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イベントレポート(~2014年度)

2013年3月28日

<2013.3.1開催>東北復興フォーラム

サービス産業生産性協議会と日本生産性本部は3月1日、福島県福島市内にて、東北復興フォーラム「ふくしまからのサービス産業と観光;新たな芽生え」を開催し、約270名が参加しました。同フォーラムでは、東北の復興をより確かなものとし明日を切り拓いていくため、地域活性化に重要な役割を果たしているサービス産業・観光産業の経営者をお迎えし、復興への取り組みの現状と直面している課題が議論されました。

冒頭、東日本大震災の犠牲となられた方々のご冥福をお祈りするために、1分間の黙とうが行われました。主催者を代表して、挨拶した秋草直之・サービス産業生産性協議会・代表幹事は、「日本のサービス産業はGDPの約3分の2を占めるが、生産性はまだまだ低い。サービス産業の生産性を高め、雇用を創出し、賃金を上げるという方向を目指さなければならない」と述べました。 



ご来賓の村田文雄・福島県副知事は、佐藤雄平・同県知事のメッセージを代読し、「東日本大震災からまもなく2年が経過しようとしています。本県では今もなお多くの人たちが避難生活を余儀なくされているなど、大変厳しい状況が続いていますが、一方では着実に元気を取り戻してきています。企業活動や観光地の賑わいも回復しつつあります。この復興の流れをさらに加速化させていくために、本県では昨年末に新たな総合計画『ふくしま新生プラン』を策定しました。この計画のもと、復興に全力で取り組んでいきたい」と挨拶をいただきました。



また同じく来賓の瀬谷俊雄・福島県商工会議所連合会・会長は、「第3次産業にスポットをあてた、このようなフォーラムの開催ははじめてであり、たいへん時宜を得たものと思います。福島県の昨年のGDPは7兆1000億円だが、そのうち第3次産業のは4兆9000億円と全体の約7割となっており、福島県でも第3次産業が大きなウエイトを占めている状況」と述べました。


講演では、「新たな成長に向けたサービス政策」について、白石重明・経済産業省・商務情報政策局・サービス政策課長からは、「サービス産業は雇用者の割合では、75%も占めています。日本のサービス産業の生産性はまだまだ伸びる余地があり、学びと創意工夫次第で生産性はいくらでも上がる傾向です。生産性の向上のシナリオは、山ほどあります。それをぜひご参加の皆さんに考えていただきたい」と激励しました。



講演「フラダンスで被災地を元気に」をテーマに講演した斎藤一彦・常磐興産代表取締役社長からは、常磐炭鉱からハワイアンセンター、スパリゾートハワイアンズへの事業転換の歴史の経緯と、東日本大震災からの復興の歩みを語りながら、「震災対応では、炭鉱時代からのDNAである現場の安全第一や危機管理の意識に救われました」と述べられたほか、企業として今日まで約半世紀、生き残ってきた理由として、?人まねをせずに、苦しくても自分たちでつくってきたこと、?大衆に健全な娯楽を提供するというコンセプトを守ってきたこと、?仲間意識が強く、団結力があり、危機のときにふんばれる従業員の存在の三つを挙げました。

また企業経営のキーワードについては、『コンセプトがなければメシは食えないが、コンセプトだけでもメシは食えない』、『計画は悲観的、対応は楽観的に行う』ことが重要だと主張しました。



モデレータの望月照彦・観光地域経営フォーラム・代表幹事は、常磐興産の事例から学ぶ、これからの観光経営について、「企業が持っている経営資源を大事にすること」、「フレキシビリティの高い経営」、「経営者の楽観主義の発想」、「人間的なつながりが深い人間主義」などが求められると指摘しました。




次に、郡山市に本社がある幸楽苑の新井田傅・代表取締役社長は、「大震災に続く外食産業の構造不況を如何に克服するか」をテーマに講演しました。新潟中越地震や東日本大震災での経験を踏まえ、こうした災害時には「いち早く店を開けることが、お客様に対しての最大のサービスだ」と強調しました。

