2014年5月20日
「相互交流を促進し、経営人材を育成」
サービス産業生産性協議会では、成長期にあるサービス産業、特にこれまで多忙で社内の人材育成に取り組む時間がなかったが、将来のさらなる成長のために人材育成を考えている企業を対象に、サービス産業の人材育成のあり方について、過去議論を重ねてきた。
特に大きな課題である経営人材の育成を中心に議論した。サービス産業はその歴史も浅く、次世代の経営者を育てることが組織的にも行われていないことが多い。議論を通じて、経営人材を育てるには、似たような立場にある外部の経営者候補と仲間をつくり、コミュニケーションをはかって、悩みを打ち明け、一緒に切磋琢磨することが重要ではないかと感じた。
民間の経営人材育成プログラムは、大企業ならともかく、発展途上にあるサービス産業には高額なものが多い。そこで、「1回5000円程度なら参加できる」という声を受け、参加費を抑えた経営塾「人材育成フォーラム」を2010年度にスタートさせた。
2011年度は「ハイ・サービス日本300選」受賞企業の経営者に、経営者としての苦労や悩み、経営で失敗したこと、今後の課題などを語ってもらった。講師で来た人が次回は参加者として出席するなど、講師と参加者の双方向の交流が促進された。2012年度は若手経営者を講師に招いた。
経営人材の育成に最も効果があるのは、何に悩み、それをどう克服したかという経営者の生の声を聞き、懇親会などで相互交流を行い、裏話も含めてその体験を共有していくことだろう。それが積み重なると、経営者同士のネットワークが自然に生まれ、その共有が一層促進される。
経済学、経営学、工学、心理学などを融合した「サービス・サイエンス」の分野において、経営者と学界がもっと連携していくことも必要だ。学者は自分の論理でテーマを設定しがちだが、テーマを選定する場合は、サービス産業の経営者らが役に立つというイメージをつかめるテーマを選ぶべきだ。経営者側にも問題がある。学者の世界はわからないと近寄らないのはよくない。経営には、経験だけではなく理論的な裏づけも必要だ。製造業は製品が変化するが、サービス産業はビジネスの仕組みが変化する。サービス産業の経営者には、仕組みの変化に対して柔軟な発想を持つ人が望ましい。柔軟な頭と柔軟な行動と若干の不真面目さが求められる。
私は34年前の創業時にテニススクールを運営していたが、当時の会社で今でもテニススクールとして残っている会社は1社しかない。子ども向けのスイミングスクールや若者向けのフィットネスクラブも、それだけの経営では今は厳しい。世の中は10年単位で変化していくので、自社が属する業態だけではなく、その周りの業際にも好奇心や興味を持つことが重要だ。
サービス産業生産性協議会の活動をさらに大きな活動に発展させていくためには、経営者と学界との連携や、協議会で開催している様々な会合間の連携などが必要だ。そうした連携を推進する「懸け橋」としての役割を協議会には期待したいし、私もそのように行動していきたい。
斎藤敏一 氏(サービス産業生産性協議会幹事)・談
生産性新聞2012年8月5日号「サービスイノベーション」掲載より、2014年5月改訂