受賞の観点
「安心・安全の提供」をコンセプトにハード・ソフト両面で特徴のある老人ホームを創出
提供サービス
同社はセコムグループの医療・介護部門を担っている。従来の老人ホームの建築構造やメンタルヘルスなどのハード・ソフト両面の諸問題を洗い出し、それを反映させた独自の施設・サービスを生み出して、高い評価を獲得。また、スタッフのユニフォームの統一によりセクショナリズムを排したり、他部署の仕事を経験させる研修を実施し、高い定着率を保つなどの成果も上げている。
ハイ・サービスのポイント
同社の強みは、既存の老人ホームの経営を引き継いだ後、独自にノウハウを蓄積し、経営理念である「安全・安心」をコンセプトに独自の視点から新たな老人ホームをつくり上げている点にある。さらに、ユニフォームの統一やクロストレーニングの実施によりスタッフのモチベーションとチームワークの向上も実現している。
- 1996年に経営不振に陥ったサクラビア成城の経営を引き継ぎ、老人ホームの運営を開始。1999年にはロイヤルライフ多摩の経営を引き継いだ。個々の老人ホームの運営はそれぞれ子会社を立ち上げ任せている。これらの既存の施設を運営していくなかで、動線の不具合などの施設のハード面、サービスのあり方に関わるソフト面の改良課題を洗い出し、それらを反映させた独自の老人ホーム『セコムフォート』シリーズを展開した。2006年にコンフォートガーデンあざみ野、2009年にコンフォートヒルズ六甲がオープンしている。
- 『セコムフォート』シリーズは、従来の老人ホームとは異なる観点から、セコムの理念である「安心・安全」をコンセプトとして、運営している。
- 一般的な老人ホームでは、利用者が介護状態になった場合、元の居室から介護専用居室に移し、部屋の大きさの差に対する費用等を返金するケースがほとんどであった。しかし、それでは介護居室への移行に難色を示して対応が遅れるケースがあり、またいったん介護居室に移ってしまうと回復意欲が失われるケースがあるなどの問題が見られた。
- 介護からネガティブなイメージを取り除くため、また入居者自身の社会性を保つためにも、部屋を完全に移してしまうのではなく、リハビリテーションなどを行う中間的な位置づけのスペース(食事、リハビリなど機能別に利用)を設けた。『セコムフォート』シリーズでは、このような共用部分が施設内の50%以上占めている。
- また、介護居室に移った後も、従来の居室を共用することができ、回復すれば元の生活環境に戻れる仕組みとした。
- コンフォートガーデンあざみ野では、広い庭(建ぺい率4割、緑化率6割)を生かして、東京農業大学と共同で、園芸療法士による園芸療法を実施した。ここまで本格的に実施しているのは他には例がない。園芸教室の開催は2週間に1度の割合で取り組んでいる。
- 『セコムフォート』シリーズでは、看護師とヘルパーのユニフォームを同じ服装として、上下関係を連想させるような外見的な相違を改めた。それまでは看護師は白衣に対し、ケアスタッフはジャージ姿が多かった 。
- 運営する4施設合同で研修を行い、さらに他部署の仕事を実際に経験する「クロストレーニング」を実施した。料理長にケアスタッフの経験をさせる一方、ケアスタッフにキャベツを刻んでもらうなど調理をさせる、などが一例である。
- 効果として挙げられる主な内容は、
- オリジナルの老人ホームをつくり、独自のサービスを行うことで、高い評価を得ている
- 要介護の利用者とそうでない利用者との中間スペースを設けたことで、元気な人がリハビリの様子を間近で見ることが可能になった。「将来への安心」を見てもらうことが、利用者の「今の生活への安心」につながっている。
- 園芸療法は、時間の感覚を失いがちな高齢者にとって、それを肯定的にとらえる好機となっている。長生きをとかく厄介と捉えがちなところを、肯定的に実感できるようにもなる。またコミュニケーション面でも、植物の話題を介することにより他人と対話とのきっかけが生まれるなどの効果がある。
- クロストレーニングの実施により、スタッフが自分の仕事や他人の仕事を異なった視点から見直すようになり、仕事に対するモチベーションが上がっている。
- 同業他社に比べて比較的スタッフの定着率が高くなっている。介護業界の平均定着率は約3割程度。同社は約5割。
――などがある。
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