受賞の観点
湯治場での保養と現代アートの融合により、旧来型の旅館を心と体を癒す空間へと変革
提供サービス
450年以上の歴史を誇る老舗の温泉旅館。「保養とアートの宿」をコンセプトに、館内外の至るところに現代アートの逸品が展示されており、季節に合わせての展示替えや個々の作品を活かした丁寧な配置などを行っている。「倉庫美術館」は、アーティスト菅木志雄の膨大なコレクション作品を一般に公開。自然治癒の「場」を提供するという理念を共有した従業員のサービスにより、多くのリピーターを生み出している。
ハイ・サービスのポイント
同社の強みは温泉と現代アートとを融合させることにより、湯治場と芸術という肉体と精神の二方向の満足(保養)を両立し、利用者に選ばれる旅館への転身を実現している点にある。また理念の共有から生み出された従業員の高いモチベーションを、顧客満足度の向上へつなげることに成功している。
- 湯治場として、自然治癒の「場」を提供するという理念のもとに施策を行った。現代アートに着目したのは、保養とアートの融合が、利用者に選ばれる旅館としての個性になり得ると考えたからである。
- 旅館として、利用者に選ばれるための特徴や対象とする顧客像を考え、心の疲弊を癒す「湯治場」と「現代アートのある空間」の両立に取り組んだ。
- 自然の治癒力をテーマとしているため、食事も胡豆昆を基本とした滋養食であり、ほとんどが個人客である。
- 同館のスタイルに対して顧客が満足できなかった時は料金を返金する場合もある。これは、同館がどういったサービスを提供しているのか、などの情報発信が不足していた結果と捉えているからである。
- アート作品展示などの旅館のリノベーション後にはクレームもあったが、責任を持って理念や考え方を説明することで利用者の理解を得られるように対応した。
- 従業員に関しても、同館の理念や考え方を理解したうえで、働きたいという意志の強い人材を採用している。また、3年間を猶予期間として定め、理念の理解や適性を見ている。
- インターネット、書籍、各メディアの取材などによって十分な情報発信を行っている。テレビでは表層的な情報発信にならないよう、応対には注意を払っているが、インターネットや書籍などでは、ある程度ターゲットを絞って、対象としている顧客層や専門家などへの情報発信をしている。
- 海外で理解を得られる人々にも視線を向けており、アーティストの菅木志雄氏とタイアップして世界に通じるアート作品を扱い、その発信地になる取り組みを進めている。
- 現在は従業員の中にアート関連者が多くなりはじめ、理念を共有する人材が働くことで、従業員の定着率も上がっている。また、宿泊客が連泊するケースが多く、リピート率も非常に高いことが特徴となっており、海外からの宿泊客も増えている。
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