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【連載】CS向上を科学する

2016年3月31日

【CS向上を科学する:第25回】真の顧客満足に必要な5つの取り組み(1)~忙しさに負けず、CS向上に本気になるために~




松井サービスコンサルティング
代表/
サービス改革コンサルタント
松井 拓己


CS向上(顧客満足向上)と聞くと、「どうせ建前でしょ」「これまで何回も同じような活動して、いつも上手くいかないんだよね」「忙しいからそれどころじゃない」という思いを持つ方がたくさんいらっしゃいます。顧客満足や顧客志向という言葉が当たり前になった反面、それが絵に描いた餅になっていて、実は誰も本気になって取り組めていない企業が案外多いものです。しかし最近では、サービス競争が激化し、本当の意味で顧客満足を高めなければ生き残れない時代になりました。それに気づいた企業では、建前論から脱却して真の顧客満足を実現することで、競合に大きな差を付けて、お客様から選ばれ続ける企業に進化しようと熱心に取り組んでいます。そこで今回は、お客様から高い評価を得ている企業が押さえている5つの取り組みに触れてみたいと思います。

(1)お客様を理解するための取り組み

具体的には、満たすべき事前期待を定義することです。

お客様はサービスを受ける前に何らかの事前期待を持っています。この事前期待を、サービスを受けた後の実績評価が上回ると、お客様に満足して頂けて、受注やリピート、顧客紹介などに繋がっていきます。つまりCS向上活動は、事前期待を掴まずして成果は出ないのです。

また、サービスには、「お客様と一緒に作るもの」というとても大切な特徴があります。また、以前ご紹介したサービスの定義からは、我々がいくらお客様のためにと思って努力したことでも、お客様の事前期待に合っていなければ、「サービス」とすら呼んでもらえない。余計なお世話や無意味行為、迷惑行為と呼ばれてしまう、というポイントも見えてきました。しかし多くの企業では、お客様の事前期待をあまり意識せずに、「良いサービスは喜ばれるに違いない」と決めつけて、自分たちで勝手に作ったサービスを一方的にお客様に押し付けてしまっていることがよくあります。これではお客様に喜んでいただけません。

お客様の事前期待を掴まずして、サービスでお客様に喜んでいただくことはできないのです。しかし事前期待と言っても、100人100通りで、いったいどうしたら良いのか分かりません。そこで、CS向上の第一歩として、我々が満たすべき事前期待とは何かを明確に定義します。これをCS向上の目標地点に据えることで、組織全体でベクトルを揃えてCS向上に取り組めるようになります。現場任せで闇雲な取り組みから脱却して、組織一丸となったCS向上活動へと進化する一歩を踏み出すのです。

 

【2】サービスシナリオを描く

顧客満足が絵に描いた餅になっていて、誰も本気で取り組めていない場合には、このサービスシナリオが極めて重要になります。

顧客満足は以前から大切だと言われてきました。しかし、それが建前になってしまっている企業では、こんな本音が聞こえてきます。
・お客様の手前、建前で「お客様に満足していただくことが何より大事です」と言っているだけで、CS向上が本当に事業拡大や業績といった経営貢献に強力に直結するとは思っていない・・・。
・社員は皆「お客様に喜んでいただきたい」と心から思っているけれど、CS向上のために現場で具体的にどんな努力をしたら価値があるのか分からない・・・。

これではやはり、常に目標と忙しさに追われる中で、顧客満足に本気になって取り組み、成果を出すことはできません。

そこで必要になるのがサービスシナリオです。まず大切なのが、CS向上がどのように経営貢献に強力に繋がるのかを明らかにするシナリオです。「顧客満足が向上したら、いつかいいことがあるよね」という漠然としたイメージではいけません。経営から現場までが、是非それを実現したい、そのためにCS向上は欠かせない、と本気で思えるような具体的なシナリオを描く必要があるのです。

そして2つ目に重要なのが、CS向上を実現するために現場で取り組むべきことを具体化するシナリオです。CS向上が経営貢献に強力に繋がることが分かっても、何から手を付けたら良いのかが分からないと、結局は闇雲な取り組みになってしまって成果を出すことができません。そこで、経営貢献に直結するCS向上を実現するために、現場で明日から具体的に何に努力すると価値があるのかを明確にする必要があります。また、忙しさに負けないためには、「やること」と合わせて、「やらなくていいこと」も明確にすると良いと思います。

建前の顧客満足から脱却し、本気になってCS向上に取り組むためには、経営貢献からCS向上、そして現場での価値ある努力を、強力に結びつけるシナリオを描くことが極めて有効だと思います。

さて今回は、真の顧客満足の実現に向けた取り組み5つのうち2つを見てきました。満たすべき事前期待を定義して、その目標地点に向かってベクトルを揃えること。CS向上に本気になるために、経営貢献と顧客満足そして現場での価値ある努力を強力に結びつけるサービスシナリオを描くこと。この2つがこれまで手薄だったとすると、ある意味で目隠しをして的を狙うようなものです。つまり、色々と一生懸命努力はしているけれども、なかなか成果が出ない。そこでこの2つに取り組むことができると、効果的な取り組みだけに注力することができるので、忙しさを解消しながら、大きな成果を出せるようになっていくと思います。

次回は、より具体的にCS向上活動を進めるための取り組みにも触れてみたいと思います。

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<筆者プロフィール>
 


 松井 拓己 (Takumi Matsui)  
 松井サービスコンサルティング  
 代表
 サービス改革コンサルタント/サービスサイエンティスト

サービス改革を専門として、サービスサイエンスに基づいたサービス改革やCS向上の支援や研修を行っており、これまでに業種・業界問わず数々の企業の支援実績を有している。
大手製造業で商品開発に従事し、同時に事業開発プロジェクトリーダーを務める。その後、平均62歳、150名のシニアコンサルタントが集うワクコンサルティング(株)の副社長として事業運営に携わると共に、サービスサイエンスチームリーダーを務める。現在は独立して、サービスサイエンスの考え方を活かして、サービス改革やCS向上を支援している。

 ▼ホームページURL/サービスサイエンスのご紹介
 http://www.service-kaikaku.jp/