経営者の声

2017年2月20日

株式会社スーパーホテル 会長 山本 梁介 氏

「『引き算』の発想によるサービスの生産性向上

 

 

日常の感動のLOHASサービス
私どもは「日常の感動のLOHASサービス」を顧客満足度の中心に置いております。LOHASという言葉は、20世紀の大量生産、大量消費の反省をもとに21世紀は本物、自然を大切にしたいという考え方で、地球に優しく人に優しい日常の感動のサービスで元気に爽やかになっていただきたいという思いでやっております。この20年間増収増益で、国内では118店舗、海外では3店舗運営しており、平均稼働率は約90%、そのうちリピーター率は71%です。最近では、島根県江津市から地方創生にはどうしても全国区のホテルが欲しいという要請を受け、FCでオープンして平均稼働率は80%を超えました。地元の皆さんの素晴らしい情熱とスーパーホテルのビジネスモデルがうまく合致したと大変嬉しく思っております。
 LOHASとは健康と持続型可能な社会を目指した生き方で、簡単に言えば環境と健康です。1999年に熊本県水俣市より環境保全重視の街づくりの協力の要請を受けCO2の削減に取り組みました。当時は環境が大切だということは分かっていてもホテルで扱うというのはどうだろうかと逡巡しましたが、市長からの要請でもあるのでと受動的な気持ちで取り組みました。しかし、市民の方々が環境運動に取り組まれ、町が綺麗になっていくに従い、その表情が非常に明るく涼やかになっていくことに大変感銘を受け、環境というのはこのように人の心を元気にするのだと、そこで初めて環境について色々勉強しました。また、続いて感銘を受けたのがアフリカの女性環境運動家マータイさんが2005年に来日した際に、「MOTTAINAI」という言葉を世界語にされました。それまで環境というのはReduce、Reuse、Recycleの三つのRが中心でしたが、マータイさんにより四つ目のRとしてRespect、モノに対する尊敬が加わりました。環境運動とスーパーホテルのビジネスモデルは親和性があるのではないかと、より一層熱心にCO2削減に取り組んでまいりました。
 

スーパーホテルにおけるCO2削減の歩み
CO2の削減方法は三つです。一つ目は省エネ設計です。当時は白熱灯や蛍光灯が多かったのですが、現在は全てがLEDで冷暖房も集中からセパレートにしました。また、以前は各ホテルにレストランを併設していましたが、その土地の有名なお店を利用していただこうということでレストランを廃止し、ビジネスマンにとって大切な朝食は、ロビーで無料提供することにしました。他には、節水施設や冷暖房効果を良くするための二重サッシ等の省資源設計を進めております。二つ目に、ペーパーレスはコスト削減にもなりますのでIT化を徹底的に進めておりますが、ITの泣きどころは電力消費です。そこで、各店舗にあったコンピューターサーバーを1か所にかためてクラウド化させました。また、ビジネスモデル特許を取得したテンキーとチェックイン機により、当初オンラインで行っていたチェックインをオフラインにして電力を使わないグリーンITを進めてまいりました。三つ目は、各店舗でのISO14001の取得です。その際一番逡巡したのは、ISO取得には非常に多くの書類提出が必要で、支配人には抵抗があるのではないかということでした。しかし皆が率先して取り組み、各市で環境賞をいただく等この取り組みは支配人の気持ちも元気に明るくするということがわかりました。おかげさまで2010年には2001年比で32%のCO2が削減できました。しかし、その間に年々CO2削減幅が小さくなってきたことに気付きました。メーカーは技術開発でCO2削減を展開していますが、サービス産業ではやはり限界があるため、開発されたものを組み合わせ現場の知恵を使うことによりCO2削減に取り組み、年に1回どれだけ社内でLOHASが進化したというLOHASレポートを提出しております。
 

 

  

お客様と進めるエコの輪
サービス産業の中でCO2削減のために何ができるのかと考えたときに、延べ460万泊していただく中で、お客さまと一緒にエコに取り組み、啓蒙運動をしていくことが勝負どころではないかと考え、Webから予約をいただいた方には、1泊で生じるCO2をカーボン・オフセットする業界初の仕組み「エコ泊」を行っております。また、ハブラシのご返納、マイ箸のご持参、連泊時の掃除不要のお申し出をいただいた方には地元のお菓子やオリジナルのミネラルウォーター等体に良いものを進呈する「エコひいき」運動をお客様と共に進めて参りました。おかげさまでその間に環境大臣賞を2回、ホテル業界ではただ1社のエコのトップランナーとして環境省よりエコファースト企業の認定をいただき、2016年度、第6回カーボン・オフセット大賞で環境大臣賞をいただきました。地球環境に貢献して精神的ラグジュアアリーをお客様と共に味わいエコの輪を広げております。
 

