2015年9月25日
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サービスがあらゆる産業で競争優位そのものと言える時代になりました。しかし「サービス」は目に見えなくて、なんだか雲を掴むよう。サービスで競争優位を築こうと思っても、一体何から手を付けたら良いのか分からない。そんな悩みを持つ企業が増えています。そこでサービスサイエンスでは、目に見えない「サービス」を分類し、分解し、モデル化することで、その本質や努力のポイントを明らかにしています。
前回は、サービスを2つの切り口で「分類」して、サービスのタイプに応じた努力のポイントを明らかにしました。そこで今回は、サービスの全体像を掴むために、世の中のサービスをサービスメニューの観点で「分類」してみた結果をご紹介したいと思います。
世の中にあるサービスを分類して全体像を整理する
世の中にあるサービスを整理してサービスの全体像を明らかにする検討を行いました。経済産業省関連のホームページにある日本のサービス業をまとめた資料を元に、約450種類のサービスを分類する検討を行った結果、仮説として、世の中にあるサービスはたった21種類の基本サービスメニューに分類できることが分かりました。
例えば、フレンチレストランや日本料理店、カフェといったサービスは全て「2.食事や飲み物を提供する」という基本サービスメニューに分類されます。また、テーマパークやイベント業は「18.娯楽を提供する」。鉄道やバスやタクシー会社は「14.移動を支援する」。といった具合で、21種類の基本サービスメニューに分類されました。そして興味深いことに、製造業や農業も「作ったモノを提供する」サービスメニューに分類することができるのです。このように当てはめてみると、ほぼ全ての産業を、サービスメニュー分類で表現することができそうだと分かりました。
「すべての産業はサービス業である」と捉え直してみると、昨今のサービス競争やCS競争が激化していることは納得できます。すべての産業において、サービスは競争優位そのものになってきているのです。
さらにこれら21種類を分類していくと、大きく3つの基本サービスメニューに分類されます。それは、「モノ提供サービス」、「情報提供サービス」、「快適提供サービス」の3つです。ただし、「快適提供サービス」には所属するメニュー分類が多いので、中分類として「安心の提供」「楽(らく・たのしさ)の提供」「自己実現」に分かれています。
このようにサービスの全体像を少しロジカルに整理してみると、案外シンプルに分類することができました。そこで、このサービスメニュー分類を活用して、サービスやCS向上のヒントを探ってみたいと思います。
サービスメニューの21分類を活用して、差別化を考える
例えばホテル業界のサービスの違いを、このサービスメニュー分類で表現してみると次のようになります。
このように、サービスメニューの21分類を組み合わせることで、自社と他社のサービスメニューの違いを明らかにすることができます。例えば、他社にはないサービスメニュー分類を付加したり、他社と同じサービスメニュー分類であってもその中身を工夫することで、差別化のチャンスが見出せるかもしれません。また、他社や他業界の成功事例をサービスメニューの観点で分析してみると、自社で取り込めるヒントが見つかるかもしれません。
さて、今回は世の中のサービスを分類することで、その全体像を明らかにしてみました。そうすることで、サービスメニュー21分類を使って、他社との違いを明確にすることができるようになりました。そこで次回は、サービスメニューの3つの大分類「モノ提供」「情報提供」「快適提供」を重ねてみると、とても興味深い気づきが得られましたので、それをご紹介しながら、付加価値向上のヒントを掴んでみたいと思います。
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<筆者プロフィール>
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松井 拓己 (Takumi Matsui) 松井サービスコンサルティング 代表 サービス改革コンサルタント/サービスサイエンティスト |
サービス改革を専門として、サービスサイエンスに基づいたサービス改革やCS向上の支援や研修を行っており、これまでに業種・業界問わず数々の企業の支援実績を有している。 |