また価格ではなく価値を見直すことなどによって、外食産業の構造不況を乗り切るとともに、今後は国内に1000店舗、海外に2000~3000店舗を出店していきたいと抱負を述べました。

モデレータの小倉高宏・日本生産性本部・主任経営コンサルタントは、JCSI(日本版顧客満足度指数)ファストフード部門第2位の実績をグラフを用いて解説しました。




会津歴史考房・主宰の野口信一氏からは、NHKの今年の大河ドラマ「八重の桜」の主人公である新島八重を取り上げ、「八重の桜、新島八重の生き方」をテーマに講演いただきました。「新島八重とその兄の山本覚馬の生き方は、福島県に大きな希望を与えてくれることだろう」と述べました。

 



最後のグループディスカッションでは、はじめにモデレータの丁野朗・観光地域経営フォーラム・研究コーディネータが、「福島の宿泊客は戻ってきていますが、ビジネスホテルが好調である一方で、観光客が過半数を占めるホテルはまだまだの状態。地域の復興というのは観光復興ができて、はじめて復興といえるのではないか」と問題提起を行いました。

復興への取り組みに向けた経緯や、そこから生まれた課題については、「飯坂温泉の宿泊客は増えてはいますが、機動隊や工事関係者が多いため、経済的な波及効果はあまりなく、本来の観光とはいえない。イベントについては、福島市の中心市街地に人が出てくるようなイベントを中心に手がけている」(渡邉和裕・福島商工会議所・副会頭)。

「磐梯熱海温泉の入り込み客の客数は増えているが、観光客が増えているかどうかはまだわからない。旅館間の格差が拡大し、収容客数が100人未満の旅館や高級志向の旅館は苦戦しています。郡山では、大型コンベンションの誘致に力を入れています」(丹治一郎・郡山商工会議所・会頭)。



「首都圏を中心とした物産展などへの参加や各種陳情活動、フラガールの全国キャラバン活動などに力を入れています。『いわきサンシャインマラソン』の評判は、全国でも上位にあります。皆が笑顔で応援してくれるからだと思います。これを大事にしていきたい」(斎藤一彦・いわき商工会議所副会頭)。

「『八重の桜』を大成功させることが福島の復興、東北の復興につながるはず。京都商工会議所と相互交流協定を結んでいます。京都商工会議所の第2代会頭で、京都の復興に貢献した、八重の兄の山本覚馬にも光をあてていきたい」(宮森泰弘・会津若松商工会議所・会頭)、との意見が出されました。



未来に向けた、次の世代の観光のあり方については、「大河ドラマの次の年には、それまでの観光客が2割減少すると言われています。そこに歯止めをかけるためには、JRグループのデスティネーション・キャンペーンを活用することも重要だ」(渡邉氏)。

「郡山には柏屋の『薄皮饅頭』や三万石の『ままどおる』があり、こうした食品工場の存在は大きな観光資源になるはず」(丹治氏)。

「これからは2泊3日の滞在型商品の開発がないと観光産業は厳しくなると思われます。そのためには広域連携のさらなる強化が必要。MECE(マイス)への取り組みを強化し、会議やイベントを福島に誘致していくことも課題」(斎藤氏)。

「京都商工会議所と相互交流で大変勉強になった。京都には1200年の歴史があり、学ぶべきことはたくさんある。会津は400年の歴史だが、会津や福島ならでの歴史や文化がある。そういったものを徹底して、磨き上げることが後につながる。地域における「都」度、つまり都市の格を上げることが大切」(宮森氏)などの意見が出されました。

丁野氏は、「観光産業という産業は実はない。観光はいろいろな業務の組み合わせで。1個1個の産業が組み立てられていないと、観光には成り立たない。つまり観光とは装置だ。顧客の価値がどんどん変わっており、そういうことに対して、新しい装置やプログラムをつくりなおさなければいけません。新しい装置をつくり、観光の再生をはかっていただきたい」と議論をまとめました。