連載コラム

    SPRINGとは

    入会案内

  • 日本サービス大賞
  • JCSI 日本版顧客満足度指数
  • 大人の武者修行バナー

    cafeバナー

    SPRINGフォーラムバナー

    日本サービス大賞

    日本サービス大賞

    会報バナー

    書籍紹介

    提言・宣言

  • 提言・宣言
  • ハイ・サービス日本300選

     

  • リンク
  • SES Service Evaluation System:サービス評価診断システム

     開発・運営:(株)インテージ

【連載】CS向上を科学する

2016年6月3日

【CS向上を科学する:第28回】優れたサービスの条件




松井サービスコンサルティング
代表/
サービス改革コンサルタント
松井 拓己


日本サービス大賞が2015年から始まり、サービスの価値を高めることやサービスで差別化することへの関心が高まっています。しかし、いざサービスを磨き上げようと思っても、いったい何から手を付けたら良いものかと悩んでしまいます。そもそも、優れたサービスとはどんなものなのでしょうか。当連載ではこれまで、「CS向上を科学する」と題して、お客様からの評価の高いサービスを実現するための本質的な考え方や方法論について紹介してきました。これらの考え方にも触れながら、「優れたサービス」とはどんなものなのか、ひも解いてみたいと思います。
※サービス産業生産性協議会(SPRING)が主催する優れたサービスを表彰する制度


「日本サービス大賞」が定義する優れたサービスとは

日本サービス大賞では、「優れたサービスとは、受け手の期待を超える経験価値を提供するサービスである」としています。下の絵のように、優れたサービスに見立てた紙飛行機は受け手の期待を大きく超えています。この絵を見ると多くの方は、「どうやったら紙飛行機を遠くへ飛ばせるだろうか」と考えがちです。実際に多くの企業では、サービスやCSの向上に取り組む場合、「具体的に何をやったら良いだろうか」という観点で議論しています。

日本サービス大賞が定義する優れたサービス
(出典:日本サービス大賞ホームページより)

しかし、「何をやるか」以上に大切なことがあります。それは、「我々はどんな事前期待に応えるサービスを提供するのか」を明らかにすることです。つまり、紙飛行機を遠くに飛ばす前に、「どっちに向かって飛ばすのか」の目標を決めなければならないのです。この「満たすべき事前期待」の目標を決めずに努力することは、目隠しをして紙飛行機を飛ばすようなものです。これでは、お客様の事前期待を超えるような優れたサービスは提供できません。まずは、目標地点として「満たすべき事前期待」をしっかりと見定めることが大切なのです。
(サービスやCSの本質については、当連載の第1回と第7回をご覧ください)
 

どの事前期待に応えるかで、サービスの評価は大きく変わる

満たすべき事前期待の目標地点を決めるといっても、応えて当然な事前期待を目標にしたところで、サービスの評価は高まりません。どの事前期待に応えると価値があるのかをしっかりと議論すべきです。

例えば、事前期待の中にはお客様全員が共通的に持っているもの(共通的な事前期待)があります。これにいくら応えても、お客様からは「当たり前でしょ」と言われてしまいます。サービスの評価を高めたいと思ったら、共通的な事前期待に応えるだけではダメなのです。むしろ、お客様ひとりひとりで異なる「個別的な事前期待」や、「状況で変化する事前期待」「潜在的な事前期待」に応えることで、感動サービスやホスピタリティーサービスのような評価の高いサービスを提供することができるようになるのです。
(事前期待については、当連載の第2回~第3回をご覧ください)
 

期待を超えるサービスであれば何でも良いのだろうか?

日本には素晴らしいサービスがたくさんあります。その多くが、お客様の期待を超えています。しかしそういったサービスであっても、カリスマやベテランの個人的な経験やセンスに頼って生み出されていることが少なくありません。もちろん経験やセンスは大切ですが、それだけに頼っていては、素晴らしいサービスを提供し続けることはできません。そこで今、多くの企業では、現場任せ、個人任せなサービスから脱却して、組織的にサービスを高めることに熱心に取り組んでいます。つまり、日本サービス大賞でいうところの、優れたサービスを「つくりとどけるしくみ」の構築や強化に積極的に取り組んでいるのです。
(サービスやCS向上のしくみの参考例については、プロセスのモデル化は第10回~第11回、真のCSを実現する5つの取り組みは第25回~第27回をご覧ください)

優れたサービスとは、価値ある事前期待に応えるものであり、サービスをつくりとどけるしくみによって、それを現場や個人に任せっきりにせずに組織的に実現しているサービスだといえます。
 

日本には優れたサービスがたくさんある

日本には優れたサービスがたくさんあります。それを単に事例として表面的に捉えるのではなく、「どんな事前期待に応えているのか」、「そのサービスをつくりとどけるしくみはどんなものなのか」という視点でひも解いてみると、そのサービスの本質に迫ることができるかもしれません。そうすることで、例え他業界のサービスであっても、自社のサービスとして活かすべきヒントが得られるはずです。このように、業種や業界の枠を超えて刺激しあうことで、日本らしい優れたサービスが益々増えてくることに期待したいと思います。

第1回日本サービス大賞の受賞発表が目前となりましたが結果が楽しみですね。次回以降は実際の受賞サービスをピックアップしてを例にケーススタディをしていきたいと思います。
※2016/6/13 第1回受賞発表予定
 

--------------------------------------------------------------------------------

<筆者プロフィール>
 


 松井 拓己 (Takumi Matsui)  
 松井サービスコンサルティング  
 代表
 サービス改革コンサルタント/サービスサイエンティスト

サービス改革を専門として、サービスサイエンスに基づいたサービス改革やCS向上の支援や研修を行っており、これまでに業種・業界問わず数々の企業の支援実績を有している。
大手製造業で商品開発に従事し、同時に事業開発プロジェクトリーダーを務める。その後、平均62歳、150名のシニアコンサルタントが集うワクコンサルティング(株)の副社長として事業運営に携わると共に、サービスサイエンスチームリーダーを務める。現在は独立して、サービスサイエンスの考え方を活かして、サービス改革やCS向上を支援している。

 ▼ホームページURL/サービスサイエンスのご紹介
 http://www.service-kaikaku.jp/