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【連載】CS向上を科学する

2016年7月13日

【CS向上を科学する:第30回】事例に学ぶ優れたサービスのポイント:「旭山動物園」その1




松井サービスコンサルティング
代表/
サービス改革コンサルタント
松井 拓己


「第1回 日本サービス大賞」の受賞サービスが発表され、7/12(火)に開催された受賞企業が登壇するフォーラムの大盛況となりました。日本の優れたサービスに注目し、そこから気付きや学びを得てサービスを磨き上げようと努力している企業が増えています。そこで前回から、日本サービス大賞の受賞サービスの「優れているポイント」を、これまでに触れてきたサービスやCSの理論を活かしてひも解いています。
※サービス産業生産性協議会(SPRING)が主催する優れたサービスを表彰する制度


動物の本能を魅せる「行動展示」(旭川市旭山動物園)
第1回日本サービス大賞 地方創生大臣賞 

旭川市旭山動物園
出典:第1回 日本サービス大賞

第1回の日本サービス大賞で、8件が地方創生大臣賞を受賞しました。その中で今回取り上げるのは「旭山動物園」です。旭山動物園の受賞理由はこう紹介されています。

『生きた動物を展示するという原点に立って動物の行動を観察する「行動展示」のパイオニアとしてこの分野の市場を形成し、全国の動物園に大きな影響を与えている。創意工夫が施された展示により、動物を通して自然を知り、人間を考え、命を認識する場として、来場者に驚きと感動を伝えている。入園者数は160万人を超え、北海道や旭川市の観光や経済活性化に大きく貢献している。』

サービスの概要やこれまでの経緯はメディア等で取り上げられているのでご存知の方も多いと思いますが、旭山動物園の代名詞といえる「行動展示」は、実は、入場者数が減ってしまって閉園の危機に追い込まれたことで生まれました。この危機を中心にひも解くことで、業界は違ってもサービス事業への危機感を持っている方のヒントになればと思います。

旭山動物園のサービス改革は、「矢印をひっくり返す」ことへの挑戦といえます。今回は4つの観点のうちの2つに触れてみたいと思います。

行動展示がひっくり返した矢印とは

「行動展示」がなぜこれほどまでにお客様の心を動かすのでしょうか。展示の仕方を変えることで、今まではお客様にお尻を向けていた動物がこちらを向いているからでしょうか。実はそうではありません。行動展示は、動物を人間に見せるための展示方法ではありません。動物の人間への警戒心を解き、動物が本来の生き方に近い形で過ごすためのものです。つまり、動物たちにとってそこは、居心地の良い自分の住み家なのです。そして人間は、動物たちにとっては、住み家から見える面白い生き物なのです。だからこそ、カバは変わった形の水槽の覗き窓の周りをすいすいと泳ぎ回ります。人間を覗きにきているのです。チンパンジーは人間が見ているガラスに近づいて、思い切りそのガラスを叩いたりします。それはまるで、動物園で人間の子供がガラスを叩いて動物が驚いているのを楽しんでいるのと同じ光景です。狼は、人を真上から見下ろす岩の上に群れて遠吠えをします。それはまるで、縄張りに入ってきた者に、ここの王者は自分であることを示しているようです。

旭山動物園に行ってみると分かるのですが、自分が動物の世界にお邪魔させて頂いている感覚になります。つまり旭山動物園は、動物園の「在り方の矢印」をひっくり返しているといえます。動物園は、人間が動物を見る場所ではなく、動物が人間を見る場所なのです。人間は、動物たちの住み家にお邪魔していること、人間は、自然界の一員であることを痛感します。そして、動物や自然界への思いやりが芽生えるのです。

サービスの価値の高め方の矢印

旭山動物園には、珍しい動物はいません。どこにでもいる動物ばかりです。しかし、他の動物園では見ることができない、動物たちのイキイキとした仕草を最高な角度から見られます。飼育員自らが作った館内展示はまるで図鑑の中に入り込んだような発見や面白さがあります。そして、人間も自然界の一員であることを実感して心が震えます。

これらは、珍しい種類の動物で差別化することとは、努力の方向が大きく異なります。当連載で触れてきた観点でいうところの、「サービスの成果ではなくサービスのプロセスで価値を高めている」といえます。サービスの成果とは例えば、サービスメニューや品ぞろえ、価格、早くて正確なことを指します。このサービスの成果では、もはや差がつかない業界はたくさんあります。メニュー開発競争、価格競争、スピード勝負ももちろん大切ですが、「サービスのプロセス」でサービスの価値を高めるという方向に努力の矢印を切り替えてみると、新たなチャンスが掴めるかもしれません。

今回は、旭山動物園がサービス改革を通してひっくり返した矢印のうち、サービスの在り方、サービスの価値の高め方の2つの観点で触れてみました。次回は、もう2つの観点で、閉園の危機に直面した旭山動物園のサービス改革をひも解いてみたいと思います。
 

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<筆者プロフィール>
 


 松井 拓己 (Takumi Matsui)  
 松井サービスコンサルティング  
 代表
 サービス改革コンサルタント/サービスサイエンティスト

サービス改革を専門として、サービスサイエンスに基づいたサービス改革やCS向上の支援や研修を行っており、これまでに業種・業界問わず数々の企業の支援実績を有している。
大手製造業で商品開発に従事し、同時に事業開発プロジェクトリーダーを務める。その後、平均62歳、150名のシニアコンサルタントが集うワクコンサルティング(株)の副社長として事業運営に携わると共に、サービスサイエンスチームリーダーを務める。現在は独立して、サービスサイエンスの考え方を活かして、サービス改革やCS向上を支援している。

 ▼ホームページURL/サービスサイエンスのご紹介
 http://www.service-kaikaku.jp/