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Report JCSI

「コロナ禍におけるニーズの把握、サービスの拡充が顧客満足を高める ~飲食業種1位のびっくりドンキー、カフェ業種1位のスターバックスの分析~」(vol.24より)full page

コロナ禍におけるニーズの把握、
サービスの拡充が顧客満足を高める

~飲食業種1位のびっくりドンキー、
カフェ業種1位のスターバックスの分析~

(SERVICE INNOVATION REPORT Vol.24 "Report JCSI"より)

 

 JCSI調査では、毎年度30以上の業種における顧客満足度を調査し、上位企業・ブランド(以下、企業)を発表しています。この調査の傾向の一つとしては、他社とのポジション(順位)があまり変わらない安定的な指標であることが挙げられます。
 そのような傾向を持つ指標にもかかわらず、順位を大きく上げる企業が毎年現れます。
 今回は2020年度に飲食業種ではじめて1位となったびっくりドンキーと、カフェ業種で6年ぶりに1位に返り咲いたスターバックスに注目し、JCSIの6指標、及びサービス品質設問から順位を上げた背景や要因を分析いたします。

■飲食業種ではじめて1位となったびっくりドンキー
 飲食業種では24社を対象に調査をしていますが、2017~2019年度の3年間にわたってリンガーハットが1位を維持してきました(2018年度は木曽路も同点1位)。2020年度はそのリンガーハットを超えて、びっくりドンキーがはじめて1位となりました。
 過去3年間にわたって1位であったリンガーハットは顧客満足に影響を与える知覚品質(全体的な品質評価)と知覚価値(コスト・パフォーマンス)を比較すると、知覚価値のスコアが高い一方、びっくりドンキーは逆に知覚品質の方が高いことが対照的な特徴として指摘できます(図表1)。
 同社の6指標のスコア・順位を2019年度と比較すると、6指標全てにおいて順位を上げています。特に顧客満足に影響を与える顧客期待、知覚品質、知覚価値において、同社を特徴づける知覚品質は9位から1位となっています(図表2)。

 この要因をさらに深く分析するために、次にサービス品質設問の結果について見ていきます。
 びっくりドンキーが他社と比較して優れている点としては、同社の特徴である「料理・飲み物は美味しい」をはじめ、「メニューやサービスには、他のチェーンにない特徴がある」「メニューの表示や説明は適切である」といった提供メニューにおける独自性と適切な説明、提供が挙げられます。さらに、「施設・設備のデザインは良い」といった店舗デザイン面が優れている点も評価されています(図表3)。

 これらの点に加えて、2019年度から2020年度にかけて順位を大きく上げた項目を見ると、「広告・宣伝やチラシでは、適切な情報が伝えられている」といった広告・宣伝面や、「従業員は、私自身のニーズを詳細に把握している」「会計は速やかに済ませられる」といった接客対応の評価が高まった点が特徴と見られます。また、「私の個人情報を適切に保護していると思う」「私の顧客情報(購買履歴や好みなど)を把握している」といった情報管理における評価も大きく順位を上げています。これらの面での評価が高まったことが顧客満足1位につながった可能性が考えられます。
 実際に、びっくりドンキーでは2020年度にコロナ禍における対応として、Uber Eats や出前館でのデリバリーサービスの全国展開を進めると同時に、デリバリーメニューの強化を図っています。これらが広告・宣伝面や情報管理における評価を高めたと推察されます。また、店舗運営においても、タブレット端末によるオーダーシステムや自動精算機の導入を進めており、これらが従業員の接客対応の向上につながっていることが考えられます。

  

■6年ぶりに1位に返り咲いたスターバックス
 カフェ業種では7社を調査しており、業種全体の特徴として各社の顧客満足のスコアが近い範囲で毎年推移しています。但し、JCSIの6指標の形状を見ると、知覚品質を重視するスターバックスやコメダ珈琲店、タリーズコーヒー、一方で知覚価値重視型のカフェ・ベローチェなど、各企業それぞれに特徴が見て取れます。なお、顧客満足の経年推移からは、2020年度は知覚品質重視型の企業が全体的に順位を上げており、コロナ禍の影響でくつろげるタイプのカフェの評価が全体的に上がった可能性があります(図表4)。

 その上で、スターバックスが顧客満足1位になった要因を具体的なサービス品質設問における変化から掘り下げていきます。
 サービス品質設問の結果を見ると、スターバックスは2019、2020年度ともに接客や施設面を含めて多くの設問で1位となっています。そこで、2019年度と比較して順位が上がった設問を中心に着目すると、「サービスや料理の提供時間が安定している」などといった設問において評価が上がっていることが確認できます(図表5)。
 スターバックスでは2017年からスタートしたロイヤルティプログラムのサービス拡充を進めています。特に、同プログラムに登録することで、レジに並ばずに商品を受け取ることができる事前注文決済サービスを、コロナ禍における非接触支払ニーズの高まりを受けて、2020年には全国の直営店舗でも対応できるように整備を進めており、これらの取り組みの結果が上記の品質設問項目における評価の上昇につながった可能性があります。

  

 以上、びっくりドンキーとスターバックスが2020年度に顧客満足1位となった背景や要因をJCSIの6指標やサービス品質設問項目を通して分析しました。コロナ禍における顧客の要望を適切に把握し、サービスを拡充している点が顧客満足を高めた共通点として推察されます。