぎて10分経つような場合はトラブルが起きていないか、またはミスを隠そうとしていないかという確認を行う仕組みを持っており、先ほどのアフターコールに基づいて5段階評価が、全スタッフに全ての作業ごとにつきますので、自分は全国でどれぐらいの評価を受けているか、なぜ今回お客様に評価をしてもらえなかったのか、こういうことが見えるような仕組みでスタッフのサービスレベルを上げていきたいと、そのような活動をしております。
実はこの業界は職人さんが大変多く、研修をしますと未だに我々が用意した洗剤・道具に文句をつけます。科学の知識を持たずに長年の経験と勘でサービスをしていた方が非常に多い業界でした。汚れが落ちないと強くこする、または洗剤をもっとかける、こういう意味のない行為を正当化している方が非常に多かったのです。
現在、花王さんのプロフェッショナル部門の方々と協業させていただきまして、作業内容の科学的な進化に取り組んでおります。洗剤の裏側には、混ぜると危険、飲むと危険、こういうことしか書いてないのですが、「この洗剤は15センチ離して汚れに塗布したほうがいい」、「この洗剤は60度以上の温度にして汚れに当て、30秒以上置くと難なく取れる」こういう理系の方にとっては当たり前の洗剤の使い方、道具の使い方を今、一生懸命科学しながら取り組み、勘と度胸から、できれば科学の世界に持ってこよう。少しでも我々のサービス品質が安定し、多くの方が繰り返しご利用いただけるようなサービスに進化していきたいと、そのような思いで取り組んでおります。
最近「家事玄人」は、3年に一度我々がお掃除に行くエアコン、5年に一度ピカピカになるレンジフード、こういった法人ビジネスでは当たり前のモノにメンテナンスがついたサービスにご採用いただける機会が増えております。ぜひメーカー様全てと提携をして、「壊れたら○○電機へ」、「汚れたらカジタクへ」と、こういう取扱説明書が全てに入れば、我々はもう少し大きな企業になれるのではないかと思います。今イオンで三菱電機さんのエアコンの上位機種を買うと、我々の掃除がついてくるようです。お見かけになったときには一度お試しいただけると幸いです。

 


(「SPRINGシンポジウムin神戸」にて)