事例紹介

2014年8月2日

株式会社 喜久屋 ~タイ進出に成功:グローバル化はクリーニング工場から始まった~

 クリーニング界の風雲児!「株式会社 喜久屋」のハイ・サービスのポイントを紹介します。
 喜久屋は、季節衣料をオフシーズンの間無料保管する「e-closet」、単身・共働き世帯をターゲットに夜間23時まで衣料品を集荷する「ムーンライトデリバリー23」などで業界に革命を起こしてきました。
 喜久屋と言えば、トヨタ生産方式を活用し、クリーニング業の積年の課題だった繁閑差を平準化した成功物語が有名。そんな喜久屋のハイ・サービスのポイントと今後の展望は…。





★ハイ・サービス日本300選 第4回受賞★
顧客ニーズに応えるサービスの創出により、業務の平準化と顧客拡大を実現

 
★ハイ・サービスのポイント★
【第4回受賞時のポイント:サービスプロセスの改善】


●提供サービス
全国からインターネットでクリーニングの申し込みを受け付け、衣料を自宅で集荷し、無料で保管するクリーニングサービス「e-closet」や、首都圏で夜間集配サービスを行う「ムーンライトデリバリー23」を提供する。
 
●ハイ・サービスのポイント
同社の強みは、ライフスタイルやニーズの変化に対応するサービス改革を重ねてきた経験をベースに、「e-closet」という今までになかった全く新しいサービスを創出したことに加え、これを普及させる際には申し込みや集荷での利便性を高め、サービスへの不安を少しでも解消するきめ細かな工夫を行った点にある。
 
•トヨタ式の生産システムを参考にし、通常は衣類を種類別に50~100点ずつ洗うところを、同社では10点をひとつのユニットとして洗えるようラインを小さく複数に組み替え、顧客一人に対しひとつのユニットで対応することで顧客単位での洗浄・管理によって短納期を実現。

 


•「e-closet」のサービスを開始後、繁忙期の半分程度だったオフシーズンの工場稼働率がほぼ100%と業務が平準化され、その顧客エリアは全国に拡大。

 


•2004年、首都圏でWebと電話で夜間集配サービスを行う「ムーンライトデリバリー23」のサービスを開始、2006年には在宅時間の短い働く女性や単身者のより一層の便宜を図るため、携帯サイトでの受注もスタート。



 
 
 
【現在の取り組み -本社取材より-】
今回は、東京都足立区の喜久屋本社をお尋ねして、代表取締役兼CEOの中畠信一様、取締役副社長の嶋田喜明様にお話をうかがいました。
 
■スーツで「決める」のがタイ風オシャレ
日本ではクールビズがすっかり定着し、6月ともなればスーツに袖を通す人も少なくなります。一方、タイでは近年ホワイトカラー層が急速に増加し、スーツで「ビシッと決める」のが都会人のステイタスになりつつあります。これに伴って、これまで富裕層が中心だったクリーニング市場が、大幅に中間層に広がってきました。タイは、クリーニング業界にとって大きな潜在重要が見込めるマーケットです。

 
■4か月で12店舗を展開
喜久屋がタイに進出するまでには、様々な偶然と出会いがありました。最終的に、喜久屋はM&Aで事業展開する道を選びます。2013年5月にKikuya Thailand.,Co.Ltd.を設立、同年12月にはクリーニング工場の稼働に漕ぎ着けます。店舗は2014年3月下旬の1号店を皮切りに、7月初旬までに一気に12店舗を展開しました。
もっとも、全てが順風満帆に進んだわけではありません。10時に約束した人が、12時半にやってきて、少しも悪びれない。工事の納期が守られないなど、何事も南国的な“大らかさ”で進みます。開店日は決まっているのに、どうしたらいいのか…。海外展開を陣頭指揮した嶋田喜明副社長は、頭を抱えたと言います。

      

【タイ・シーナカリン工場での機械設置風景】       【タイ・シーナカリン工場での作業風景】


■人手不足が生んだグローバル化の種
今、タイでの喜久屋は軌道に乗りつつあり、工場に1名の日本人を残すのみで、後は店舗も含めて全て現地化しています。この海外展開を支えたのは、喜久屋のクリーニング工場で以前から働いていたタイ人社員でした。クリーニング工場は今でも、日本人が敬遠する職場です。人手不足に悩んだ喜久屋は、かなり以前からクリーニング工場で様々な国籍の外国人社員を登用してきました。工場では、英語が事実上の公用語になっています。人手不足がもたらした工場の“グローバル化”。そこで喜久屋の心を学んだタイ人社員が、今、海外展開の頼れるパートナーになっています。
中畠CEOは、現在でも月に1回はタイに出張しているそうです。タイでのクリーニング市場の成熟化をにらんで、次はASEAN各国での展開を構想しています。「環境対応など、日本のクリーニング業は厳しい環境で鍛えられてきた。海外での事業展開には、それほど困難を感じない」と胸を張ります。東京・足立区発のグローバル企業が、今、生まれようとしています。



【タイ・ヘッドオフィスに掲示される「洗人の碑」の写真】
 

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