五感で感じるLOHAS「ぐっすり」へのこだわり
ぐっすり眠って健康になっていただくために、科学的に良い睡眠を研究しようと大阪府立大学の健康科学研究室と共同で『ぐっすり研究所』を設立しました。
第一に照明ですが、ロビーから廊下そして部屋へと徐々に暗くしています。そして静かな部屋、設計段階から防音を徹底的に行い図書館並みの静かな部屋を作っています。ベッドはやや固めで、その上に柔らかめの低反発マットを敷き両方選べるようにしています。枕も上質な物を作りご用意しています。それでもぐっすり眠っていただけなかった場合には、宿泊料の全額返金制度を設けており、一時は月に100万円以上返金したことがありますが、現在は10数万円と減っています。その一番の要因は枕です。上質ということよりも、その人に合った枕で眠れるように「高さ」と「硬さ」の異なる8種類をご用意しました。良い睡眠は、長さではなく深さであり、それを得るためには血の循環を良くすることが大切だと分かり、ぐっすり研究所では寝具等の開発にも取組んでいます。掛け布団や健康イオンスリッパはマイナスイオンを発生させ血液循環を良くする。館内では、MICA加工によって粒子を細かくしたエネルギーのあるオリジナルの水をご提供しています。また、58施設には、自然治癒力を高め、血の循環を良くしてぐっすり眠れるように天然温泉を設置しています。
脳波から快適睡眠を検証したところ、ス-パーホテルに宿泊した方は他のホテルに宿泊した方より徐波睡眠(深い睡眠)の時間が平均22.8分長く、熟睡していることが分かりました。また、唾液の変化からリラクゼーションを検証したところ、免疫物質の顕著な増加からリラクゼーションがもたらされていることが明らかとなりました。
 

 

 

「自律型感動人間」へ
一番力を入れているのは、お客様に元気になって頂く接客フロントサービスです。まずは、不満を取り除いていただくために支配人、アテンダントを階級に分け、研修を繰り返し、テスト、面接、実地をしております。その他にも接客・身だしなみ・朝食・清掃の4点に関してお客さまからアンケートをいただき、10日毎に集計しその結果が2ヵ月連続して下位20に入った店舗には「ゴールド作戦」と呼ばれる本社支援チームが出向き教育を行います。それでも改善できなければ本社の研修センターで再研修を行い、全体の底上げを図っております。しかし、不満を取り除いて満足へ持って行くだけではなく、私共は満足を超えた「日常の感動」へ持っていかなければなりません。「ここまでやってくれるのか」「ここまで考えてくれたのか」ということが感動の源になるわけで、それにはTPOに応じて各人各様でお客さまの立場になりいろいろなサービスを提供することが大切です。私共は自律型感動人間、自分で考え、行動してお客様に感謝してお客様を感動させる。そのような人材育成を一番の目標に取組んでおります。
 

生産性向上と顧客満足度向上のために
自律型感動人間を目指し、自分の感性と人間力を磨くことは、ひいては自分自身も幸せになり組織を伸ばし地域にも貢献できます。それが社員満足度となり、お客さまに感動していただくことが更にリピーターにつながると思っております。
経済の原理原則は、顧客満足度を上げれば生産性が下がり、生産性を上げれば顧客満足度が下がるということですが、私共は生産性も顧客満足度も両方上げようと思っております。現場の小さな知恵の寄せ集めがビジネスモデルになり、顧客満足度が地域ナンバーワンになっております。その1例として、ビジネスモデル特許を取ったノーキー・ノーチェックアウトシステムですが、非常に生産性が高く、またシステムに顧客情報が一元化されるため、異なる地域のホテルを利用される際にも過去のデータを基に常連客と同様の接客が可能になり顧客満足も向上しています。
顧客満足度の向上は社員の満足度に繋がりますが、そのための基本は情報共有です。月に7000通ほどのお褒めの言葉をいただき、数百通ものお叱りと提案の言葉をいただきます。それを全社で共有し、お褒めの言葉は次のベストプラクティスに向けたヒントとなり、お叱りの言葉はさまざまな問題の予防・改善につながります。何か困ったことがあれば社内イントラネットに乗せることで、他の社員からアドバイスを得ることができ、お互いに助け合いながら問題の予防・解決を図ることができます。おかげさまでJ.D. パワー顧客満足度調査1泊9,000円未満部門で3年連続1位をいだきました。
今後は世界に誇れる日本のおもてなしにITを刷り込んで顧客満足度1のホテルを海外に輸出していきたいと考えております。日常の感動のLOHASなサービスを進化させながら社員同士、ビジネスパートナー、お客さま、そして地域と感謝・感動の環を回しながらホテル経営を進めてまいります。
 

 

   
(「SPRINGシンポジウム in松江」にて)

 

※株式会社スーパーホテルが提供されている「日常の感動のLohasサービス」は、第1回日本サ―ビス大賞優秀賞(SPRING賞)を受賞されました。